CtoCビジネス・シェアマッチング事業の成長に必要な考え方を学ぶ(PoC、MVP、PMF、eKYC等)

イベント/セミナーレポート

更新日: 2023/09/12

目次

     幅広い世代へのスマートフォンの普及に伴い、私たちは多くのサービスを利用することができるようになりました。中でも消費者同士がモノやサービスを直接取引するビジネスモデルを指すCtoCの市場は、国内外問わず急速な拡大を見せています。一方で法律やユーザーへの認知獲得、提供するサービスの利用率、サービスに対する信頼性など、事業を伸ばすためには解決すべき多くの課題もあります。

     これらの課題を解決するべく、「事業立ち上げ〜スケールさせるまで」に実施すべきことについて、CtoCビジネス・シェアマッチングに精通した3社が2023年8月9日に解説/対談セミナーを開催しました。

     本記事では、C2Cマッチング事業に必要不可欠なプラットフォームを提供するC2C Platform株式会社、マッチングサイト・シェアリングエコノミーサイト構築パッケージを提供する株式会社カスタメディア、そして本人確認(eKYC)サービスを提供するTRUSTDOCKの3社で共催したウェビナーの様子をレポートします。

    本記事のポイント

    ・PoC(概念実証)フェーズでは、ユーザーストーリーの明確化と小さく改善の繰り返しが大切

    ・PMF(プロダクトマーケットフィット)フェーズでは、MVPでコストと時間を抑えて検証を進めることが大切

    ・グロースフェーズでは、適切な本人確認の実施等によるプラットフォームの信頼性向上が大切

    解説者プロフィール

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    平井 康晴

    C2C Platform株式会社
    Business development Division, Product Management GroupDivision Head

    2015年新卒で株式会社マイナビに入社。各種賞を受賞しながら最年少保有予算額を更新し、ナショナルクライアントをメインに採用業務だけでなく、プロモ・人材要件・組織設計含む、型にハマらない総合コンサル業務に従事。その後、株式会社Speeeにてセールス 兼 経営企画/CEO室を歴任しながら年間MVP含む、各種賞を総なめにし、IPOに貢献。その後、2022年当社参画。現在C2Cの新規事業立ち上げを担うビジネスディベロップメント本部長として年間15件〜20件のプロジェクト立ち上げに携わる。

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    浦坂 周

    株式会社カスタメディア
    取締役COO

    Web2.0といわれた時代の2005年からの通信ベンチャー企業でコンシューマーや法人向け、そして地方創生をテーマとしたWebコミュニティやECサイトの企画から立ち上げ、マーケティング、そしてグロースまでの多種多様なプロジェクトに従事。2018年からは現職に就き、シェアリングエコノミーとマッチングサイト構築プロダクト「力スタメディアMASE」を立ち上げ、スタートアップから中堅企業、大手・エンタープライズ、地域社会まで、規模や業種・業態を問わず、プロダクトの提供と成功のための伴走を行っている。

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    髙橋 幸司

    株式会社TRUSTDOCK
    Verification事業部 パートナーアカウントマネージャー

    大学卒業後、大手クレジットカード会社に入社。営業と新規事業開発を担当し、新会社設立など複数のビジネスの立ち上げを担う。2019年 株式会社TRUSTDOCKにセールスとして入社。金融業界を中心に新規開拓営業に従事。現在はパートナーアカウントマネージャーとして、パートナーと共にセールスやマーケティング施策、eKYCの拡販活動を推進している。

    成功確率を上げるCtoC・シェアマッチング事業の立ち上げ方 by C2C Platform

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     今回は事業の成長プロセスを「PoC(概念実証)」「PMF(プロダクトマーケットフィット)」「Growth(グロース)」という3つのフェーズに分類した上で、各フェーズにおいて大切となるポイントについて、それぞれ1社ずつ担当して説明していきました。

     まずは、CtoC・シェアマッチング事業等のダイレクトマッチング市場が成長する背景と、上図「フェーズ1」となるPoCを進める上でのポイントについて、C2C Platform株式会社にてC2Cビジネスの新規事業立ち上げを担うビジネスディベロップメント本部長を務める平井 康晴氏が解説しました。

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     上図にある通り、シェアリングエコノミーの成長やスマホ/アプリの普及によって取引の主体が「企業」から「個人」へとシフトしており、それ故に企業における採用活動や、ネイル、リラクゼーション、飲食といった各事業領域を切り出すことで、企業/サービス提供者とユーザーが直接取引をするダイレクトマッチング市場が成長している状況だと平井氏は説明します。

     そんな環境下においてC2C Platform社では、ダイレクトマッチングサービス構築における全ての面で包括的なサポートが可能だと、同氏は強調します。

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    「ダイレクトマッチングサービスの構築において、イメージ的には経営/事業コンサルティングとSIer、さらには事業会社とマーケティング会社、VCの機能を全部合体させたような存在がC2C Platformだとお考えください。まさにゼロイチを立ち上げる際に必要な機能を全方位的に備えている会社です」(平井氏)

     

     同社は2021年1月に設立された会社ですが、2年強でスキルシェア領域や美容領域、HR領域、DX領域において32プロダクトを開発(リリース前案件含む)しており、総じての月間アクティブユーザー数は72万人超、月間GMV(流通取引総額)は7.2億円超にも上っているといいます。

     このように事業のゼロイチに強いC2C Platform社が考える「ビジネスモデルの立ち上げからMVP(実用最小限の製品)開発までに行うべきこと」が以下です。

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    「まずはユーザーストーリーを明確にして、小さく改善をしていくということを徹底的にやっています。といいますのも特にスタートアップ界隈においては、ユーザーストーリーのN数が少なかったり、PMFできるほどのマーケットが存在しなかったり、もしくは存在していたとしても市場形成までに時間がかかることに起因したりして、ピボットを余儀なくされるケースが非常に多いからです。それ故に最短でPMFを目指すには、まずはモデルのところから徹底的に分析し、将来的なPMFを目指す上でのマーケットがあるのかを調査・分析して、仮説から事実を作り、また事実から仮説を作るというサイクルを作っていくことが特に重要だと考えています」(平井氏)

    CtoC・シェアマッチングビジネスで重要なプラットフォームの構築方法

     続いては、冒頭にお伝えした3段階図の「フェーズ2」となるPMFまでの戦略実行及びオペレーション精査のポイントについて、株式会社カスタメディア 取締役COOの浦坂 周氏が解説しました。同社では様々なクライアントに対してシステム開発サービスを提供しているほか、「カスタメディア」と呼ばれるパッケージシステムを600サイト以上に提供しているということで、新規創業や新規事業の立ち上げ支援に強みを持っていると言います。

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     Yコンビネータ(米シードアクセラレーター)による「ザ・プロセス」には、スタートアップの浮き沈みが表現された有名なグラフが描かれているわけですが、最終的なPMFを実現するにあたってはいかに失敗の確率を減らし、最小限の投資で進めるかが大切になります。よって、「PMFに向けたプラットフォームの構築という部分においてはMVPが有効だろう」と、浦坂氏は説明します。

     

    「スタートアップの方々は特に事業を立ち上げた“強い思い”があるが故に、想定している課題や解決策が顧客のニーズと合致していない状態にもなりがちだと言えます。せっかくコストと時間をかけて作ったプロダクトが全く使われない可能性があるわけです。MVPの手法を用いることで、短時間かつ少ないコストで事業を検証することができ、不確実性を排除しつつリスクを最小限に抑え、最短距離でPMFへと持っていくことができると考えています」(浦坂氏)

     

     このMVPの考え方を元にしたのがMVC(Minimum Viable Change)です。MVCでは、作成したMVPを実際に動かしてみて計測し、顧客からのフィードバックを得て、そこから価値を検討してMVPの改善へと繋げていくというフィードバックループを前提とする考え方です。このMVCを進めるコツとして、浦坂氏は以下の4点を挙げます。

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     このMVP及びMVCの考え方に特に有効なアプローチとして、同氏は、「カスタメディア MASE(Matching And Sharing Economy)」と呼ばれる、CtoC・シェアマッチングビジネスのプラットフォームをスピーディに構築できるプロダクトを紹介しました。

     

    「土台となる顧客データベースやコミュニティに加えて、マッチングサイトやシェアリングエコノミーの部分など、案件/物販/時間/クラウドファンディングなどの基本機能をチョイスして使えるようになっています。まさに必要な機能のみをチョイスできるという点でMVP作成に最適と言えます。カスタメディア MASEでコストと時間を抑えた分は、集客やフィードバックの分析などにコストや時間を割いて、しっかり取り組んでいただくことが大事だと考えています」(浦坂氏)

    eKYCによる安心感でプラットフォームの信頼性を高めるポイント

     3番目は、冒頭にお伝えした3段階図の「フェーズ3」となるグロース段階のポイントについて、株式会社TRUSTDOCK Verification事業部 パートナーアカウントマネージャーの髙橋 幸司が解説しました。

     PMF達成後のグロースフェーズにおいては、フェーズ1の段階で立てたKPIやKGIの予実管理やグロース施策の策定/実行、さらにはプラットフォームの健全性の構築が重要になってきます。今回はこの中でも「プラットフォームの健全性の構築」部分のアプローチとして、プロダクトへの本人確認及びeKYC(electronic Know Your Customer)の実装について説明がありました。

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    ※TRUSTDOCKが専門で扱う「本人確認」や「eKYC」の詳細については、以下の記事を併せてご参照ください

    ▶️eKYCとは?オンライン本人確認のメリットやよくある誤解、選定ポイント、事例、最新トレンド等を徹底解説!

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     例えば昨今の出会い手法として注目されているマッチングアプリサービスにおいては、出会い系サイト規制法に準拠する形で、運転免許証等を用いて年齢確認(18歳以上であることを確認する作業)を実施する必要があります。逆に捉えると、法的には年齢確認さえすれば良いので、それ以上の本人確認の実施は求められているわけではありません。

     一方で、より安全・安心なユーザー環境を整備する目的で、より厳格な本人確認の実施をユーザーに求めるべく、eKYCサービスを導入するケースも増えています。そのメリットについて、髙橋は以下のように説明します。

     

    「単なる年齢確認ではなく本人確認を厳格化することによって、本人の実在性担保を強化し、なりすましや詐欺、嫌がらせ等による目的外利用者の排除を促進することができます。それにより、PMF後のプラットフォームの健全性を担保することができると考えています。またユーザーにとっては、アプリ内およびアプリで出会った人物は、顔やバックグラウンドが見えにくいため身元確認による安全性・安心性は非常に重要です。年齢確認以上の本人確認の実施は、ユーザーへの安全・安心の訴求、そしてコミュニティの活性化にもつながります」(髙橋)

     

     このように、プラットフォームの健全性に向けたeKYCの実装は、様々なCtoCビジネス・シェアマッチング事業者へと導入されています。髙橋からは一例として、以下の事例について紹介がありました。

    ▶️eKYC導入で個人情報に配慮した本人確認を実現:タイミー様事例

    ▶️家事代行サービスの本人確認にeKYC:CaSy様事例

    ▶️eKYC導入で安心なマッチングアプリサービスに:オミカレ様事例

    ▶️eKYCで免許証確認をスムーズに:OpenStreet様事例

    パネルディスカッションテーマ①「負けない事業の作り方」

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     ここからはパネルディスカッションということで、負けない事業の作り方に向けて、一人ずつコメントしていきました。

     

    「先ほどもお伝えしたとおり、ユーザーストーリーを明確にして、小さい改善をいかにスピーディーにやっていくかというところが、私たちとしては重要かなと思っています。思いがあるが故にこだわりも大きくなる事業者様が多くいらっしゃると思いますが、そのこだわりが今出すべきものなのか、将来的に出すべきものなのか、はたまた出さなくてもいいものなのかなどを考えながら、ユーザーストーリーを無数に作っていくというところが必要かなと思います。また“負けない事業”ってなってくると、事業と市場、及びサービスとしての改善性というところは担保していかねばならないと思うので、いかにそこから逆算をしてユーザーストーリーを考えられるかがキーコンテンツになってくるかなと思います」(平井氏)

     

    「私も繰り返しになりますが、MVPでスピーディーに世に出して実践し、学びから改善していくことが、勝つというよりかは“負けにくくなる”と思います。勝つとなると、プロダクトの良さだけではなく、タイミングや市場環境など様々な要素が絡み合いますからね。事業として苦しい時期を、いかに最小限のコストと時間でしのげるかという観点で、スピードは重要です。ただし、スピードを求めるあまりUIや見た目を軽視してしまうと今度は使ってもらえなくなり正しい検証ができなくなってしまうので、最低限のUI/見た目は捉えれていないといけないとは思います。その上で、創業の軸をぶらさずに、愚直に改善を継続することが大切な姿勢だと考えています」(浦坂氏)

     

    「CtoC・シェアマッチングビジネスの中長期的なグロースを考えた時、セキュリティ面やプラットフォームの健全性を踏まえると、本人確認は不可欠な仕組みであると感じています。一方で、何かしらのインシデントが発生、もしくは発生しそうになって急いで導入するというケースも多い印象です。本来的には、早い段階でこれらの仕組みを導入しておくことが大事であるということを、経営陣がしっかりとキャッチアップしておくことが大切だと考えています。もちろん、個人情報を取り扱うことになるので、プライバシーポリシーの策定やデータの取扱方針など、各種付随する仕組みづくりについても伴走するようにしています」(髙橋)

    パネルディスカッションテーマ②「これだけは絶対に取り組んだ方が良いこと」

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     最後に、「これだけは絶対に取り組んだ方が良いこと」というテーマに対して、登壇者一人ひとりがコメントしていきました。

     

    「まずは、KPIをどこまで細かく分解できるかという話です。もちろん、細かくしすぎると“点”での分析になってしまう恐れがあるので、しっかりと一貫性が担保できる形にして、それを多角的かつ逆算思考で潰していくという風にすると、ゴールに向けた複数のアプローチが見えてくるので、そのような考え方が大事になるかなと思います。また、それに紐づいた形でユーザーストーリーや人を介したオペレーション、さらにはワークフローのPDCAも重要になってくると考えています。倒れづらくなる、かつ負けた時のピポット幅が大きくならない、かつ成長ドライバーが複合的に件数を持っている。この三分割をうまくやっていただければ、概ねそんなに外すこともなく、スキーム的にはどんどん推進できるんじゃないかと思います」(平井氏)

     

    「プロダクトをローンチすると、顧客からの声やトラブルへの対応などが重なり、どんどんと視野が狭くなってしまうものです。そこでしっかり元に立ち返って、当初設定していたKPI等を確認し、分析しながらお客様のフィードバックも参考にして、“立ち戻りつつ進んでいく”ような姿勢が大切になるだろうと考えています。どうしても『攻め』に注力しがちなので、本人確認のような『守り』の部分にも早めに手を打っていくことも大事だと思います」(浦坂氏)

     

    「色々なサービスがWeb化していく中で、本人確認は非常に大切になってくる一方で、事業者にとってはどうしても本業でない部分になってきます。したがってそういったところはプロにお任せいただくのが、大きくグロースをするという意味では重要な選択にもなってくるだろうと思います。特に本人確認業務は、内製しようとすると人員の調整や教育など莫大なコストがかかってくるものなので、我々のような専門企業に委託して業務効率化を図っていくことが大事だと考えています」(髙橋)

     

    関連リンク

    C2C Platform株式会社
    https://bit.ly/3YWQfG7

    株式会社カスタメディア
    https://www.kbb-id.co.jp/

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     TRUSTDOCKでは、“本人確認の専門会社”として企業のKYC関連業務をワンストップで支援するAPIソリューションを提供し、またデジタル身分証のプラットフォーマーとして様々な事業者と連携しております。

     府省庁においては、金融庁には具体的な業務内容の確認を行い、総務省のIoTサービス創出支援事業では本人確認業務の委託先として採択されました。また、警察庁には犯罪収益移転防止法準拠のeKYCの照会等を行い、経済産業省とはマイナンバーカードを活用した実証実験や省内開催の研究会等でご一緒しています。

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     また、eKYCソリューションの導入を検討されている企業の方々や、実際に導入プロジェクトを担当されている方々に向けてはPDF冊子「eKYC導入検討担当者のためのチェックリスト」を提供しており、eKYC導入までの検討フローや運用設計を行う上で重要な検討項目等を計12個のポイントにまとめていますので、こちらもぜひご活用ください。

    eKYC導入検討担当者のためのチェックリスト

     

     最後に、eKYCの詳細については以下の記事でも詳しく説明しているので、併せてご覧ください。

    ▶︎eKYCとは?オンライン本人確認を徹底解説!メリット、事例、選定ポイント、最新トレンド等

     

    (文・長岡武司)

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