スマホ搭載が本丸?マイナンバーカードの利用/携行促進に向けた官民の取り組みを紹介

イベント/セミナーレポート

更新日: 2024/04/10

目次

     金融庁と日経新聞社が2016年より共催してきた国内最大級のFinTech & RegTechカンファレンス「FIN/SUM2024(読み方:フィンサム)」が、2024年3月5日〜8日の4日間に亘って、東京・丸の内で開催されました。今回は、金融庁が主催するJapan Fintech Week 2024の中核コンテンツとして、通常のセッションやピッチ大会の他に、各テーマに沿ったラウンドテーブルも展開され、会場は多くの来場者で賑わっていました。

     今年のFIN/SUMでもTRUSTDOCKはスポンサーとして、経営陣がワークショップ及びパネルトークに登壇しました。

    finsum2024_01ワークショップ会場で催されたTRUSTDOCK単独セッションでは、ESGに資する社会貢献事業としてのeKYCソリューションの紹介や、法制度や国内外動向等の外部環境の現状共有、ビジネスパーソンが把握しておくべきデジタルアイデンティティの基礎知識の提示、さらにはTRUSTDOCKが目下取り組んでいるデジタルIDウォレットの紹介などがなされた

     

     本記事では、TRUSTDOCK CEOの千葉が登壇したパネルディスカッション「金融領域におけるマイナンバーカードの利活用と地域創生」についてレポートします。2025年に向けて、マイナポータルの抜本的なアーキテクチャの見直しによる大幅なアップデートが計画されている中、各民間事業者はどのようなユースケースを展開しているのか。また、TRUSTDOCKのようなオンライン本人確認の仕組みを整備する事業者は、具体的にどんな観点でマイナンバーカードの未来を見据えているのか、セッションの様子をサマリーしてお伝えします。

    登壇者情報

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    • 村上 敬亮(デジタル庁 国民向けサービスグループ グループ長)
    • 寺井 尚孝(北國フィナンシャルホールディングス 経営企画部 常務執行役員 経営企画部長/北國銀行 デジタル部 常務執行役員 デジタル部長)
    • 千葉 孝浩(TRUSTDOCK 代表取締役CEO)
    • 飯田 哲夫(アマゾン ウェブ サービス ジャパン 金融事業開発本部 本部長)
    • 松澤 翔太(Decima Fund 共同創業者/ デジタル庁 Web3.0 業務エキスパート)※モデレーター

    マイナンバーカードの取得や携行の促進に向けた政府の取り組み

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    [写真右]村上 敬亮(デジタル庁 国民向けサービスグループ グループ長)

     

     まずはマイナンバーカードに関する現状理解のため、セッションの冒頭でデジタル庁の村上 敬亮氏より各種データや取り組み事例等が紹介されました。

     2024年3月10日時点のマイナンバーカード交付枚数(累計)は98,318438枚ということで、もう少しで1億枚に達する状況です。一方でマイナンバーカードの傾向者数としては人口全体の4割程度、カード保有者の50%程度ということで、政府としては利用場面の拡大等、マイナンバーカードの取得や携行の促進につながる方策に力を入れていると村上氏は説明します。前者の具体的な取り組みとしては、出生届とマイナンバーカード申請書の一体化や、マイナンバーカードと運転免許証/在留カードとの一体化、iPhoneへのマイナンバーカード機能の搭載等が挙げられました。また後者の具体的な取り組みとしては、行政及び民間での身分証明書としての活用の徹底や、様々なオンラインでの本人確認/申請(引越し、子育て、介護手続き、確定申告)等の利活用シーンの拡大等が挙げられました。

     特にオンラインでの本人確認に関しては、2023年6月9日に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」においてマイナンバーカードの機能拡充や安全・安心対策に関する項目のなかで以下の言及がなされており、今後のオンライン本人確認はマイナンバーカードの利用か、もしくは電子署名法上の認証を受けた認証の仕組みを使う事業者に限る形で実施されることになると考えられています。

     

    犯罪による収益の移転防止に関する法律51、携帯音声通信事業者による契約者等の本人確認等及び携帯音声通信役務の不正な利用の防止に関する法律52(携帯電話不正利用防止法)に基づく非対面の本人確認手法は、マイナンバーカードの公的個人認証に原則として一本化し、運転免許証等を送信する方法や、顔写真のない本人確認書類等は廃止する。対面でも公的個人認証による本人確認を進めるなどし、本人確認書類のコピーは取らないこととする。

    引用:デジタル庁「デジタル社会の実現に向けた重点計画」p54

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    「ご覧の通り、マイナンバーカード等を活用する公的個人認証サービスの導入事業者数と署名検証者数は2年間でうなぎ登りという状況です。現状では銀行やクレジットカード、及び資金移動業でのご利用が圧倒的に多いのですが、その他にも日本郵便さんや電動キックボードのLuupさん等でもご利用いただいています。とにかくオンラインで本人確認をされたい場合は、ぜひ皆さんご利用いただければと思っています」(村上氏)

    北國銀行、TRUSTDOCK、AWSジャパンが進めるマイナンバーカード関連施策

     続いて、民間でのマイナンバーカード活用事例として紹介されたのが、石川県珠洲市で提供されているデジタル地域通貨サービス「トチツーカ」です。こちらは珠洲市と地場の金融機関等が共同で開発を進めたもので、珠洲市が発行する市町限定ポイントである「トチポ」と、北國銀行が発行する日本初の預金型ステーブルコイン「トチカ」という、2種類の地域通貨が利用できるサービスとなっています(トチカは2024年4月リリース予定)。

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    [写真右]寺井 尚孝(北國フィナンシャルホールディングス 経営企画部 常務執行役員 経営企画部長/北國銀行 デジタル部 常務執行役員 デジタル部長)

     

     このトチツーカを利用開始する際の本人確認時において、マイナンバーカードが活用されているとのことです。具体的には、トチポに関してはマイナンバーカードの交付を受けている人であれば市町の住民でなくても利用可能となっており、またトチカについてはマイナンバーカードの交付を受けて、且つ取扱金融機関(北國銀行もしくは興能信用金庫の予定)に普通預金口座を持っている人が利用できるサービスとなっています。

     

    「トチツーカは2023年10月にサービス開始したわけですが、現状ですでに域内の6割ほどが加盟店になっていただくなど、すごいスピードで普及させていただいております。ユーザー数も順調に増えており、地元住民はもちろん、観光客にもご利用いただいている状況です。中長期的には、マイナンバーカードがさらに普及していくことを前提に、デジタル商品券や地域ポイントの発行・運用に加えて、金融機関が発行者となるステーブルコインにも対応可能なプラットフォームを提供したいと考えています」(寺井氏)

     

     さらに、マイナンバーカードの利活用を促進するためにシステム/インフラ面で支える事業者も、現状の活動内容を共有しました。

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    [写真真ん中]千葉 孝浩(TRUSTDOCK 代表取締役CEO)

     

     eKYCサービスやコンプライアンスチェックサービス等を提供するTRUSTDOCKでは、創業した2017年から比較すると、目に見えてマイナンバーカードを活用した本人確認の導入の引き合いが増えていると説明します。

     

    「ここ最近ではマイナンバーカードを活用したeKYC導入のご相談が飛躍的に増えており、それだけマイナンバーカードが普及してきたんだなと改めて実感しているところです。ここにある通り、多様なお客様に対応できるように様々な顧客確認APIや開発用SDK等をご用意しているのですが、全てのお客様がネイティブアプリ等をお持ちというわけではないので、デジタルIDウォレットという自社開発アプリもご提供しており、ここからマイナンバーカード読取の公的個人認証サービスをご利用いただけるようになっています」(千葉)

     

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    [写真左から二番目]飯田 哲夫(アマゾン ウェブ サービス ジャパン 金融事業開発本部 本部長)

     

     また、オンライン本人確認を進めるにあたって不可欠となるのがクラウド技術です。グローバルなクラウドシーンを牽引しているAWSの日本法人、アマゾン ウェブ サービス ジャパンからは、クラウドシステムを取り巻く環境の変化について「レジリエンシー確保に向けたメンタルモデル」という図で説明がなされました。

     

    「これまではシステム障害を未然に防止する、障害を起こしてはいけないという“Robust”な考え方を前提に対策等が建てられていたわけですが、昨今で発生が考えられる様々なインシデントを踏まえますと、発生した障害からいかに早く回復するかという“Resillient”な在り方が重要な方針となってきています。つまり、障害が起きることを前提に、対策を立てていくということです。ここでいうレジリエンシーは、対システムだけでなく、対サイバー空間や自然災害など、様々な観点が考えられます。今後マイナンバーカードで様々なユースケースが出てくるからこそ、このような考え方が重要だと捉えています」(飯田氏)

    仕組みはマクロに、取り組みはミクロに

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     ここで千葉から、マイナンバーカードについて村上氏にいくつかの質問が投げかけられました。それぞれについてサマリーしてお伝えします。

     

    千葉:顔認証マイナンバーカード(本人確認方法を顔認証又は目視確認に限定し、暗証番号の設定を不要としたマイナンバーカード)について、よく事業者の方々から質問されます。あれはどのように取り扱えば良いでしょうか?

     

    村上:あれは主として、医療施設にいる高齢者の方々のご利用を想定しており、マイナンバーそのものを積極的な管理を望まない施設の場合の、ご本人様への医療の本人確認のための対応として作ったものになります。ある意味で特殊ケースであって、社会福祉関係の事業者さん以外の場合は、あまり意識されなくて良いかと思います。

     

    千葉:ありがとうございます。あと、マイナンバーカードのICチップに入っている写真は白黒だと思うのですが、あれはカラーにならないのでしょうか?

     

    村上:検討いたしましたが、結論としては白黒のままにします。理由としては2つ。まず一点目として、磁気カードのICチップのメモリをあげることを考えましたが、世界中探してもものがありませんでした。また二点目として、色で顔認証する技術が実は多くはありません。カラーであってもなくてもほぼ認証精度に違いはないので、白黒のままという方向になっています。

     

    千葉:最後に、元デザイナーなのでマイナンバーカードの次期デザインも気になっているのですが、もっと格好よくなるものでしょうか?

     

    村上:現在各論検討中ではございますが、デザイナーと話していると、デザイン的に本当は券面の文字を減らしたいところです。文字を減らすと、より視認性の高いカードができるのですが、券面記載事項は法律で決められている上に裏面にマイナンバーがあるものですから、券面の文字を削ろうにも削れないというところです。その制約の中でどのようなデザインにしようかと検討中です。

     

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     最後に、村上氏から今後期待していること等についてコメントがなされ、セッションは締めくくられました。

     

    「マイナンバーカードの今後ということで、スマホ搭載が本丸だと思います。先々を見通すと生体認証による本人確認が出てくるとは思いますが、技術の熟度から言ってもまだちょっと早い。スマホ搭載が実現すると、ベストバランスで当面続くことになると思っています。おそらくこの使い勝手を実感していただくと、QRコードの必要すら無くなっていくことになると思うので、ぜひスマホ搭載を楽しみにしていただければと思っています。

    そのためにもポイントは、「仕組みはマクロに、取り組みはミクロに」です。いかに多くの人にとってマイナンバーカードが自分ごと化できるメリットになれるかという点が重要だと思うので、一人ひとりのミクロな取り組みが、結果としてマクロとしての合理的な個人認証基盤の普及を推し進めることになると思いますので、ぜひマイナンバーカードのご活用にご協力いただければと思います」(村上氏)

     

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     TRUSTDOCKは“本人確認のプロ”として、日本で唯一eKYC全手法に対応可能な専門機関となっています。もちろん、公的個人認証サービスを活用した手法(下図の「ワ」方式)にも対応しています。

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     また、関係省庁や関連団体との連携も深め、金融庁には業務内容の確認を、経済産業省とはRegTechについての意見交換を、さらに総務省のIoTサービス創 出支援事業においては本人確認業務の委託先として採択され、警察庁には犯収法準拠のeKYCの紹介等をといった取り組みも行っています。

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     本人確認業務のオンライン化や、公的個人認証サービスの活用でお困りの際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

     なお、eKYCソリューションの導入を検討されている企業の方々や、実際に導入プロジェクトを担当されている方々のために、TRUSTDOCKではPDF冊子「eKYC導入検討担当者のためのチェックリスト」を提供しております。eKYC導入までの検討フローや、運用設計を行う上で重要な検討項目等を計10個のポイントにまとめていますので、こちらもぜひご活用ください。

    eKYC導入検討担当者のためのチェックリスト

     

    ※KYCやeKYCの詳細については、以下の記事も併せてご覧ください。

    ▶︎eKYCとは?オンライン本人確認のメリットやよくある誤解、選定ポイント、事例、最新トレンド等を徹底解説!

    ▶︎KYCとは?あらゆる業界に求められる「本人確認手続き」の最新情報を徹底解説

    (文・長岡武司)

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