日々進化するマイナポータルとマイナンバーカード活用に対して事業者が取り組むべきこととは

イベント/セミナーレポート

更新日: 2023/04/17

目次

     金融庁と日経新聞社が2016年より共催してきた国内最大級のFinTech & RegTechカンファレンス「FIN/SUM2023(読み方:フィンサム)」が、2023年3月28日〜31日の4日間に亘って、会場とオンライン配信のハイブリッド提供で開催されました。

     今回のメインテーマは「フィンテック、『シン個人』の時代(Fintech, the era of “Neoteric Individual”)」。さまざまな進化、発展を遂げてきたFintechは加速度的に「人に優しいテクノロジー」へと昇華されてきており、新しい時代の個人(シン個人)を応援する金融包摂(Financial Inclusion)に向かって歩み始めていると言えます。

     本記事では、その中でもTRUSTDOCK CEOの千葉が登壇したパネルディスカッション「2025マイナポータル大改革に乗り遅れるな!~真の顧客本位への挑戦~」についてレポートします。

     マイナンバー制度の中核であるマイナポータルは、2025年に向けて、その抜本的なアーキテクチャの見直しによる大幅なアップデートが計画されています。金融機関をはじめ、多様な事業者との情報連携が加速する可能性をもつ中、官民それぞれの有識者たちがどのような活用の可能性があるのか議論を深めました。

    登壇者情報

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    • 村井 英樹(内閣総理大臣補佐官・衆議院議員(埼玉1区))
    • 村上 敬亮(デジタル庁 国民向けサービスグループ グループ長)
    • 二見 通(アフラック生命保険 取締役専務執行役員・CTO(チーフ・トランスフォーメーション・オフィサー)・CDIO(チーフ・デジタル・インフォメーション・オフィサー))
    • 千葉 孝浩(TRUSTDOCK 代表取締役CEO)
    • 瀧 俊雄(マネーフォワード 執行役員 CoPA Fintech研究所長)※モデレーター

    利用登録者数5,000万人を突破したマイナポータルのこれまでとこれから

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    村井 英樹(内閣総理大臣補佐官・衆議院議員(埼玉1区))

     まずは、FIN/SUMシリーズが今回で登壇7回目となる内閣総理大臣補佐官・衆議院議員の村井 英樹氏より、2025年以降のマイナポータルの概要について共有がなされました。

    「こちらにあるとおり、APIゲートウェイというものを作っていきます。これによって金融事業者が、簡便なUI/UXによって接続できるようになります。公的年金の将来の受取額はもちろん、特定健診の情報や医療費など様々な情報を簡便にとることができるようになるので、たとえば保険会社・仲介会社が個人の方に対してテイラーメイドで最適な商品・サービスを簡単に提供することができるようになると考えています」(村井氏)

     

     では具体的に、どのようなアップデートがなされる予定なのかについて、デジタル庁 国民向けサービスグループ グループ長を務め毎日マイナポータルの画面を見続けているという村上 敬亮氏より、その詳細が紹介されました。

     そもそもマイナポータルとは、デジタル庁の運営する行政手続のオンライン窓口で、子育てや介護などの行政手続の検索やオンラインでの申請、行政機関等が保有する情報の確認等ができるオンラインプラットフォームです。2023年3月26日時点で利用登録者数は5,000万人を突破(5,471万人)しており、普及期へと突入している状況です。

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    村上 敬亮(デジタル庁 国民向けサービスグループ グループ長)

     2017年11月に運用開始されたマイナポータルですが、これまではサイト内の情報量が多く、どのような機能があるのかがユーザー目線で分かりにくく、かつ操作が煩雑だという課題があったと言います。そこで、利用者が少ない情報で分かりやすく簡単に手続きが行えるように、2022年12月19日のアルファ版第1弾、2023年2月23日の第2弾をそれぞれリリースし、利用者からのフィードバックをもとに順次改善を進めている状況とのことです。

    「UI/UXの改善のほかに、マイナポータルでは様々なAPIをご提供しています。つまり、民間サイトからマイナポータルの機能を利用できるというものです。現在リリースをしたサービスは110事業あり、開発中(審査・準備中)のサービスは106事業あります。今後は、新しいマイナポータルのベータ版のリリースや、国家資格システム/戸籍情報連携システムとの連携、さらにはマイナンバーカードと運転免許証の一体化への対応など、さらなる機能強化に向けて取り組んでいるところでございます」(村上氏)

    広がる、マイナンバーカードによる本人確認

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    千葉 孝浩(TRUSTDOCK 代表取締役CEO)

     続いてはディスカッションパートということで、モデレーターの瀧 俊雄氏(マネーフォワード 執行役員 CoPA Fintech研究所長)より、最初の議論のテーマとして「現在のマイナンバー・マイナンバーカードを用いた社会制度の現状評価」が設定されました。これに対して、TRUSTDOCKの千葉は以下のようにコメントしました。

    「弊社、マイナンバーカードや運転免許証など様々な本人確認書類を通じて顧客確認を行っているのですが、それこそ昔は本人確認書類の9割近くが運転免許証で、その次が保険証という世界でした。それが直近では、事業者にもよりますが、免許証が7割近くになり、残りの3割ほどはマイナンバーカードになってきています。これまで本人確認書類は免許証一択みたいな状況だったのが、公的個人認証等の仕組みの整備も相まって、「身分証と言えばマイナンバーカードを出す」という意識は確実に広がっているいると感じます」(千葉)

     

     一方でデジタル庁の村上氏は、「本当は“マイナンバーカード”という名称を変えたい」と説明します。

    「もちろんマイナンバーカードとしての側面もあるのですが、すごく簡単に言うと、目の前に本人がいなくても本人を確認できる手段を、国民の皆様に国家のインフラとしてお持ちいただいています、というのが正確なところです。要するに国民生活カードみたいなものだと思っていまして、オンラインで本人であることを確認する、一番優れていると思われる手段を、申請主義ではありますが全国民にお届けしようというのが、本取り組みの本来の意味です。実は説明の順番はこちらの方が先なのではないかと思っています」(村上氏)

     

     また衆議院議員の村井氏は、マイナポータルの仕組みに関するスライドを投影しながら、同氏が同サービスで想定している展開について説明をしました。

     現在のマイナポータルは、各府省に保存された自分の個人情報を取りにいくための「開く扉」の役割を担っており、ユーザーはマイナンバーカードをかざしてパスワードを入力することで、自分のデータにアクセスできるようになります。また、一度ログアウトをすると「扉が閉じる」ので、再度扉を開けるためには、もう一度マイナンバーカードをかざす必要がある状況です。

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     これに対して村井氏からは3つの提案がなされます。まずは「①APIゲートウェイの開設」と「②データアクセスの一括オープン」ということで、現状は民間サイトからマイナポータルへと連携する際には民間サイトとマイナポータルの行き来が複数回発生してしまうのですが、APIを切る位置を変えてデータアクセスを一括でオープンにすることにより、毎回マイナポータルに飛ばなくとも情報が取得できるようになるとのことです。

    「これまでのマイナポータルは、各行政機関同士が共有したい情報について『自己情報取得API』として取りにいくといういうものだったので、そもそも事業者や利用者に使ってほしい情報を取り出しやすく提供するというものではなく、それ故に横からAPIをつなげて使っていたという状況でした。それを、より情報を取り出しやすくして、かつ取り出せる情報も多様化させたいというのが、本取り組みで実現したいことです。このような2025改革を進めることによって、劇的に使いやすいマイナポータルが実現すると考えています」(村井氏)

    どこまで“フリクションレス”にするか、設計しがいがある

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     続いては、「マイナポータル連携によって開かれていく未来」をテーマに、各登壇者がコメントを寄せました。TRUSTDOCKの千葉は、「デジタルtoデジタルな世の中になっていく」と前提を置いた上で、以下のように所感を述べました。

    「将来の日本で出てくる課題として、例えばデジタルアセットの相続にまつわる話があると思っています。アナログな世界だと故人にまつわるアセット等を集めるのは難しくないかもしれませんが、昨今では暗号資産のようなものもあるので、このようなデジタル遺産を集めるのは、民間だけだと難しいのではないかと感じています。この辺りは、マイナンバーカードやマイナポータルを使って対応しやすくなるのではないかと考えています。
    また、我々は日々身分証等の不正偽造者と戦っているわけなのですが、事業者がそもそも不正集団だった場合のことを想定して、APIに接続できる事業者の確認というものも、どんどんと必要な世界になってくるだろうと考えています。そうなると、身分証や法人情報等を提示する『名乗る側』と、それを『確かめる側』をどこまでフリクションレスにするかというのが、設計しがいがあると感じています」(千葉)

    ※『名乗る側』と『確かめる側』については、以下の記事もご参照ください。

    ▶︎デジタルIDとKYC/CDDは「コインの表と裏」。両面に取り組むことが大切 〜BG2Cカンファレンスレポート

     

     また事業会社としての具体的な期待ということで、アフラック生命保険 取締役専務執行役員・CTO・CDIOの二見氏より「保険会社としてマイナポータルに期待すること」が紹介されました。

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    二見 通氏(アフラック生命保険 取締役専務執行役員・CTO(チーフ・トランスフォーメーション・オフィサー)・CDIO(チーフ・デジタル・インフォメーション・オフィサー))

    「お客様と我々保険会社の接点を考えると、大きく4つのステージが考えられ、どのフェーズでもマイナポータルを活用できると考えています。たとえば『提案』のフェーズでは、お客様お一人おひとりの年金情報や医療情報をしっかりと理解した上で提案しましょうと金融庁からのご指導もありますから、これを実現するにあたっては自己情報取得APIの活用が想定されます。同じく『契約』の部分でも、お客様からの了解を得た上で、マイナポータルから検診情報や医療保険等の情報を取得して確認を進めるということが考えられます。このように、保険会社としては非常に多くの活用方法があると感じています」(二見氏)

    データ連携においては「ユーザー同意」が必須でありポイント

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     最後に「これからの社会課題に向けてやりたいこと」というテーマで、各登壇者よりコメントがなされました。

     

    「多くのステークホルダーが一つのプラットフォームに集まるというのは、消費者にとっては非常に良いことだと思っています。イメージとしてはエストニアの『X-Road』だと考えており、今後はマイナポータルが中心となって、介護施設や地方自治体、スポーツジム、保険会社などの様々な業種のステークホルダーが連結して、より良いサービスや新しい価値が提供できることを期待しておりますし、我々としてもぜひ行政とも協力しながら進めていきたいと考えています」(二見氏)

     

    「今回発表したデジ田交付金(デジタル田園都市国家構想交付金)で、マイナンバーカードを使ったユースケースが565も出てきます。変わったところでは、投票所の受付管理や母子健康手帳の予防接種のプッシュ通知などが挙げられます。これらを進めていく中で僕らとしては、本人確認の強度に対する相場感をきれいに揃えていく必要があるかなと考えています。本人確認の強度には幅があるのですが、各サービスでどの強度を選べばいいのかという相場感というものがないので、それらを整備していくことが大事だと思っています。なお、先ほどの千葉様の話にありました法人確認の件ですが、当然ながら我々の方でも審査してご利用いただく形にしております。このように、広くユーザーに使ってもらうための作業と、セキュリティ上不適切なユーザーの有無をチェックするといった作業は、両方向で進めていきたいと考えています」(村上氏)

     

    「一言でお伝えすると、マイナポータル改革は、行政が持つ多様な情報を本当の意味で使いやすく、使えるようにする改革です。日本という国は皆保険・皆年金ということもあり、行政が持っている情報が他国に比べて圧倒的に多いと言えます。そこに大きな可能性があるとご理解いただければと思います」(村井氏)


    「今回のFIN/SUMのテーマは『シン個人』ということで、デジタルtoデジタルな社会において考えるべきは、どういう形でユーザー同意をとるかということかなと思います。「サービス事業者に提供(登録)した自分の情報は、こういう形で利用される」ということを、ユーザー自身がきちんと認識した上でアクションできるようにする。そんなユーザー同意コントロールが今後の重要なトピックになると考えています。弊社もその領域で色々と貢献していきたいと考えています」(千葉)

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     TRUSTDOCKでは、“本人確認のプロ”として企業のKYC関連業務をワンストップで支援するAPIソリューションを提供し、またデジタル身分証のプラットフォーマーとして様々な事業者と連携しております。府省庁においては、金融庁には具体的な業務内容の確認を行い、総務省のIoTサービス創出支援事業では本人確認業務の委託先として採択されました。また、警察庁には犯罪収益移転防止法準拠のeKYCの照会等を行い、経済産業省とはマイナンバーカードを活用した実証実験や省内開催の研究会等でご一緒しています。
     マイナンバーカード等を活用した本人確認業務のオンライン化を進める際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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     また、eKYCソリューションの導入を検討されている企業の方々や、実際に導入プロジェクトを担当されている方々に向けてはPDF冊子「eKYC導入検討担当者のためのチェックリスト」を提供しており、eKYC導入までの検討フローや運用設計を行う上で重要な検討項目等を計12個のポイントにまとめていますので、こちらもぜひご活用ください。

    eKYC導入検討担当者のためのチェックリスト

     

     なお、以下の記事でeKYCおよびKYCについても詳細に解説していますので、こちらも併せてご覧ください。

    ▶︎eKYCとは?オンライン本人確認を徹底解説!メリット、事例、選定ポイント、最新トレンド等

    ▶︎KYCとは?あらゆる業界に求められる「本人確認手続き」の最新情報を徹底解説

     

    (文・長岡武司)

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