マイナンバーカードで行政/自治体DXを加速〜公的個人認証・本人確認・電子署名の活用事例

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更新日: 2022/03/04

目次

     2021年9月にデジタル庁が発足し、国を挙げたDX(デジタル・トランスフォーメーション)の波が本格化してきました。人口減少と超高齢社会の到来に伴い、社会福祉と社会保障がますます重要になる我が国にとっては、生産性を向上させてサステナブルな仕組みを戦略的に作っていくことが不可欠だからこそ、公共のDXも待ったなしの状況だと言えるでしょう。

     そんな中、2022年2月17日に開催された「第3回公共DXフォーラム~デジタル社会の実現に向けて~」(JBpress主催)では、日本全国の公共セクターを支えるメンバーに向けて、公共領域における業務効率化やコスト削減、住民サービスの向上を達成する方法などを考察するオンラインセッションが複数設置されました。

     本記事では、その中でもTRUSTDOCKによる「マイナンバーカードを活用した公共DX」セッションの内容についてレポートします。

    登壇者

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    • [写真左]千葉 孝浩(株式会社TRUSTDOCK 代表取締役)
    • [写真右]肥後 彰秀 (株式会社TRUSTDOCK 取締役)

    復習:マイナンバーとマイナンバーカードの違い

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     マイナンバーカードにまつわる誤解として多いことの一つが、「マイナンバーカード」と「マイナンバー」が混同されるケースです。ここで改めて、その違いについて復習したいと思います。

     マイナンバーは「個人番号」とも呼ばれ、日本国内の全住民に指定・通知されている12桁の番号のことを示します。これは、取得や利用、提供、保管等において一定のルールがあり、番号法に定める場合を除いて収集や保管が禁止されているものとなります。

     一方でマイナンバーカードは、マイナンバーの通知後に、個人の申請によって交付される顔写真入りのプラスチック製カードのことを示します。マイナンバーの確認と本人確認を一枚で行うことができるもので、カードの中には、電子的に個人を認証できる電子証明書を搭載したICチップ等が埋め込まれています。

     よく「マイナンバーの交付」という表現をする方がいらっしゃいますが、正確には「マイナンバーカードの交付」です。マイナンバー自体はすでに全国民に一意の数字列として付番されており、政府による交付目標は、あくまでマイナンバーカードについてのものとなります。

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    「マイナンバーカードの普及状況はこちらのとおりで、2022年1月時点で5,100万枚を突破し、人口に対する交付枚数率は約41%となっています。運転免許証の交付枚数が約8,200万枚で、パスポートの交付枚数が約3,020万枚であることに鑑みると、すでに普及期に突入したと考えて良いでしょう」(千葉)

    マイナンバーカードを活用した取り組み

     マイナンバーカードには、大きく分けて3つの活用に向けた機能が実装されています。

    • ICチップを使った公的個人認証
    • QRコードを使ったマイナンバーの取得
    • ICチップを使った券面情報の取得

    ICチップを使った公的個人認証

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     「公的個人認証」とは、マイナンバーカードのICチップに含まれる「署名用電子証明書」と「利用者用電子証明書」という2種類の電子証明書を活用して、申請や届出といった行政手続やインターネットサイトにログインを行う際の本人確認を実施する手段となります。

    mynumbergovdx05画像出典:総務省「公的個人認証サービスによる電子証明書

     たとえばTRUSTDOCKのソリューションで、公的個人認証を活用した本人確認のデモ動画が以下となります。マイナンバーカードをスマホにかざし、マイナンバーカードのパスワードを入力した上で、ICチップ読み取りのためのボタンをタップ。これだけで、公的個人認証による本人確認が完了します。

     電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律第17条第1項第6号の規定に基づく総務大臣認定事業者であるTRUSTDOCKだからこそ、このようなシームレスな仕様が可能となっています。

    ※公的個人認証については以下の記事で詳しく解説しているので、併せてご参照ください。

    ▶︎公的個人認証サービスとは?「ICチップ読み取り型eKYC」が主流になるミライに向けたトレンドを解説

    QRコードを使ったマイナンバーの取得

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     マイナンバーカードの左下を見てみると、QRコードが印字されています。このQRコードを活用して、マイナンバーを取得することもできます。

    「裏面に印字されているQRコードを読むと、12桁のマイナンバーがそのまま読めるようになっているので、個人が番号を記憶する必要がありません。現在、ふるさと納税や各種会社手続きなど、マイナンバーの申告が求められるシチュエーションにおいてマイナンバーカードのコピーを郵送するという手続きが多くの場所でなされていると思いますが、これを電子化する機能として期待されているものとなります」(肥後)

    ICチップを使った券面情報の取得

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     マイナンバーカードでは、ICチップを使って券面情報を取得することもできます。

    「券面情報とは、マイナンバーカードの表面・裏面に記載されている各種情報のことです。よく公的個人認証と混同されるのですが、公的個人認証はマイナンバーカードに格納されている各種情報がリアルタイムで有効かどうかを自治体データベース等に確認するサービスである一方で、券面情報取得とはカードの中に格納された情報を取得できるものとなります」(肥後)

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    「ちなみに、政府におるワクチン接種証明アプリはマイナンバーカードの“券面事項補助入力AP”という機能を使ったアプリです。カード発行時に設定した4桁の暗証番号を入力すると、自身の4情報(住所・氏名・生年月日・性別)及びマイナンバーが取得でき、それを送信することによって、ワクチン証明アプリとして使える仕様となっています」(肥後)

    TRUSTDOCKアプリで実現するユースケース案

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     TRUSTDOCKでは、リアルな身分証を都度渡さなくても身元確認ができる「デジタル身分証アプリ」を提供しています。このデジタル身分証アプリは公的個人認証での電子署名に対応している他、例えばふるさと納税ワンストップ特例の手続き(公的個人認証+マイナンバー取得)や、住民向けサービスでの本人確認(公的個人認証)など、様々な行政実務にも対応しています。

     さらにこちらは、1人1回のみの申込・申請等を条件とする“抽選”のような仕組みにも応用できると考えています。

    「4桁の暗証番号で取得できる証明書は実は匿名なのですが、どこかの誰かということは確実に特定できるので、これを使うと1人1回の抽選みたいなことが可能になります。イベントの抽選はもちろん、1人に複数回申し込んでもらいたくないような業務が対象として想定されます」(肥後)

    行政におけるDX事例3選

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     ここからは、実際にTRUSTDOCKがご一緒している公共DX事例について、3つの取り組みが紹介されました。

    農林水産省「TRUSTDOCKアプリで公的個人認証」

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     農林水産省では、「eMAFF(読み方:イーマフ)」と呼ばれるオンラインポータルサービスを運営しており、同省が所管する法令に基づく申請や補助⾦・交付⾦の申請を、オンラインで⾏うことができるようにしています。このeMAFFを活用する際の本人確認フローに乗せる形で、TRUSTDOCKのデジタル身分証アプリが活用されています。

     eMAFFを使うにあたっては経済産業省提供の「GビズID」を取得する必要があり、従来では法人化されていない事業者について農林水産省職員や自治体職員が対面で書類を確認して登録を進めていたのですが、コロナ禍でその運用が難しくなったことから、今回のオンライン化への舵取りがなされたことになります。

     こちらの事例の詳細については、以下のイベントレポートも併せてご参照ください。

    ▶︎農林水産省がTRUSTDOCKのデジタル身分証アプリを導入した理由 〜金融DXサミットレポート前編

    福岡市「デジタル身分証アプリによる自治体職員の勤怠管理実証」

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     福岡県福岡市では、2021年に「福岡市実証実験フルサポート事業」を展開しており、その中の「Beyond Coronavirus (=コロナを乗り越える)」実証実験において、TRUSTDOCKが採択されました。

     テーマは「福岡市の職員の勤怠管理をTRUSTDOCKデジタル身分証アプリで行う」というもの。具体的には、まずデジタル身分証アプリを使って、身分証による身元確認および職員証による職員確認を通じて、デジタル身分証を発行します。これと並行して出勤管理システムとの連携がなされているので、本人確認を一度行うことで、そこからは日々の打刻の代わりにアプリでの出勤管理がなされるようになります。一部の職員は紙で勤怠管理をしていたことも相まって、勤怠管理のDXを実現する実証となっています。

    つくば市「つくばスタートアップパークの利用申請デジタル化実証」

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     茨城県つくば市では、平成29年度から「世界のあしたが見えるまち」というビジョンのもと、革新的な技術やアイディアで社会課題を解決する、Society5.0の社会実装に向けた実証実験を全国から公募し、優れた提案を全面的にサポートしています。そんな中、令和2年度における「With/Afterコロナの生活スタイル」というテーマの公募に対して、TRUSTDOCKによる提案が採択され、行政手続きのオンライン化実証がスタートしました。

     テーマは「つくばスタートアップパークの利用申請デジタル化」ということで、同施設を定期利用する人以外のドロップイン利用も含めて、従来フローにおけるアナログな対面利用申請手続きを、自宅からでもオンラインで完了できるプロセスへとDXする実証実験を進めています。

    民間でのTRUSTDOCK「デジタル身分証アプリ」

     ここまでは主に公共領域におけるマイナンバーカードおよびデジタル身分証アプリの活用についてお伝えしましたが、TRUSTDOCKではこの他にも、多くの民間領域での活用実績があります。特に、様々な身分証およびIDに対応した本人確認専用アプリとなっているので、個人情報管理のハブとしての役割を想定した、多様なシチュエーションにフィットした仕様となっています。

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    「ここまでお伝えした公的個人認証や電子署名機能の他にも、犯罪収益移転防止法のeKYC全手法に対応したものや免許証・在留カード等のICチップ読取に対応したものなど、本当にたくさんの機能が入っているので、いかに最適なサービスにフィットさせるかがポイントになっていますね」(肥後)

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    「本人確認以外にも、たとえばSansanさんとは企業の在籍確認のソリューションで連携するなどしており、連携の幅は広がり続けています。また、日本国内だけではなく、タイをはじめグローバルな展開も加速しており、日本発のデジタルアイデンティティ・KYCのインフラ整備に尽力している状況です」(千葉)

    本人確認のプロ・TRUSTDOCK

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     TRUSTDOCKでは、“本人確認のプロ”として企業のKYC関連業務をワンストップで支援するAPIソリューションを提供し、また前述したとおり、デジタル身分証のプラットフォーマーとして様々な団体・事業者と連携しております。

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     例えば、金融庁には具体的な業務内容の確認を行い、総務省のIoTサービス創出支援事業では本人確認業務の委託先として採択されました。また、警察庁には犯罪収益移転防止法準拠のeKYCの照会等を行い、経済産業省とはマイナンバーカードを活用した実証実験や省内開催の研究会等でご一緒しています。

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     さらに2021年9月には、デジタル社会の本人確認・認証・デジタルIDに関して、有識者によるアドバイザリーボードを設置し、eKYC等、デジタル社会に不可欠なインフラのあり方についての議論を開始。知見を自社で独占するのではなく、社会全体のグランドデザインも含め、積極的にアウトプットして還元しております。

    「DXの先がディストピアにならないよう、生活者と企業、それぞれのソリューションをについて日々皆さまと一緒になって構築を進めています」(千葉)

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     行政のDXやマイナンバー×本人確認のポイント等については、以下の記事で詳しく解説しているので、併せてご覧ください。

    ▶︎行政DXとは?国内行政デジタル化の経緯や事例、データの重要性、本人確認への応用などを徹底解説

    ▶︎マイナンバー取得時に必要な本人確認とは。できるケースとできないケースを解説

     

     またTRUSTDOCKでは、eKYCソリューションの導入を検討されている企業の方々や、実際に導入プロジェクトを担当されている方々に向けてはPDF冊子「eKYC導入検討担当者のためのチェックリスト」を提供しており、eKYC導入までの検討フローや運用設計を行う上で重要な検討項目等を計12個のポイントにまとめていますので、ぜひご活用ください。

     

     なお、以下の記事でKYCおよびeKYCについて詳細に解説していますので、こちらも併せてご覧ください。

    ▶︎eKYCとは?オンライン本人確認を徹底解説!メリット、事例、選定ポイント、最新トレンド等

    ▶︎KYCとは?あらゆる業界に求められる「本人確認手続き」の最新情報を徹底解説

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    (文・長岡武司)

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