「自治体DX推進計画」の2022年夏の改定ポイントとは?検討会座長・庄司昌彦氏による解説セミナーレポート

法/規制解説

更新日: 2022/09/20

目次

     2020年12月に総務省より発表された「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」(以下、自治体DX推進計画)の改定が、2022年夏〜秋にかけて予定されています。

     役所で行われる窓口業務をはじめ、市民の生活に近い仕事から市政運営に関する仕事まで、いかにしてデジタル技術を活用した業務のオンライン化、ひいては業務全体の構造改革を実現していくのか。そして、人口減トレンドの社会においてどのように「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」を進めていくべきなのか。

     本記事では、2022年8月26日に開催された「地方自治体のデジタルトランスフォーメーション推進に係る検討会 」座長の武蔵大学社会学部教授・庄司 昌彦氏が登壇した「自治体DX推進計画の改定のポイント」解説セミナーの様子をレポートします。本ウェビナーは、200名以上の行政・自治体担当者、また自治体DXに関わるITベンダーなどにお申込みいただき、また開催後アンケートでも5つ星で平均4つ星以上の評価をいただきました。

    改定版公開前に開催されたイベントのため、検討会の公開資料を元に解説がなされました

    解説者プロフィール

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    庄司 昌彦

    武蔵大学
    社会学部 メディア社会学科 教授

    1976年生まれ。中央大学大学院総合政策研究科博士前期課程修了、修士(総合政策)。おもな研究領域は情報社会学、情報通信政策。2002年~国際大学GLOCOM研究員、2019年~武蔵大学社会学部教授。デジタル庁オープンデータ伝道師、総務省自治体システム等標準化検討会座長、総務省地域情報化アドバイザー、(一社)オープン・ナレッジ・ファウンデーション・ジャパン代表理事、(一社)インターネットユーザー協会理事なども務めている。プロフィール詳細はこちら

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    aboutpa_prof4

    渡辺 良光

    株式会社TRUSTDOCK
    Identity事業部 GRコンサルティング

    栃木県庁に入庁し、24年間にわたって自治体行政に従事し、地域課題を解決するための様々なプロジェクトの立ち上げやマネジメントを担当。DXに関する領域では、市町村や民間企業と連携しながら、路線バスの運行情報に関するデータ整備、自動運転バスの実証実験等を推進した経験を有する。

    TRUSTDOCKではGR(Goverment Relations)担当として入社後、各自治体のDX推進を統括する担当課等とともに、地域課題を解決する取り組みを模索、実行している。TRUSTDOCK magazineでのインタビューはこちら

    自治体DXの背景

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     まずは改めて、自治体DXが必要とされている背景が説明されました。テーマは「デジタル敗戦」とこれからの「2040年問題」です。

    デジタル敗戦の理由と問題の所在

     国や自治体のデジタル化が遅れていることのエピソードとして、多くの方はコロナ禍における持続化給付金等の遅延や誤支給、そして相次ぐ不正を思い浮かべるかもしれません。しかし、これらは我が国が抜本的なデジタル化に着手してこなかった“ツケ”として表出した一事象に過ぎず、本質的にはもっと根深い部分で蓄積していた問題であると庄司氏は述べます。

    「たとえばPISA2018の調査(OECD加盟国のICT活用調査)によると、日本の学校でのコンピューター使用頻度は加盟国中最低となっており、また少し前にはコンピューターを使ったことのない人が我が国のサイバーセキュリティ担当大臣を務めるなど、昭和の働き方や仕事の仕方が未だになされていることが分かります。これによる影響として、大阪大学・酒井博司教授の三菱総合研究所での記事によると、『政府の効率性』および『ビジネスの効率性』が特に低いことが分かります。効率性と言うと、無駄がなくて早くというイメージかもしれませんが、日本人はどちらかというとそこは問題ではなく、むしろ『必要のないことを古い方法で真面目にやっている』ことの方が問題だろうと思います」

    jichitaidx03画像出典:文部科学省「令和元年度 文部科学白書」特集1 教育の情報化~GIGAスクール構想の実現に向けて~ p17

     では、デジタル化がうまく行っている国はどうかと目を向けてみると、例えばデンマークは分かりやすい例となっています。同国では今から15年以上前の2005年時点で、CPR番号(デンマークの国民識別番号)と個人の銀行口座を1対1で紐づける仕組み(NemKonto)が誕生しており、その保有を義務化しています。また、2007年に運用開始された電子私書箱「2-boks」(同じくCPR番号を紐づけられたもの)も、2011年には保有が義務化され、窓口に出向くことなく自治体や医療機関等からの連絡が届く仕組みが整備されています。

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    「義務化と言うのが一つポイントですし、高齢者も利用できる使い勝手ということで、画面・サービスのデザインやUXで非常に頑張っていることもあるでしょう。また、国民の政府に対する透明性・説明責任への要求も高く、政府自身もそこを重視しているという状況です」

    「2040年問題」に向けた自治体DX

     このように、日本社会が総じてデジタル敗戦国の様相を呈する中、もう一つ、我が国が課題先進国として考えねばならないのが「2040年問題」をはじめとする人口減少トレンドに起因する様々な問題です。「2040年問題」とは、2025年から2040年の15年間で、団塊ジュニア世代が65歳以上になり、それより下の現役世代(20歳〜64歳)が約1,000万人も減少するというものです。

    「さらにその先の話として、75歳以上人口が2054年まで増加し続けることも大きな問題となっており、小黒 一正氏はこれを『2054年問題』と表現しています。つまり、人口動態として非常にバランスが悪い時代を迎えることになります。こちらのグラフにもある通り、そもそも生産年齢人口が少ない時代を迎えるため、自治体においても採用人数を増やすのは、おそらくは困難なのではないかと考えています」

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     2017年10月〜2018年6月にかけて開催された総務省「自治体戦略2040構想研究会」の報告書によると、「各自治体においては、公的部門と民間部門で少ない労働力を分かち合う必要がある」とされており、また「従来の半分の職員でも自治体として本来担うべき機能が発揮でき、量的にも質的にも困難さを増す課題を突破できる(略)必要がある」としています。

    「このような背景から、報告書では『スマート自治体』への転換が言及されています。つまり、共同化できるものは共同化し、人でなくてもできる仕事は機会にやらせるということです。これは何も『人的コストをカットしなさい』と言っているのではなく、そもそもそういう時代になってしまう、ということです」

    jichitaidx06画像出典:総務省「自治体戦略2040構想研究会 第二次報告」p31

    DXと求められる人材

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     DX(デジタルトランスフォーメーション)については、多くのビジネスシーンで語られていることではありますが、そのポイントは経済産業省によるガイドラインで表現されている以下の説明が重要だと、庄司氏は強調します。

    データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

    引用:経済産業省「DXを推進するためのガイドライン」p2

    「例えば銀行の窓口を考えてみると分かりやすいと思うのですが、一昔前までは営業時間中に窓口に行って印鑑と通帳を持って対応してもらうことが一般的なサービスでした。これに対して最近では、自分でできる人はATMやパソコン・スマホを使っていつでもどこでも諸手続きが可能になっており、窓口は本当に助けが要る人に手厚く対応するためのものとして機能するようになっています。自治体においても同じ考え方で、自分でできる人に対しては自分でできるようなシステムを整備することが大事です」

     一方で、デジタル化プロジェクトを進めると「結果として業務量が増えた」という声も多く発生しているようです。これについて庄司氏は「根本の仕事の仕方が変わっていないからだ」と強調します。

    「手続きのデジタル化で選択肢を増やすだけでは不十分で、結局『デジタルでも可能』とすると、結局はどこかでアナログに戻す作業が必要になり、現場の負担がただ増えるだけになってしまいます。本質的には、そもそもの事務のあり方を変え、行政内部での業務をフルデジタル化して、各組織のルールを自ら見直していくという業務改革が必須だと言えます」

     では、これを実施するにあたってどのような人材が必要なのでしょうか。これについて庄司氏は、自ら課題を発見し指摘できる人や、デジタルの力を十分に引き出す仕事の仕方を設計できる人を挙げます。

    「ブロックチェーンやAIに詳しいといった要件は実はあまり必要ではなく、どちらかというと『アナログ改革』ができる人が必要だと考えています」

    DXに向けた国の取り組み

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     では、このようなDXに向けて、政府は具体的にどのような動きをしているのでしょうか。以下は、庄司氏が座長を務める「地方自治体のデジタルトランスフォーメーション推進に係る検討会」(以下、検討会)の第10回にて提出された、自治体DX推進計画策定後の自治体DXを取り巻く政府全体の主な動きを年表形式でまとめたものです。

    jichitaidx09jichitaidx10画像出典:総務省「地方自治体のデジタルトランスフォーメーション推進に係る検討会(第10回)」自治体DX推進計画策定後の動き p2〜3

     上記年表に記載の通り、自治体DX推進計画は、「デジタル・ガバメント実行計画」における自治体関連の各施策について、国が主導的に役割を果たしつつ、自治体全体として、足並みを揃えて取り組んでいくために、自治体が重点的に取り組むべき事項・内容を具体化して総務省及び関係省庁による支援策等をとりまとめたものです。2021年1月から2026年3月までを対象とする計画を定めたもので、「(仮称Gov-Cloud:ガバメントクラウド)」の利活用に向けた検討や、デジタル庁の設置など国の動向を反映させるよう適宜見直しを行うこととされています。

     そして、この自治体DX推進計画に対して、自治体が具体的に着手できるように一連の内容を手順化したものが「自治体DX推進手順書」となります。

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    「自治体DX推進手順書は大きく4つありまして、こちらの2番と3番は、国が特にやりましょうとお願いしているもので、いわゆる『法定DX』と呼ばれているものです。じゃあこれだけ読めばいいかというと、そうではなく、全体の手順書となる1番や、参考事例集となる4番、いわゆる『自主的DX』と呼ばれるものについても、しっかりと読んで理解することが大切です」

     なお、岸田内閣になってからは「デジタル臨時行政調査会」(通称:デジタル臨調)というものが開催されていると、庄司氏は補足します。

    「要するに、昭和のやり方を法令等で明記しているものを洗い出し、見直しを行うという取り組みが2021年11月から始まっています。たとえば『目視で月1回の検査が必要』としているものを『センサーで常時監視にする』という具合に、デジタルな手段に切り替えられないかを進めているわけです。これはいずれ、自治体でもやろうという話になってくると思っており、そうなると『自主的DX』の世界として、横断的に見直しましょうという話になると思っています」

    ※行政DXの詳細については以下の記事をご参照ください。

    ▶︎行政DXとは?国内行政デジタル化の経緯や事例、データの重要性、本人確認への応用などを徹底解説

    データで見る自治体DXの現状

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     では、自治体DXはどこまで進んでいるのでしょうか。検討会第10回で提出された資料では、全庁的・横断的な推進体制の構築状況やDX推進専任部署の設置状況など、自治体DXの推進体制の構築に向けた現状のデータが提示されています。

    「たとえば市区町村におけるCIO・CIO補佐官の任命状況を見てみると、CIOのマネジメントを専門的知見から補佐するCIO補佐官について、外部デジタル人材を活用できている市区町村は8.4%に留まっています。自治体DX推進計画では『内部に適切な人材がいない場合には、外部専門人材の活用を積極的に検討する』こととしているのですが、ここはまだ圧倒的に少ない印象です」

     また、自治体DXを進める上で欠かせないテレワークの実施についても、庄司氏は「現状は非常に残念な状況だ」とコメントします。

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    「これを見ると、市区町村ではそもそも半分くらいしかまだテレワークをやっておらず、また『できる』と言っているところも、みんなができているわけではなく、実質的な導入状況はかなり少ないのが現状です。未導入団体における未導入の理由は『窓口業務や相談業務などがテレワークになじまない』とか『現場業務はテレワークになじまない』などがあるのですが、そもそも、そんなに窓口業務をやっている人がいますか?という話です。個人的には、この辺りの要因は解消できるのではないかと思っています。また、同様の理由に『導入コストがかかる』というものがありますが、これも現場仕事の移動コスト等を無視しているんじゃないかなと思っており、レジリエンスという面でも課題だと感じています」

    自治体DX推進計画改定にむけた議論

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     このように今後クリアすべき課題もある自治体DXですが、その状況や現場のペイン等に合わせて自治体DX推進計画の改定が進んでいます。

    「自治体DX推進計画は菅政権のときに作られたものですが、それから色々な法改正を経て、基本理念や原則ができ、デジタル田園都市国家構想や先ほどお伝えしたデジタル臨調等の取り組みも出てきました。この辺りの動きを踏まえて、意義や計画の趣旨の部分に手を加えています。また、推進体制の構築についてはかなり力の入った記載になっていると思いますし、情報システムの標準化・共通化部分についても、市区町村の進捗管理等について追記する予定となっています。さらに、事例集もバージョンアップをしてより豊富になっているので、私としてもお勧めしたいところです」

     それでは具体的には、どのような議論がなされているのでしょうか。庄司氏からは、主に検討会第10回以降の議論より、ポイントとなる部分が紹介されました。

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    「たとえば第11回では、自治体DXに関わる人材についての議論がなされました。人材については、もともと総務省の方で非常に細かく整理しているのですが、それに関して『詰まりすぎている』という意見がありました。あれもこれも必要でレベルが高すぎるんじゃないかということで、非常に精緻に作られているのですが、絶対にやらねばならないものだと認知されないように工夫しようという議論をした次第です。参考資料として見ていただくとよい、ということです」

     また第12回においては、スケジュールや具体的な取り組みの粒度等についての議論もなされたと、庄司氏は続けます。

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    「職員が楽になるような取組みは後回しだ、みたいな声があるようですが、むしろ内部の業務を改革することこそが本質です。いずれにせよ、多くの取組みが求められているのでメリハリをつけて説明しないと現場がいっぱいいっぱいだ、という声も多いことから、そのような観点でも作成しているものとなります。

    なお、多くの自治体から『事例を紹介してください』と聞かれるのですが、大前提として、国内外の先進事例に踊らされてはいけないとお伝えしています。実験的に新しい技術やサービスをアドオンで試してみるような状況ではもはやなく、目の前にある昔ながらの業務や窓口にいらっしゃる市民のご苦労のをよく観察して、そこから自ら問題発見して業務改革に取り組むことが、自治体DXのポイントだと考えています」

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     その前提で庄司氏は、北海道北見市における窓口サービス改善の取り組みや、東京都の保健所業務のデジタル化プロジェクト、北海道音更町におけるオンライン手続き体験の取り組みについて紹介しました。

    「行政が使う言葉や手続がシンプルで優しいものにならないと、行政DXは進みません。よく『デジタル化が難しい』と言いますが、そもそも『行政が相当難しい』という面もあるのです。複雑なままデジタル化するのではなく、行政の改革とデジタル改革を両輪にしてシンプルで分かりやすいものにしていく『両面の改革が必要』だと考えています」

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     最後に、講演のまとめとして庄司氏から以下のメッセージが寄せられました。

    「自治体DXにおいて重要なことは、負荷を減らし、将来は半分の人手でも地域社会の運営を維持・発展していけるように自ら課題を発見して、デジタルの力が発揮できる仕事の仕方を作っていくことです。国による法定DXだけでなく、ぜひ『自主的DX』を進めていただければと思います」

    パネルディスカッション

     最後に、セミナー参加者からの質問をベースとするパネルディスカッションが行われました。モデレーターは、栃木県庁で24年間自治体行政に従事した後にTRUSTDOCKにジョインした渡辺 良光(Identity事業部 GRコンサルティング)が務めました。

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    渡辺:システムの標準化やガバメントクラウドの対応は令和7年度までということが示されている中で、自治体としては、国の動きを見極めた上でやっていきたいという思いがある一方で、国の動きを待っていては遅すぎるというジレンマを抱えながら取り組みを進めている印象です。このことについてどのように思われますか?

     

    庄司:出てくるべきものが出てきていないのに「締め切だけ守れ」というのは、たしかに違うと思います。令和7年度までというのは非常に高い目標だと思いますし、当時の菅総理が出ている会議でも、私は状況を踏まえて見直しもするべきだという趣旨で発言しています。締め切りを守ることが絶対になると、みんな帳尻を合わせてやるかもしれないですが、出来の悪いものができるリスクもあります。スケジュールとシステムの質のどちらをとるべきかと言われれば、間違いなく後者だと思います。

    ただ、標準化の取組みの中で、何がどれくらい遅れそうなのかという具体的なボトルネックについては、私もよく分かりません。仕様書も出ていませんし、ガバメントクラウドの詳細もこれからです。なので、まずは自治体がどう進めているかをきめ細かく把握して、問題が明らかになったところに手を打っていく。それによって、もう少し細かい議論になっていくんじゃないかと思います。今回の改定は主に「計画書」の方なのですが、今後も改定はしていくという話になっていますし、「手順書」も今後どんどんとバージョンアップしていくと思います。

     

    渡辺:小規模自治体の場合のDXのあり方について質問が来ています。人員や予算が不足する中でどうやって進めていくべきでしょうか? もともと大規模自治体だと、例えば10人規模で業務を分担していたものをデジタル化で5〜6人でできるようになるという形で分かりやすいと思います。一方で、小規模自治体の場合は、もともと1人が複数業務を担当しているような状況なので、オンライン化しても、その1人がゼロになるわけではありません。その辺の考え方についてはいかがでしょうか?

     

    庄司:まず何のためにやるのかという部分からもういちど確認しましょう。人口減少社会において、行政職員に負荷が限界までかかっていくところを何とかするというのが自治体DXのスタンスですから、小さな自治体が回るようにしていくことが、そもそもの目的だと言えるでしょう。

    小さな自治体の担当者は非常にご苦労が多いとは思いますが、自治体DXの本質は仕事の仕方についての改革であり、意思決定によるものが結構多いですので、そういう意味では、小さな自治体の方が、調整コストが小さく意思決定がしやすいという優位性があるのではないかと思っています。

    その際に、システムをカスタマイズしていくのではなく、ある程度のパッケージに合わせて業務を合わせていくという発想でいることがポイントです。もちろん、コストが一時的にかかるのは間違い無いと思いますが、たとえば地方税など毎年の制度改正があったときに、システムのどこを直すのか検討して発注していたものが、標準システムの利用によってだいぶ楽になるはずです。将来のコスト削減効果を見込んで、うまく内部を説得して、一時的な投資をしていただければと思います。

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    渡辺:最後に、行政手続のオンライン化について、お考えをお聞かせください。申請周りの業務や書類の簡素化といった業務の見直しが不可欠と思いますが、一方で、業務の見直しについて庁内での合意形成が難しいという意見も多く聞きます。私自身、もともと中にいた人間ですが、自治体の職員は、基本的に真面目だと思いますので、間違えないようにしようと考える傾向が非常に強いと思います。そうなると、例えば、何か許可を出す際にも、事前にあれもこれも確認しなければならない、こういう書類も提出してもらわなければならないといったことになりがちですが、行政手続の簡素化や行政運営の効率化を考えていく上では、こうした事前規制の考え方から発想を大きく転換する必要があると考えています。数字はあくまでもイメージですが、これまで事前に100%確認していたものを、事前に必要最低限の7〜8割を確認して、残りの2〜3割については事後の監督等の中で必要に応じてチェックするというようなことですが、いかがでしょうか?

     

    庄司:学者も、より細かく場合わけをして議論を複雑にしていきがちなのですが、利用者の立場に立ってみて、「それは実際に回るのか」と考えることが大切だと思います。残念ながら、人のリソースは無限ではない時代にどんどんとなっていくので、省力化は必要ですし、デジタルにすることで分かることもたくさんあると思うので、そこの理解を深めていく必要があるのかなと思います。

    先ほどの話とつながりますが、標準化がうまくいくと全国の自治体業務が揃うので、全体最適に向けた制度改革がやりやすくなるはずです。今は現行の制度を前提として標準化を進めているので各制度の改革には踏み込めていないのですが、全国の業務やシステムが揃った後の将来思考の議論を参加の皆様とやっていけたらと思っています。

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     なお、eKYCの詳細については以下の記事でも詳しく説明しているので、併せてご覧ください。

    ▶︎ eKYCとは?オンライン本人確認を徹底解説!メリット、事例、選定ポイント、最新トレンド等

     

    (文・長岡武司)

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