シェアリングと所有が循環する経済圏を考える 〜シェアウィーク2023レポート

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更新日: 2023/11/30

目次

     2023年11月10日〜17日、一般社団法人シェアリングエコノミー協会が主催する日本最大のシェアの祭典「シェアウィーク2023」が開催されました。今回はその中でも、TRUSTDOCK代表の千葉孝浩が登壇したトークセッション「SHARE to OWN 〜シェアと所有が循環する経済圏〜」の様子をレポートします。

     カーシェアを前提とした車/キャンピングカー等モビリティの購入や民泊を前提とした物件購入など、「シェアする前提でモノを買う」といった消費スタイルが近年広がりを見せています。SDGsやサステナビリティを意識した消費意識の変化なども踏まえて、企業は今後どこに着目すべきなのか。SHARE to OWNの実践者たちが新たな経済圏の潮流を探っていきました。

    登壇者情報

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    • 馬場 光(株式会社 DeNA SOMPO Mobility 代表取締役社長) ※モデレーター
    • 千葉 孝浩(株式会社TRUSTDOCK 代表取締役CEO)
    • 二瀬 慎(カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社 COO補佐官 / ライフスタイル戦略 兼 モビリティーコンサル事業部長 / CCCアウトドアラボ ラボ長)
    • 宮本 芽依(株式会社MeiMei 代表取締役社長)

    試してから購入する環境がどんどんと整備される世界

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    カーシェア事業以外にも、自動車メーカーに対してカーシェアを通じた新型車の試乗体験提供と購入促進を支援する「バーチャルストア」事業等も展開し、クルマを所有しない層にも、クルマの所有を検討する機会提供を積極的に推進している

     

     モデレーターである馬場 光氏が代表取締役を務めるDeNA SOMPO Mobilityでは、カーシェア&レンタカーサービス「エニカ(Anyca)」を展開しています。エニカでは、オーナーが所有するクルマを共同使用契約締結の下でカーシェアする「PtoPカーシェア事業(共同使用)」と、同社が所有する「わ」ナンバーのクルマをステーション型レンタカーとして利用する「BtoCカーシェア事業(有償貸渡)」を事業展開しており、前者の累計登録台数は2万8,000台以上となっています(2022年末時点)。

     

    (参考記事)

    ▶︎eKYCの導入が審査業務最適化の第一歩:DeNA SOMPO Mobility様 カーシェアサービス「エニカ(Anyca)」の事例

     

     そんな馬場氏から「皆さんはどのように所有するものを見つけ、比較し、購入されているのか?」と言う質問が投げかけられ、それに対して「所有の現在地」について、各登壇者が意見を寄せました。

     

    shareweek2023_03自動運転の実現に伴いバンが「動く家になる」という、ある種の“生き方”としてのバンライフを彩るケース紹介として、雑誌『VOGUE』に掲載。キャンピングカーデザイン以外にも、デジタルリーダーシッププログラムや、女性のためのコミュニティ運営等を手がけている

     

     現在バンライフを送りながら日本初のキャンピングカーデザイン事務所・MeiMeiを営む宮本 芽依氏は、高校生の時にInstagramで米国人夫婦がバンライフで自由に生きている姿に感銘を受け、就活開始のタイミングで自身もバンライフをすることを決心。最初はキャンピングカーをレンタルするところからスタートし、その後福祉車両をキャンピングカーへとDIYし、現在は日本各地に赴きながら、まさに“自由なライフスタイル”で過ごしているといいます。そのような経験から、デザイン事務所として顧客のデザイン設計を進める際は、まずはシェアリングサービス等を通じて実際に「体験」をしてもらうところからスタートすると、宮本氏は説明します。

     

    shareweek2023_04CCC OUTDOOR LABでは、蔦屋書店や、Tポイント/Tカードを活用したマーケティング事業、自治体と連携した図書館等の指定管理事業など、多様なグループアセットを活用してアウトドア関連の企画を生み出している

     

     また、Tカード事業を軸に様々な取り組みを進めるカルチュア・コンビニエンス・クラブでは、2022年8月より「CCC OUTDOOR LAB」と呼ばれる、アウトドアを文化にしていくことを目指すプロジェクトを立ち上げており、地域や雑誌等と協業しながらアウトドア文化の啓発に取り組んでいます。そんなCCC OUTDOOR LABのラボ長を兼任するの二瀬 慎氏は、「経験豊富な仲間からのリコメンドも貴重な意見だ」とコメントします。

     

    「スモールコミュニティの中から情報を得て、それを元に購入をするという購買活動が多くなっている印象です。その背景にあるのは、コミュニケーションから得られる信用があると考えていまして、単純に有名人だから、という話ではなくなってきていると感じます」(二瀬氏)

     

    shareweek2023_05本人確認の専門機関として、業種業態を問わないeKYCの社会インフラを提供している。中でもシェアサービス事業における導入実績は特に豊富で、サービスとしての信用・信頼の構築支援を日々行っている

     

     このスモールコミュニティでの信用やリコメンドという話に加える形で、eKYCサービスを提供するTRUSTDOCK代表・千葉も「近年は “試してから買う”という仕組みがどんどんと揃ってきている印象だ」と言い、自社でのエピソードを紹介しました。

     

    「リモートHQというリモートワーク支援プラットフォームサービスを会社として使っているのですが、そこで試しに僕が使った骨伝導イヤホンがとても良かったので社内メンバーにさらっとおすすめしたら、実際に何人かが使い始めたという。そんな、試してシェアしてサービスを利用してから、追って購入するみたいな動線が整ってきていると感じます」(千葉)

    自己表現欲求が出てきた時が「所有」のタイミングかもしれない

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     シェアリングエコノミーの啓発をスタートさせた際は「所有からシェアへ」が一つのテーマだったのですが、ここまでの内容を踏まえると、徐々に「シェアから所有」へ、もしくは「シェア前提の所有」へと考え方がシフトしてきている印象だと、DeNA SOMPO Mobilityの馬場氏は所感を述べます。

     これから消費者はどこへと向かっていくのか。これについてTRUSTDOCKの千葉がコメントします。

     

    「夏にサンフランシスコに行った際にUberを使っていたのですが、車種はテスラが多かったんですよね。日本だと少ないので初めて乗車したのですが、乗ってみると『いいな』と感じたので、今後の自分の購買に影響すると思いました。このように、“体験→シェア”を経てからの“想起→購入”という流れは、今後も増えていくのではないかと思います」(千葉)

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     では、人々はどこで「所有したい」と思うようになるのでしょうか。これについてカルチュア・コンビニエンス・クラブの二瀬氏は、「どこで体験をするかが重要なのではないか」と仮説を述べます。

     

    「同じものを体験するにも、ロケーションや空間などによって、市場率や購入転換率が変わってきます。また自動車で言うと、試乗できる時間によっても変わってくるでしょう。本気度の高い方ほど色々と体験してみる時間が必要だと感じますね」(二瀬氏)

     

     また、バンライフをしている方々にとって「バンは自己表現そのものだ」とMeiMeiの宮本氏も続け、そういった自己表現をしたいと思った時が所有のタイミングなのではないかとコメントを寄せました。

     

    「今日はこんなところにいますよって、言いたいしシェアしたい。人との関わりの中で発生するものを期待してInstagramにあげたりするので、自分らしいカラーを出していきたいだとか、そういう自己表現欲求が出てきた時が所有のタイミングなのかなと思います」(宮本氏)

    結局は、そこに「愛」があるかどうか

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     ここまでの議論を踏まえ、シェアと所有の関わり方として、シェアサービスは今後どのように進化していくべきなのか。二瀬氏は「体験のシェア」と「権利のシェア」に注目していきたいと言います。

     

    「例えばメーカーのファンイベントでは、ファンとブランドの距離が近いイベントほど、ファンがイベントのお手伝いをしてくれるなどして、決してお金ではない“ブランドの一員”としての時間・体験を共有できると、このようなお話がありました。このように体験のシェアはこれから注目されていくと思いますし、そうなるとメーカーと流通の関係も変わってくるのではないかと考えています。また権利のシェアについても、自身が持っている権利をセカンドシェアするなどして参加者を増やしていくような、そんなところも期待できるだろうと思っています」(二瀬氏)

     

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     また千葉からは、個人が取りうる選択肢の拡張が進んできたからこそ、自身にとっても所有かレンタル等の判断軸が重要になってくるであろうとの想定が語られました。

     

    「人によって買いたいものと借りたいものは違ってくると思うのですが、これまで消費者が取りうる選択肢が少なかったからこそ、借りたいけれども買う、といった選択がなされるケースもあったと思います。一方で今はすべての物事に全部の選択肢がある状態になってきたなと。環境が整ってきたので、今後は個々人の中で所有、レンタル、シェアの概念が鮮明に意識されていくんだろうと思います。そんな中で裏側の本人確認領域をやっている立場から考えると、ユーザー同士の信用・信頼がさらに重要になってくると思います。今後は一事業者だけではなく、みんなでエコシステムを回しながら、全体で信頼の醸成に取り組んでいけたらと考えています」(千葉)

     

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     さらに宮本氏は最後に、結局はそこに愛があるかどうかだと思っていると、自身の考えを説明し、セッションを締め括りました。

     

    「例えば子育てしているお母さんの知り合いが多いのですが、お話を聞いていると、以前はシェアサービスで洋服を買っていたが、今はコミュニティの中でいかにモノ・コトを回していくかとか、そういった『どれだけ愛情を循環できるか』という部分を積極的に行っている印象です。選択肢が多いからこそ、そこを最優先していると感じます。お金の発生の有無に拘らず、ボーダレスにみんなで手を取り合って共有していくことで、世の中が良いふうに変わっていくのかなと思います」(宮本氏)

     

    【関連記事】ポストコロナの「信頼のデザイン」とは?シェアエコメンバーと共に考える 〜SHARE SUMMIT 2021レポート

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     今回お伝えした考え方の基盤として、TRUSTDOCKでは様々なeKYCソリューションおよびデジタル身分証アプリをご提供しており、シェアリングエコノミーをはじめとする多様な業種業態での実績を有しています。本人確認の実装等でお困りの際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

     

    また、各業界に特化した事例集もご用意しております。

     

    • eKYC モビリティ・MaaS事例集(カーシェア・ライドシェア・電動キックボード)

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    • eKYC スキルシェア・ギグワーク事例集

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     最後に、eKYCの詳細については以下の記事でも詳しく説明しているので、併せてご覧ください。

    ▶︎eKYCとは?オンライン本人確認を徹底解説!メリット、事例、選定ポイント、最新トレンド等

     

    (文・長岡武司)

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