家事代行などのマッチングプラットフォームでは、サービス利用者とスタッフが直接関わることになります。eKYCを導入すると、オンラインでも事前に利用者の本人確認を行うことが可能となり、安全・安心な仕組みを構築することができます。
CaSy(カジー)様では、本人確認APIをはじめとする複数のAPIを導入。導入の背景や選定で重視した点、導入後の効果などについてお話を伺いました。
導入サービス:家事代行サービス「CaSy(カジー)」
「大切な時間を、大切にできる時間を創る。」をミッションとするクラウド家事代行サービス。テクノロジーにより、相性や要望を加味する高精度なマッチングと、Web/スマートフォンアプリを通じた簡単依頼、誰もが気軽に利用できる価格帯を実現。家事に手が回りにくい多忙な子育て世帯やビジネスパーソンなどを中心に、累計会員数は120,000人以上。キャストエンゲージメント施策にも注力し、登録キャスト数は累計10,000人を超えている。
利用している本人確認API
✅ 個人身元確認
✅ 補助書類確認
✅ 記事DB検索サービス
CaSyでは、ユーザーおよびキャストに公的身分証を提出してもらい、本人性の確認と、記事データベースを検索するコンプライアンスチェックについて、eKYC/本人確認APIサービス「TRUSTDOCK」を使って実施しています。
担当者プロフィール
加茂雄一[Kamo Yuichi]
株式会社CaSy
代表取締役 CEO
教育だけでは限界があるからこそ、外部ツールでの本人確認を検討
--まずはTRUSTDOCK導入の背景から教えてください。
加茂:弊社ではご家庭向けの家事代行やハウスクリーニング事業ということで、「キャスト」と呼んでいるスタッフさんにお客様のご自宅を訪問してもらい、サービスを提供しています。
ここでリスクとなるのが大きく三つ、盗難、個人情報の漏洩、そして性的被害の発生です。これらは2014年の創業当時から常に意識していたことでして、盗難と個人情報漏洩についてはキャストの教育を徹底してまいりました。一方で性的被害の発生については、教育だけでは限界がある中で、未然に防止する施策の一つとして厳格な本人確認の仕組みの導入を検討することとなりました。2020年5月頃だったと思います。
--最初にご相談にいらっしゃったのが2020年の夏でした。それまでは、どのような検討が社内でなされたのですか?
加茂:本人確認を社内でやるか外部に出すか。外部に出す場合は、どんなツールを選定するかといったことです。早々に外部事業者にお願いしようとなり、6月後半からは具体的なツールの選定作業に入っていました。8月には、TRUSTDOCKを導入することで決定したと思います。
--2020年9月といえば、サービス利用者によるキャストさんへの性的ハラスメント事件が発生したタイミングかと思います。こちらの件は、本人確認の仕組み導入にどんな影響を与えましたか?
加茂:本人確認と反社チェックについてはもともと導入しようと進めていたので、それ自体に影響はないのですが、これまで以上に、スピード感をもって導入を進めることが必須だという意識になりました。
全体的に信頼性が高いと判断してTRUSTDOCKを導入
--次に、ツールの選定では、具体的にどのような内容を重視されましたか?
加茂:まずは費用対効果ですね。特に、内部のオペレーションコストがなるべくかからないものが良いと考えていました。あとは、反社チェックの仕組みで参照するデータベースの精度が信頼できるものかも、検討材料の一つでした。
他にも、ユーザーの個人情報を扱うのでセキュリティの強度や、運用がシームレスかといすった点が挙げられます。
--なるほど。TRUSTDOCKはどんなきっかけでご存知になったのでしょうか?
加茂:弊社株主からの紹介です。TRUSTDOCKに限らず、本人確認のツールについては株主にヒアリングをしていき、ピックアップしていったのがメインでしたね。
--その中で、TRUSTDOCKに決められた要因はなんだったのでしょうか?
加茂:一番は実績ですね。金融機関での導入実績も多く、データベースを含めて全体的に信頼性が高いと判断して、TRUSTDOCKを選定しました。
--選定を含めた導入プロジェクトは、加茂さんが直接、陣頭指揮をとられたのですか?
加茂:はい、先の事件のこともあり、私が直接トップダウンで導入を進めました。導入期間としては約3ヶ月ほどで、2021年1月からは既存ユーザーとキャスト向けにスタートさせ、2021年3月3日から新規ユーザー含めた全てのステークホルダーに本人確認のフローを導入しました。
--なるほど。導入を進める上で、大変だったことはありますか?
加茂:基本的にドキュメント類が揃っていてスムーズに進めることができました。細かい部分だと、弊社のサービスって、登録者と実際の訪問先の住所が違うことがあるので、その辺りのデータベースの整合性を本人確認と合わせるところに、少し苦労しました。それくらいですね。
一番は、キャストから安心の声が届いているということ
--TRUSTDOCKを導入をしたことによる効果としては、どんなものが挙げられますか?
加茂:一番は、キャストから安心の声が届いているということですね。もちろん、本人確認ってどこまでやれば100%良い、という類のものでもないわけですが、少なくとも働く人たちの安心につながっているので、結果としてユーザーの安心や便利にもつながっていると感じます。ここは弊社の理念にもつながっている部分です。
--どういうことでしょうか?
加茂:弊社では「大切なことを、大切にできる時間を創る。」をミッションに掲げており、サービスを通じてお客様の大切な時間作るお手伝いをしています。そしてそのためには、キャストが安心してモチベーション高く働いてもらうことが、最も大切なポイントだと捉えています。
お客様がCaSyを信頼していただくことで、キャストに十分な仕事を提供できるようになり、キャストが安心してモチベーション高く働けることで、結果としてお客様へ提供できるサービス価値も向上する。
こういう循環があることを、双方にご理解いただきたいと思っており、本人確認はそのために必要不可欠なピースだと、改めて感じています。
--素敵なメッセージをありがとうございます。ユーザーはもちろん、キャストの皆さまを非常に大切にされているんですね。実際に会社としては、どんなコミュニケーションをキャストとされているのでしょうか?
加茂:働く前は、ガイダンスとテストを実施しています。特にガイダンスでは、システムの使い方だけではなく、CaSyのビジョンやミッション、クレドなどをご理解いただくよう、オンラインでしっかりとご説明しています。
またキャストとして働くようになったら、月に複数回、多いと月11回のペースで開催している「カジーサロン」という会に参加いただけるようにしています。先輩キャストからのアドバイスや、色々な事例の共有などがなされています。
あとは、「キャストセッション」という、一年に一回の感謝祭みたいなものをやっていまして、そこでも多くのキャストにご参加いただいています。
--横のつながりができそうですね!
加茂:そうですね。キャストは日々、一人で現場に行って、業務が終わったら一人で帰宅されます。だからこそ、横のつながりが必要だと考えて、このような取り組みを積極的に提供しています。
いずれはマイナンバーカードを使った最新の本人確認も検討したい
--実際にTRUSTDOCKによる運用を開始されてみて、社内の工数感としてはいかがでしょうか?
加茂:比較的落ち着いていると思いますよ。実際の工数としては、TRUSTDOCKからの「保留」にされたユーザーに対する判断対応と、「否認」に対する顧客からの問い合わせの対応が発生しています。特に後者については、いずれ自動化するか、もしくはTRUSTDOCKサイドで問い合わせ対応までやっていただけると、助かるなと感じています。
--ぜひ、また詳細を詰めていければと思います。今後、TRUSTDOCKに期待することは、他にございますか?
加茂:今は免許証などの身分証を使っての本人確認を実装していますが、いずれはマイナンバーカードを使った最新の本人確認についても、検討していきたいなと思っています。
あと、シェアリングエコノミー協会の一員としては同じ立場でもあり、ワーキンググループでご一緒することもあるので、そのような観点も含めて一緒に世の中を良くしていけたらと思っています。
--有難うございます!それでは、最後に、読者の皆さまへのメッセージをお願いします。
加茂:TRUSTDOCKはコストもそんなに高くないですし、色々な対応も素早いので大変助かっています。当事者として、プラットフォームの安心・安全対策は引き続き最優先事項として取り組んでまいります。TRUSTDOCKさんとも引き続き連携しながら、どこよりも安心・安全なマッチング・プラットフォームを目指していきます。
---
TRUSTDOCKでは、“本人確認のプロ”として企業のKYC関連業務をワンストップで支援するAPIソリューションを提供し、またデジタル身分証のプラットフォーマーとして様々な事業者と連携しております。eKYCソリューションの導入を検討されている企業の方々や、実際に導入プロジェクトを担当されている方々に向けてはPDF冊子「eKYC導入検討担当者のためのチェックリスト」を提供しており、eKYC導入までの検討フローや運用設計を行う上で重要な検討項目等を計12個のポイントにまとめていますので、ぜひご活用ください。
なお、KYCやeKYCの詳細については、以下の記事も併せてご覧ください。
KYCとは?あらゆる業界に求められる「本人確認手続き」の最新情報を徹底解説
(文・長岡武司)