2020年4月に改正犯収法が施行され、銀行や証券会社、クレジットカード会社、生命保険会社など金融機関の口座開設や変更に伴う本人確認方法が変更されました。それに伴う本人確認におけるコスト削減・顧客満足度の向上などを背景にオンラインによるeKYCの導入も進んでいます。
そんな中、2021年3月11日に「住宅ローンも!FATF対応も!オンライン完結型手続きで進化する銀行業務の未来」と題して、セールスフォース・ドットコム、TRUSTDOCK、ベルフェイスの3社によるオンラインで完結できるソリューションのご提案と今後の銀行業務の未来像についてのセッションが開催されました。本記事では、同セッションのレポートをお送りします。
登壇者情報
- 鈴木 文也(株式会社セールスフォース・ドットコム エンタープライズ & インダストリーアライアンス営業部 金融担当マネージャー)
- 千葉 孝浩(株式会社TRUSTDOCK 代表取締役/CEO)
- 石橋 遼太郎(ベルフェイス株式会社 エンタープライズグループ アカウントエグゼクティブ 金融担当 リーダー)
3社それぞれのソリューション紹介
まずは各社のサービス紹介が行われました。
TRUSTDOCK
TRUSTDOCKでは、日本で唯一のKYCに特化した専門機関として、e-KYC/本人確認APIサービスとデジタル身分証アプリを提供しています。
具体的には犯罪収益移転防止法をはじめ、携帯電話不正利用防止法、古物営業法、労働者派遣法、出会い系サイト規制法、民泊新法など、各種法律に準拠したKYCをAPI組み込みのみで実現しており、サービス事業者は本人確認用の管理画面の開発や、オペレータの採用・教育、24時間体制でのシフト管理を行うことなく、低コストで本人確認を行うことが可能となっています。また、オンラインで会員登録を行うあらゆるIDサービスやプラットフォーム、または既存で顧客DBがある事業者なら、業態や規模の大小を問わず利用することができます。
最近では、特にFATF対応にフォーカスした継続的顧客確認および管理を行うためのCRMシステムについても、Salesforceと連携して提供しており、クラウドによるAPIサービスから身分証アプリによる本人確認まで、各種ソリューション提供によって、複数の社会課題を同時に解決している企業となります。
ベルフェイス
ベルフェイスでは、オンライン営業システム「ベルフェイス」を通じて、オンラインでの商談チャネルと、その先のデータを活用した各種ソリューションを提供しています。その特徴は以下3点。
- 顧客の電話番号さえ分かれば商談実施が可能
- 安定した音声+顧客との打ち合わせに特化した機能
- 商談データを営業育成・商談管理に活用
特に接続後におけるデータの活用として、営業のレベルを底上げするような教育用途としても活用できることが、大きな特徴となっています。また、Salesforceとも連携しているので、ベルフェイスでの生の商談データを、そのままSalesforceのCRMツールへと格納して、より精緻での顧客管理ができるようになっています。
セールスフォース・ドットコム
セールスフォース・ドットコムでは、クラウドベースのCRM/顧客管理システムをはじめ、SFA/営業支援システムやMA/マーケティングオートメーションなどを、世界15万社以上に提供しています。
以前は標準的なパッケージとして業界を問わない製品・サービスを提供していましたが、近年では業界別ソリューションにも力を入れており、例えば「Financial Service Cloud」では、金融業界に特化したデータモデルや画面を標準提供しています。
先述の2社の通り、Salesforceでは様々なアプリを連携させてマーケットプレイスにて提供しています。
具体的なユースケースにおける各社連携イメージ
次に、この3社による連携によって実現できることを、具体的なユースケースと画面遷移を通じて、説明がなされました。
Salesforce × ベルフェイスのシステム連携イメージ
まずは、行員の方が在宅の顧客に電話で商品・サービスを案内しつつ、Webで申し込みなどの手続きを進めるというケースについて、Salesforceとベルフェイスのシステム連携がなされている際のイメージオペレーションです。
営業サイドはまずCRMシステムであるSalesforceの顧客管理画面を開き、これからお話しする顧客に関する情報を確認します。
先述したFinancial Service Cloud画面では、家族情報を始め、対象顧客のライフイベント情報もチェックすることができます。
このタイミングでベルフェイスへのシステム連携がなされ、システムを通じて電話がなされます。
顧客との電話が繋がったら、電話をしたままビデオ会議へと繋げます。顧客サイドで事前に用意することは特になく、Webブラウザを立ち上げて4桁の接続ナンバーを取得してもらって行員サイドに電話で伝えることで、行員はシステムにその番号を入力し、顧客と行員の双方がビデオ会議で繋がることになります。
ここから具体的な商談を進めていきます。この際に、議事録みたいな形でヒアリング内容を「共有メモ」機能で共有することもできますし、また、資料を共有しながら説明することもできます。
商談終了後、ベルフェイス画面で入力したメモや録画データ、通話時間などのデータは、そのままSalesforceの画面にも反映され、顧客対応履歴として追加されることになります。録画データを見たいときは、Salesforceの画面からそのまま参照できるようになっています。
Salesforce × TRUSTDOCKのシステム連携イメージ
もう一つ、今度はSalesforceとTRUSTDOCKのシステム連携がなされている際のイメージオペレーションです。
先述の通り、継続的顧客確認を実施したい場合に、まずはSalesforce上に設置された画面上のボタンより本人確認依頼メールを、個人対象もしくは複数人対象の一括で送信します。
すると、顧客のメールボックスに、先ほど送信された継続的顧客確認の案内メールが届きます。
ここで表示されたURLをクリックすると、ユーザー認証画面が表示されます。ここでは電話番号の入力となりますが、それ以外の情報での認証も可能です。
※デモ画面のためデザインはシンプルなものに設定
認証が完了すると、継続的顧客確認を実施する項目として、住所など必要な情報の確認を進めてもらいます。
※デモ画面のためデザインはシンプルなものに設定し、項目も仮のものを設置
入力が完了して送信すると、合わせて本人確認の方法選択画面も表示され、公的個人認証を使ったものから一般的なeKYCまで、顧客サイドで選択できるようになります。
この継続的な顧客確認では、金融機関サイドでスコアリングを実施して確認したい顧客リストを抽出し、ヒアリングする質問項目を洗い出してもらえれば、あとはTRUSTDOCKサイドのCRMシステムで全て巻き取る形となるわけです。
上図の通り、Salesforceと連携をしているほか、LINE連携も行なっていてLINEアプリでのeKYCも可能になっています。
ちなみに、TRUSTDOCKでは身分証以外でも、例えばdアカウントのような他社IDや、番号確認書類などもチェックすることができます。
この他にも、以下のような補助書類のチェックも可能であり、幅広いプロセスや業務に応じて柔軟に対応することが可能となっています。
情報の二重管理を避ける形で、eKYC含めた情報集約を進めましょう
以上の流れをまとめると、下図のようなプロセスが3社によって実現すると言えます。
多くの企業においては、情報の「二重管理」を可能な限り避けたいでしょうから、Salesforceのような様々なアプリケーションとの連携が可能なプラットフォームを前提に情報を集約することで、対顧客管理のみならず、社内管理含めたあらゆるオペレーションコストを削減した上で、安心安全に向けた本人確認も実施できるようになると言えます。
なお、TRUSTDOCKは“本人確認のプロ”として、本記事で言及したような継続的顧客管理用CRMシステムをはじめ、企業のKYC関連業務を支援するAPIソリューションやデジタル身分証をご提供しております。本人確認含めた営業等におけるオペレーションの改善や、eKYC実装についてお困りの際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
また、eKYCソリューションの導入を検討されている企業の方々や、実際に導入プロジェクトを担当されている方々のために、TRUSTDOCKではPDF冊子「eKYC導入検討担当者のためのチェックリスト」を提供しております。eKYC導入までの検討フローや、運用設計を行う上で重要な検討項目等を、計12個のポイントにまとめていますので、こちらもぜひご活用ください。
なお、KYCやeKYCの詳細については、以下の記事も併せてご覧ください。
KYCとは?あらゆる業界に求められる「本人確認手続き」の最新情報を徹底解説
(文・長岡武司)