インターネットの発達とともに、そのあり方も進化してきたオークション。
オークショニア(競売人)による進行のもとで一品ずつ入札を進めていく平場(対面)開催だけでなく、オンラインを経由したネットオークションに一度は参加したことのある方も多いのではないでしょうか。
事業者として、いずれのシチュエーションにおいても必須となるのが、「オークション参加者の本人確認」です。古物業者が準拠すべき古物営業法および犯罪収益移転防止法の施行規則等では、それぞれ対面時および非対面時における本人確認手法が定義されており、昨今ではeKYCを導入するケースが増えています。
今回は、オークションサービスの中でもBtoBに特化して、平場とオンラインの両オークションを展開する株式会社BuySell Technologiesに、TRUSTDOCKのeKYCソリューション導入の背景や今後への期待等のお話を伺いました。
本記事のポイント
【ニーズ】
・社内の本人確認オペレーションを効率化したい
・入会時の顧客体験を改善したい
【導入後の効果】
・ヒューマンエラーのリスクが基本的になくなった
・本人確認処理期間が2〜3週間から平均4日、最短で当日中の完了に短縮
・従前に比べて月間入会者数がおよそ3倍に増加
導入サービス:TIMELESS AUCTION
バッグ・宝石・時計を中心とする日本最大級のBtoBオークションで、毎週木曜の平場オークションと毎月3日〜9日に開催しているオンラインオークションの2つのオークションを開催。年間出品数は約200,000点を誇ります。 売り手と買い手、どちらにも満足いただけるご縁を大切にしたサービスを目指しています。
利用しているeKYC本人確認API
✅ eKYC「ホ」
✅ 補助書類確認業務
入会手続きのタイミングで、eKYC本人確認APIサービス「TRUSTDOCK」を使った本人確認を実施しています。(古物商許可を取得の方であれば、原則的にどなたでも参加できます)
担当者プロフィール
株式会社BuySell Technologies テクノロジー戦略本部の皆さま
写真左:瀬尾 祐一郎[Yuichiro Seo]
写真中央:市田 大生[Taisei Ichida]
写真右:𠮷住 隆司[Yoshizumi Takashi]※オンライン参加
平場とオンラインの両方を展開するBtoB特化型オークションサービス
--まずは貴社の事業内容について教えてください。
瀬尾:BuySell Technologiesは、リユース事業を中心に事業展開をしている会社です。今回eKYCを導入した「TIMELESS AUCTION」は、2020年にM&Aした株式会社タイムレスがグループにジョインしたことで、弊社グループのサービスになったという経緯があります。
もともとTIMELESS AUCTIONでは平場(オフライン)のオークション事業をやっていたのですが、2021年1月よりオンラインオークションを正式にリリースし、現在は平場とオンラインの両方を実施しています。
--平場とオンラインでは、出品内容や開催頻度等について、どのような違いがあるのでしょうか?
瀬尾:いずれもBtoBに特化したオークションとして、古物商許可を持っている人同士のオークションを実施しています。オンラインでは時計や宝石類、バッグなど様々な商品を扱っていますが、一方で平場では歴史的な背景もあってバッグだけを扱っています。
--皆さまBuySell Technologiesのメンバーということですが、タイムレス社との役割分担はどのようになっているのでしょうか?
瀬尾:開発についてはBuySell Technologiesが行い、その他の事業展開についてはタイムレスというすみ分けで進めています。私はプロダクトマネージャー、市田は開発、𠮷住は導入推進・ディレクターとして、それぞれ携わっています。
TRUSTDOCKを選定した理由5つ
--続いて、eKYCの導入に至った経緯を教えてください。
瀬尾:eKYCは2022年5月よりスタートしているのですが、それまでは平場もオンラインも、いずれもアナログな方法で本人確認を行っていました。平場では実際の参加メンバーが現地にいらっしゃるので、オークション開催時に直接身分証を見せてもらって実施していました。またオンラインでは本人限定郵便を使って、郵送での本人確認を実施していました。
いずれの場合も業務として煩雑であり、また入会時における顧客体験としても課題の多い仕組みだったので、本人確認のオンライン化はずっと課題感としてありました。
--具体的にどのようなきっかけでeKYC導入を決められたのでしょうか?
瀬尾:平場とオンラインではもともと異なるシステム基盤を使っていたのですが、それを統合するプロジェクトが昨年末より始まりました。そのタイミングで、本人確認のオンライン化も併せて実装しようということになりました。
--その中でTRUSTDOCKはどのような経緯で知ったのですか?
瀬尾:弊社グループが展開している「CASH」というサービスでTRUSTDOCKを導入しているのですが、TIMELESS AUCTIONのチームに元CASHのメンバーがいたので、そのまま教えてもらいました。
--他のeKYCサービスも比較検討されましたか?
𠮷住:はい。最終的にはTRUSTDOCKを含めて3社に絞って検討を進めたのですが、他2社では仕様を満たしていなかったり、運用設計上どうしてもユーザーの離脱発生ポイントが発生してしまったりすることから、TRUSTDOCKを選定しました。
--具体的にはどのようなポイントをご評価いただいたのでしょうか?
𠮷住:大きくは5点あります。これらを総合評価して、TRUSTDOCKの導入を決めました。
- PCとスマホのブラウザ上のUIがすでに準備されていること
- コンプライアンスチェックを本人確認と同時に行えること
- 古物営業法で定義されている補助書類にも対応できること
- 要件を満たすeKYCサービスの中でも、最も低価格で導入・運用できること
- 社内サービスでの導入はもとより、社外での導入実績が豊富だったこと
2〜3週間かかっていた本人確認プロセスが「最短当日中」に短縮
--TRUSTDOCK導入の感想としてはいかがでしたか?
市田:システムの改修そのものは2022年1月中頃から5月半ばまでかかったのですが、主にはこちら側のシステムの改修に起因するものでしたので、API連携そのものは時間がかかりませんでした。テスト環境もあったし、ドキュメントも整備されていたので、基本的には詰まったところはなかったです。
--TIMELESS AUCTIONはBtoBサービスなので、KYB(法人確認)の実施も必要かと思うのですが、そこはどうされているのでしょうか?
市田:KYBについては総務が管轄しています。これはシステム改修の際に決定したことなのですが、基本的には本人確認が必要なプロダクトについて、本人確認部分も含めてマイクロサービス化しようということになったのです。
--なるほど。TRUSTDOCKを導入されてから感じられている効果も教えてください。
瀬尾:まずは業務工数の削減です。こちらは目に見えて効果があったと感じていますし、ヒューマンエラーのリスクも基本的にはなくなったので、そこも大きいなと感じています。
また、ユーザーの入会までの時間も確実に短縮しています。先ほどもお伝えした通り、オンラインでのオークション実施の際には郵送で本人確認を実施していたのですが、本人確認完了までに2〜3週間ほどの時間を要していました。それがeKYCによって、平均4日、最短で当日中での本人確認完了を実現しています。
これらの改善に加えて、導入当初に入会金無料キャンペーンとそれに伴う広告施策を併せて行ったことから、入会者数自体も増えました。具体的な数字は控えますが、従前に比べて月間入会者数はおよそ3倍に増えています。
本人確認は、事業的には「攻め」の要素が大きい
--導入・運用を振り返って、改めてTRUSTDOCKの良いところを教えてください。
𠮷住:個人的には、あらかじめUIが用意されているので、導入完了までのスピードが早い点が一番かなと思います。他サービスでは、意外とここが満たせていないものも多かったと感じます。
瀬尾:特にこの本人確認領域は、事業的には「守りの要素」に見えがちなのですが、実は「攻めの要素」が大きいと感じています。そういう意味でも、いま𠮷住がお伝えした通り、課題解決までの時間が短いに越したことはないので、そこは大きなメリットだと感じています。
あと、古物商許可という特殊な書類にも対応していただけているのも、すごいなと思いました。他のeKYCサービスと比較しても、補助書類のバリエーションがとても豊富なのではないかと感じます。
--TRUSTDOCKへの今後の期待もお願いします。
𠮷住:今回TRUTDOCKを導入してすぐ、業務工数の削減や入会者数の増加などの成果を得ることができました。今後は法改正などがあった場合にも、継続してサポートいただければと考えています。
--ありがとうございます!それでは最後に、読者の皆様に一言お願いします。
瀬尾:本人確認はデジタルが得意な領域だと思います。やるメリットをすごく感じられる領域かなと思いますし、プロダクトのPRにもつながる施策だと言えますので、もしeKYCを検討しているのであれば、ぜひやってみた方が良いかなと思います。
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TRUSTDOCKでは、“本人確認のプロ”として企業のKYC関連業務をワンストップで支援するAPIソリューションを提供し、またデジタル身分証のプラットフォーマーとして様々な事業者と連携しております。eKYCソリューションの導入を検討されている企業の方々や、実際に導入プロジェクトを担当されている方々に向けてはPDF冊子「eKYC導入検討担当者のためのチェックリスト」を提供しており、eKYC導入までの検討フローや運用設計を行う上で重要な検討項目等を計12個のポイントにまとめていますので、ぜひご活用ください。
なお、KYCやeKYCの詳細については、以下の記事も併せてご覧ください。
KYCとは?あらゆる業界に求められる「本人確認手続き」の最新情報を徹底解説
eKYCとは?オンライン本人確認を徹底解説!メリット、事例、選定ポイント、最新トレンド等
(文・長岡武司)