2023年10月3日〜4日にかけて、リサイクル通信が主催する「Reuse × Tech Conference for 2024」が開催されました。こちらは、リユース企業におけるテクノロジー活用やEC販売等を応援するイベントで、この分野の最先端を走る企業による講演やサービス紹介、さらにはブース出展が多数なされました。
TRUSTDOCKも昨年度に引き続き本イベントに参加し、リユース業界におけるeKYC活用という切り口で「ソフマップが語る!サーキュラーエコノミーにおける買取体験の向上」というセッションを開催しました。
満席となった会場では、ソフマップにおける直近の取り組みが紹介された後に、eKYCを導入した背景及び導入後の公開について解説がなされました。
登壇者プロフィール
- 上村 匡希(株式会社ソフマップ 取締役執行役員 サーキュラーエコノミー事業部 本部長 リユース事業部長)
- 千葉 孝浩(株式会社TRUSTDOCK 代表取締役CEO)
2018年から段階的にeKYC手法の選択肢を増やしてきた
リユース事業を展開するにあたっては、古物営業法や犯罪収益移転防止法等の法令への準拠はもちろん、ユーザーの個人情報の適切な管理や信頼性の向上、非対面取引の拡大、さらには人手不足に起因するオペレーションの省人化など、様々な課題へと対峙する必要があります。
そんな中、1984年から商品の買取やリユースに取り組んできたソフマップはビックカメラグループの一員として、「ソフマップ」及び「じゃんぱら」店舗におけるパソコン/スマートフォン等(新品・中古)の販売や、グループ含む各店舗における購入時・購入後のサポート(サービスサポートカウンター等)、電話や遠隔操作で行うコールセンターの運営など、業界の中でもいち早くサーキュラーエコノミーの実現を推進してきました。
上村 匡希氏(株式会社ソフマップ 取締役執行役員 サーキュラーエコノミー事業部 本部長)
中でも『ラクウル』と呼ばれる、パソコンやスマートフォン、デジタルカメラといったデジタル家電、さらにはゲームやフィギュア、衣類、古酒といった各種アイテム等を簡単に買取に出すことのできるサービスは、同社のサーキュラーエコノミー戦略を強力に推進する基盤の一つであると、同社取締役執行役員でサーキュラーエコノミー事業部 本部長を務める上村 匡希氏は説明します。
「2018年7月にリリースしたラクウルでは、専用のアプリで梱包箱の数と集荷日を登録してアイテムを梱包するだけで、宅配ドライバーが集荷し、数日後に査定・買取まで完了するというサービスをご提供しています。またラクウルの中には『持ち物帳』と呼ばれる機能もあり、ビックカメラグループのポイントカードと連携いただくことで、各社で購入した商品が自動的に登録されていきます。各登録品のリアルタイムでの想定買取金額が表示され、また希望の買取金額が近づくと通知でお知らせする機能もあるので、ここからでもスムーズに買取手続きをしていただくことが可能になっています」(上村氏)
このラクウルでは、2018年のアプリ版に合わせてTRUSTDOCKのeKYCを導入しており、また2021年には、犯罪収益移転防止法の要件をカバーするeKYC犯収法「ホ方式」も導入。さらに2023年には、犯罪収益移転防止法の要件をカバーする公的個人認証サービス(※)を使ったeKYC犯収法「ワ方式」も追加導入し、ユーザーはマイナンバーカードを使って最短2分で本人確認が完了できるようになっています。
「古物営業法の非対面取引をいかにスムーズに行うかというところに着目してTRUSTDOCKさまのeKYCを導入しました。eKYCを導入するまでは、梱包箱と申込書などが一式揃った通信買取用のキットを郵送して、そこで本人確認書類等を同梱いただき返送してもらうというオペレーションだったので、作業工程が減ったことはもちろん、個人情報を紙でやり取りせずで管理できるようになったという観点で、セキュリティ面での安全・安心も高まったと言えます」(上村氏)
※公的個人認証サービス:ネット上での本人確認に必要な電子証明書を、住民基本台帳に記載されている希望者に対して無料で提供する、地方公共団体情報システム機構(J-LIS)によるサービス。TRUSTDOCKを含め、電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律第17条第1項第6号の規定に基づく総務大臣認定事業者のみ利用が可能となっています。
ソフマップがeKYCで「公的個人認証」の追加導入を決めた理由
同社が2023年にワ方式を導入した背景としては、顧客による本人確認実施の所要時間の短縮や、認証失敗率の軽減への期待があったと、上村氏は説明します。
「我々ビックカメラグループの店舗でラクウルの説明をするときにも、このご本人確認のやり方もご説明しているのですが、それまでのホ方式だと、どうしても時間がかかってお客様をお待たせしてしまうという課題がありました。またラクウル内にあるアンケートの声からも、本人確認がスムーズに進まないという意見があり、マイナンバーカードを使ってより素早く的確に、かつ作業効率も非常に簡素になって登録ができるようになるということで、ワ方式を追加導入しました」(上村氏)
ラクウルでは2つの本人確認手法いずれかを選択することができる
ワ方式ではマイナンバーカードに内蔵されているICチップの電子証明書を利用することから、ユーザーとしては身分証や容貌の撮影をすることなくマイナンバーカードをスマホ等にかざすだけで本人確認が進み、また事業者サイドとしても目視におる本人確認書類のチェック等が不要になることから、より早く簡便に本人確認が完了することになります。特に昨今ではマイナンバーカードの普及が急速に進んでいることから、ワ方式の利用が増加していると、TRUSTDOCKの千葉は説明します。
「マイナンバーカードですが、令和5年9月時点で約9,580万枚が交付されています。一方で運転免許証は約8,000万枚ということで、今後は身分証といえば間違いなくマイナンバーカードという時代になってくると考えています」(千葉)
ワ方式を導入したことで、店頭での登録数が増加
ワ方式を導入したことの効果として、上村氏は上記3点を挙げます。
「導入前の期待通り、お客様からはICチップを読み取るだけですぐに本人確認ができたという感想が増えており、その手軽さや審査のスピードについてご好評いただいています。また販売員からも、従前はお客様からどうしても(ホ方式の)本人確認書類やご本人様の写真を撮影することへの抵抗があったのに対して、マイナンバーカードを使えばそのようなやり取りも発生しないので、よりスムーズに本人確認が進んでいるという声が上がっており、結果として店頭での登録数も増えているという状況です」(上村氏)
ラクウルにおける具体的な利用デバイスと、手法別利用率のデータが以下となります。こちらを見ると、大半のユーザーはスマホを使っており、手法としては3分の1のユーザーがワ方式を選択していることが分かります。
「ラクウル」における本人確認 デバイス別利用率
「ラクウル」における本人確認 手法別利用率
また、手法別の否認率では、ワ方式の否認率が平均で約3%程度で、ホ方式より圧倒的に否認率が低い状況となっています。これに付随して、カスタマーサポートへの本人確認に関する問い合わせが減少しているとのことです。
「ホ方式だと、データのミスマッチや撮影した画像の隠れや破損、それから撮影した画像が不鮮明だったり厚みが捉えられていなかったりといった要因が、代表的な否認理由としてあげられます。他にも、有効期限切れの書類を提出してしまったり、書類の顔と撮影した顔が不一致だったり、コピー/偽造された身分証による申請だったりと、様々な否認要因が挙げられます。一方でワ方式の否認理由としては、カードの更新漏れ等による失効が多くを占めているようで、このような理由からも、ホ方式よりもワ方式の評判が高くなっている印象です」(千葉)
オンラインサービスのみならず、店頭無人機の本人確認でもeKYCを導入
ビックカメラグループの「じゃんぱら」では、2022年8月から「おまかせ自動買取くん」という、全過程を非対面で端末の買取手続きが完了するデバイスを店舗にて設置しています(取材日時点で関東を中心に6店舗で展開中)。AIによる自動査定を行うほか、こちらでもTRUSTDOCKの本人確認eKYCが活用されています。
「2022年8月は新型コロナウイルスの第7波のタイミングの真っ只中で、お客様からの非対面へのニーズが非常に高い状況でした。また、混雑時の待ち時間の低減やスピーディーな査定と精算の実現も従来からの店舗における課題だったことから、このタイミングで導入した次第です。その効果もあって、コロナ禍が落ち着いた現段階においても、一定のニーズがあると感じています」(上村氏)
じゃんぱらにおける具体的な手法別利用率のデータが以下となります。こちらを見ても、手法としては3分の1のユーザーがワ方式を選択していることが分かります。
「じゃんぱら」における本人確認 手法別利用率
ここまでのラクウルおよびじゃんぱらでの事例を通じて、TRUSTDOCKの千葉から、リユース事業におけるeKYC導入のポイントが説明されました。
「eKYCを入れると、すべてをオンラインで完結させるので、ペーパーレスでの業務構築を進められます。またそれに付随して、個人情報を扱う書類等を保管しないで済むようになるので、セキュリティの強化に寄与します。さらに、24時間365日で展開しているオンラインサービスにおいては、内製でのオペレーション構築は非常に大変です。よって、eKYCサービスを活用することで本人確認業務を最適化して、より本業に集中できるようになると考えています」(千葉)
リユース事業を通じて環境循環型社会づくりに貢献
最後に、上村氏から今後のビジョンや取り組みについて紹介がなされ、セッションが締め括られました。
「ソフマップでは、リユース事業を通じて環境循環型社会づくりに貢献したいと考えています。特にラクウルアプリについては、先ほどもお伝えした『持ち物帳』の活用をどんどんと促していきたいと考えており、それによって、レンタルやシェアリングの手段をご提供したり、修理やサポートもスムーズにしていきたいと考えています。また、世界初のマイクロソフト社のリテールパートナーとしてMicrosoft Surface正規修理を受付したり、総務省の『令和5年度デジタル活用支援推進事業地域連携型』を受託して、千代田区さまと連携したデジタルデバイドの解消事業を実施するなど、様々な取り組みを進めており、サーキュラーエコノミーの実現に向けて引き続き邁進したいと考えております」(上村氏)
《関連リンク》
▶️これからは、本人確認が全てのハブになる。業務オペレーションの完全自動化を進めるソフマップの事例
▶️ソフマップ社長が語る、買取アプリ「ラクウル」のオンライン本人確認/eKYC導入の決め手と未来
▶️リユース事業者むけeKYCサービスページ
https://biz.trustdock.io/product/reuse/
(文・長岡武司)