システムの陳腐化によるユーザー体験の劣化は、あらゆるデジタルサービスの課題と言えるでしょう。例えばスマホ対応の遅れに伴うシステム操作性の悪さは、そのままユーザー離脱を招いてしまい、結果として企業にとって大きなダメージに繋がりかねません。
今回お話を伺ったさわかみ投信株式会社様でも、本人確認周りの仕組みが陳腐化したことによる課題感が大きくなったことで、eKYCの導入を決定されたとのことです。
では、具体的にどのような観点でeKYC事業者を選定され、また導入後はどんな効果を得ることができたのか。本記事では、eKYCの導入及び運用を担当されている4名の皆様にお話を伺いました。
本記事のポイント
【ニーズ】
・本人確認時の書類アップロード周りにおけるUIを改善したい
・なるべく早くeKYCを導入したい
・本人確認と併せてマイナンバーも収集したい
・将来的に様々な手続きにもeKYCの仕組みを拡張したい
【導入後の効果】
・スピーディーに導入/サービスインが完了
・シームレスな仕組みでマイナンバーを収集できている
・本人確認オペレーションに関するユーザーからの問い合わせが大幅に削減
導入サービス:投資信託サービス「さわかみファンド」
証券会社や大手銀⾏などのグループに属さない⽇本初の独⽴系直販投信であるさわかみ投信。創業以来⼀貫して「⼀般⽣活者の財産づくり」としての⻑期投資を実践。投資先企業・お客さま・運⽤会社による三⼈四脚のもと、「⻑期投資で世の中を⾯⽩くしていくこと」をミッションに⽇々活動している。
利用しているeKYC本人確認API
✅ eKYC「ホ」
✅ 個人番号取得業務
さわかみ投信が運営・提供する投資信託サービス「さわかみファンド」のWeb口座開設時に、eKYC本人確認APIサービス「TRUSTDOCK」を使った本人確認、及びマイナンバーカードの収集業務を実施しています。
担当者プロフィール
間瀬 健介[ませ けんすけ](右から二番目)
さわかみ投信株式会社
戦略室
中野 悠二[なかの ゆうじ](右から1番目)
さわかみ投信株式会社
情報システム部(導入当時)
山本 泰平[やまもと たいへい](左から一番目)
さわかみ投信株式会社
直販部
古川 百香[ふるかわ ももか](左から二番目)
さわかみ投信株式会社
直販部
本人確認時の書類アップロード部分がボトルネックだった
--まずは簡単に、皆さまの本人確認周りにおける役割分担について教えてください。
間瀬:私の方では主にeKYCの導入検討に関する部分をリードし、導入決定以降の開発については他3名がメインで進めていきました。システム周りについては中野が、顧客部門については山本と古川が、それぞれ担当しました。
--ありがとうございます。今回eKYC導入検討の背景や、当時の課題感等についても教えてください。
間瀬:もともと2018年に導入したシステムを使ってWeb口座開設時の本人確認を実施していたのですが、主にフロントエンド部分に大きな課題がありました。従来のシステムでは、どこに何の書類を提出すれば良いのか、という基本的なことが分かりづらいUIとなっており、お客様の体験価値を大きく損なうような状況だったのです。また申込完了から実際に口座を開設いただくまでの離脱率も高く、本人確認時の書類アップロード部分のボトルネックに大きな課題を感じるようになりました。
--UIに課題があったということですが、それ以外にも何かペインがあったのでしょうか?
山本:細かいものは色々とあるのですが、一番はシステムが最新のスマホカメラで撮影した高画質な画像に対応ができていないところですね。例えばお客様に本人確認書類の画像ファイルを提出していただく際、従来のシステムでは画像の容量制限エラーが発生してしまい、お客様に画像のファイルサイズを圧縮していただかなければならない場面がありました。結果、画像のファイルサイズ圧縮がうまくいかず、本人確認を終えられないお客様も多い印象でした。
間瀬:当社の場合、コロナ禍以前は用紙での申込が主流だったので、上述の課題もそこまで大きな問題にはなっていなかったのですが、コロナ禍で主な顧客チャネルがWebへとシフトしていったことで、社内におけるシステムの改善/リプレイスの機運が一気に高まっていったという流れになります。
マイナンバーのシームレスな収集も大事な要件
--御社内で本人確認の仕組みを内製して改善するという選択肢はあったのでしょうか?
間瀬:もちろん、改善ポイントの入り口が「UI」だったので、最初は情報システム部門のメンバーと話して内製を検討しました。ただ、運用を検討していく中ですぐに、自分たちだけでは厳しいねという判断になりました。
中野:一番の論点は、アップロードされた本人確認書類の画像をどう保存するか、というセキュリティの部分ですね。とてもじゃないですが、日々溜まっていく書類画像をセキュアに自社保管するのは得策ではないと考え、外部の事業者さんにお任せしようということになりました。
--eKYC事業者は複数あると思いますが、どのような観点で選定を進めていかれたのかを教えてください。
間瀬:大きく3つの観点で選定しました。一つ目は導入スピードです。口座開設率の改善を進めるためにも、早急なeKYC導入が必要だったので、eKYCに必要な仕組みを提供できる事業者且つ、スムーズに導入ができるか否かが重要でした。二つ目は、本人確認と併せてマイナンバーの収集もできることです。ただマイナンバー収集機能があるだけでなく、ユーザーの負担を可能な限り下げるべく、本人確認と同時にシームレスに収集できる仕組みが必要でした。そして三つ目は、チェックできる書類の多様性です。目下のところは本人確認とマイナンバー収集の2つだけが用途ですが、将来的には当社のネット取引サービス内での諸届(氏名変更や住所変更、その他の変更手続き等)への対応も進めていく予定です。それらの手続きを想定すると、犯罪収益移転防止法で求められる書類の組み合わせ以外にも対応できる事業者が望ましいと考えました。これら3つの観点で選定を進めていったところ、TRUSTDOCKさんが最も望ましいソリューションをご提供されていたということです。
--導入プロジェクトはいかがでしたか?
間瀬:2023年10月頃からスタートして2024年4月にサービスインしたので、スピードとしては申し分ありませんでした。
中野:システム面に関しては、Web周りはスムーズにいっていたかなと思います。一点あるとすれば、弊社内の業務面に関する整理と並行してシステム開発を進めていったので、システム要件と業務要件の調整に少々時間を要してしまったという点では少し反省があったなという印象です。
山本:契約関係は私が担当したのですが、TRUSTDOCKさんからのレスがすごく早かったなという印象ですね。不明点があってもすぐに疑問が解消されるので、ありがたかったです。あとサービスの使い勝手に関しても、TRUSTDOCKさんのシステムはかなりシンプルで、触り心地も良いので、そういう点でも問題ないなと感じましたね。
何よりも素晴らしいのは、24時間365日のBPO体制と使いやすいUI設計
--導入後の効果としてはいかがでしょうか?
古川:eKYCのサービスインに合わせる形で新規顧客向けのプロジェクトを実施したため、多くのお客様にeKYCをご利用いただいたのですが、主だったクレームやシステムの不具合もなく運用できています。以前の本人確認システムだと「アップロードの仕方が分からない」といったお問い合わせをいただくことが多かったのですが、TRUSTDOCKさんのeKYCになってからはそのような問い合わせも随分と減りました。
間瀬:このインタビューがちょうどプロジェクト実施終了直後ということで、離脱率の軽減状況と、それに付随する口座開設率の改善状況については、これからデータを集めて分析していくところとなります。
山本:あと、従来のシステムでは口座開設業務を一部外部に委託していた関係で「1日の対応上限数」がありました。もし上限数を超えた本人確認書類が届くと、繰り越しになってしまうという仕組みだったのです。
--それは、お客様にとっては無駄な遅延に繋がってしまいますね…
山本:それがTRUSTDOCKさんのeKYCの場合は、申込数の増減に関わらず24時間365日のBPO体制で対応してくださるので、そういう観点でもありがたいと感じています。
--今後のTRUSTDOCKへの期待について教えてください。
間瀬:将来的には、本人確認の手法が「ホ」方式ではなく、公的個人認証サービスを活用した「ワ」方式へと一本化されるということで、引き続き、そのあたりの最新情報をキャッチさせていただけたらと考えています。
--ありがとうございます。それでは最後に、読者の皆さまに一言お願いします。
山本:金融機関である弊社でも問題なく、非常にスムーズに導入できました。業務観点だと何よりも素晴らしいのは、やはり、24時間365日のBPO体制と使いやすいUI設計だと感じています。今後世の中はより一層デジタルへと移行していくと思うので、TRUSTDOCKさんのサービスは今後ますます有効性が高まっていくと思います。
古川:お客様にとって操作がしやすいデザインになっているのが、いいなと思ったところです。特別に何か説明書を見る必要がなく、指示された流れでそのまま本人確認ができるので、そこが素敵だと感じています。
中野:eKYCの導入は、本人確認の部分に限らず全社的な話になるでしょうから、しっかりと運用設計を含めて進めることが大事だと、今回のプロジェクトを通じて改めて感じました。
間瀬:特に証券業界にとって、とても良いサービスだと思います。犯罪収益移転防止法や金融商品取引法で求められている本人確認様式とマイナンバーの収集にしっかりと対応しており、かつシンプルで操作性の高いUI/UXをパッケージとして担保してくれているので、我々のような直接販売も手掛ける投資信託会社の他に、証券業界でも有効なサービスだと思います。
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TRUSTDOCKでは、“本人確認のプロ”として企業のKYC関連業務をワンストップで支援するAPIソリューションを提供し、またデジタル身分証のプラットフォーマーとして様々な事業者と連携しております。eKYCソリューションの導入を検討されている企業の方々や、実際に導入プロジェクトを担当されている方々に向けてはPDF冊子「eKYC導入検討担当者のためのチェックリスト」を提供しており、eKYC導入までの検討フローや運用設計を行う上で重要な検討項目等を計10個のポイントにまとめていますので、ぜひご活用ください。
なお、KYCやeKYCの詳細については、以下の記事も併せてご覧ください。
▶︎KYCとは?あらゆる業界に求められる「本人確認手続き」の最新情報を徹底解説
▶︎eKYCとは?オンライン本人確認のメリットやよくある誤解、選定ポイント、事例、最新トレンド等を徹底解説!
(文・長岡武司)