犯収法(犯罪収益移転防止法)とは?各専門用語の意味や注意点から、定義されているeKYC手法まで詳しく解説

法/規制解説

更新日: 2023/02/15

目次

     ここ数年で注目度が高まっているオンライン本人確認、通称「eKYC」は、様々なデジタル技術が発達して情報がシームレスに行き交う現代社会においては、必要不可欠なシステム基盤であると言えます。

     このeKYCを理解する上で欠かせないのが、マネーロンダリング及びテロ資金供与対策(以下、AML/CFT)のための規制として機能する犯罪収益移転防止法(以下、犯収法)です。主に金融機関等を規制する法律として、日本におけるKYCを牽引しているとも言えます。

     一方でこの犯収法、さまざまな専門用語が前提となっており、また細かい改正がなされていることで、最新の細かいルールをしっかりと理解できていない、という声を多く耳にします。

     本記事では、そんな犯収法の理解を深めるべく、JAFIC(Japan Financial Intelligence Center:警察庁 刑事局 組織犯罪対策部 組織犯罪対策企画課 犯罪収益移転防止対策室)による「犯罪収益移転防止法の概要」および「令和3年 年次報告書」の冊子をベースにして、詳しく解説していきます。これを読めば犯収法のあらましを理解できる状態を目指して執筆しましたので、同法について知りたい方はぜひご覧ください。

    ※2022年12月2日参議院本会議で可決・成立した改正法の内容についても追記しております

    犯罪収益移転防止法設立の経緯

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     犯罪収益移転防止法とは、正式には「犯罪による収益の移転防止に関する法律」のことを示し、金融機関等の取引時確認や取引記録等の保存、疑わしい取引の届出義務など、マネーロンダリング及びテロ資金供与対策のための規制を定めるべく、2007年3月に成立・公布された法律です。

    AML/CFTの国際基準となるFATF勧告

     まずは本法成立までの歴史を振り返りましょう。そもそもAML/CFTというものは、日本やアメリカなど一国だけが厳格に規制を強化しても効果は上がりません。犯罪者が活動場所を移動して、規制の緩い国で犯罪活動を行うことができないよう、国際的な協調を前提に規制ネットワークを敷いていく必要があります。

     そこで設立されたのが金融活動作業部会、通称「FATF(Financial Action Task Force、読み方:ファトフ)」です。

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    https://www.fatf-gafi.org/

     これはもともと、マネーロンダリング対策における国際協調を推進するために1989年に組織された政府間タスクフォースなのですが、翌1990年にはマネー・ローンダリング対策の国際基準ともいうべき「40の勧告」を発表。金融機関への顧客等の本人確認及び疑わしい取引報告の義務付け等を提言しました。

     また、2001年の米国同時多発テロ事件の発生に伴ってテロ資金供与に関する国際的な対策と協力推進にも指導的な役割を果たすようになり、現在ではOECD加盟国を中心とする37の国と地域および2つの国際機関(EC、GCC)が参加して、「40の勧告」の遵守を求めています。

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    画像出典:新「40の勧告」の概要(JAFIC「令和3年 年次報告書」)

    ※「40の勧告」に付随し、2001年9月11日の米国同時多発テロ発生を受けて、新たなテロ資金供与対策の国際基準ともいうべきテロ資金供与に関する「8の特別勧告」(2004年10月に「9の特別勧告」へ)が発表され、テロ関係の疑わしい取引の届出の義務化等が提言されました。また2003年6月には非金融業者(不動産業者、宝石商等)・職業的専門家(法律専門家等)に対する適用等を内容とする「40 の勧告」の改訂が行われ、2012年2月には、それまでの「40の勧告」と「9の特別勧告」を一本化した新「40の勧告」へと改訂されたという経緯があります。

    日本におけるAML/CFT対応

     このような国際的動向を受けて、日本で具体的な動きとして現れたのは1992年。金融機関等に、薬物犯罪収益に関するマネーロンダリング情報の届出を義務付ける「疑わしい取引の届出制度」が創設されました。

     その後、2000年には「組織的犯罪処罰法」が、2003年には「金融機関等本人確認法」がそれぞれ施行され、現在の犯収法の基礎が形成されました。当初は金融機関等を想定した法体系となっていましたが、不動産売買の利用や弁護士に資金の保管を依頼するなど、マネーロンダリングの手口が複雑化・巧妙化してきたことを背景に、2008年には犯罪収益移転防止法として一本化され、今日に至るまで複数回の改正を経て、後述する「特定事業者」への規制強化を進めています。

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    画像出典:犯罪収益移転防止法の体系(JAFIC「犯罪収益移転防止法の概要」)

    2018年11月法改正で注目されることになったeKYC

     このような経緯を経た犯収法ですが、直近での大きな動きは、2018年11月の犯罪収益移転防止法施行規則の改正です。特にポイントとなったのは、「本人確認における新プロセスの定義」にあります。

     それまで本人確認といえば、基本的には対面による本人確認書類の提示、または非対面の場合における「写真付き本人確認書類の写し送付+転送不要郵便」によって行われていました。

     しかしこれでは、昨今のインターネットネイティブな各種サービスと比較して、圧倒的に時間がかかってしまいます。

     例えば身分証の確認による個人身元確認業務と反社チェック等のリスク確認業務といった各審査が1日で終わったとしても、郵便による住所確認によって、追加で1〜2日、土日を挟んだら3〜4日ほどの時間が、口座開設までにかかってしまいます。昨今のテクノロジーの進化に伴って様々な業務がDXを遂げる中、規制が枷となってFintechサービスをはじめとするイノベーションが阻害されてしまっている状況でした。

     これに対応する形で実施された2018年11月の「改正犯収法施行規則」では、郵便を送るというプロセスが不要になり、新たに個人身元確認業務において、これまでは不要だった提出者の容貌要望確認などの当人確認要件が追加されることになりました。

     つまり手持ちのスマートフォン等を使って、時間のかかる郵送手続きなく、必要な契約を先に進めることができるようになったということです。

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     このように、これまでオフライン前提で組まれていたKYC業務を、ネット等を活用したオンラインで完了させることを「eKYC」と呼びます。これについては後述します。

    特定事業者の種類と、JAFICの役割

     犯収法では、「特定事業者」と呼ばれる対象事業者が、通常の特定取引およびハイリスク取引を行う際に、「取引時確認」と呼ばれる手続きを法的義務として負うこととして定義されています。以下14事業者が該当します。

    • 金融機関等
    • ファイナンスリース事業者
    • クレジットカード事業者
    • カジノ事業者
    • 宅地建物取引業者
    • 宝石・貴金属等取扱事業者
    • 郵便物受取サービス事業者(いわゆる私設私書箱)
    • 電話受付代行者(いわゆる電話秘書)
    • 電話転送サービス事業者
    • 司法書士又は司法書士法人
    • 行政書士又は行政書士法人
    • 公認会計士又は監査法人
    • 税理士又は税理士法人
    • 弁護士又は弁護士法人

     この特定事業者の是正命令等の監督措置を担っているのが行政庁である金融庁であり、その特定事業者からの疑わしい取引の届出情報を集約・整理・分析して捜査機関等に提供するなどして、犯罪収益移転防止法施行の中心的役割を果たしている組織が、日本におけるFIU業務(※)を担うJAFIC(犯罪収益移転防止対策室)というわけです。

    ※FIU:Financial Intelligence Unitの略で「資金情報機関」と略される。各国FIU相互の情報交換の場として平成7年に発足したエグモント・グループは、FIUについて「国のマネー・ローンダリング対策を支えるべく、金融機関等からの届出情報を受理・処理し、当局に通知する中央機関であり、法執行機関に重要な情報交換の道筋を提供するものである」と表現している。

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    画像出典:犯罪による収益の移転防止に関する法律(JAFIC「犯罪収益移転防止法の概要」)

     JAFICの任務については、警視庁ホームページにおいて以下と定義されています。

    犯罪収益移転防止対策室等は、犯罪収益移転防止法が明記する

    • 疑わしい取引に関する情報の集約、整理及び分析並びに捜査機関等への提供
    • 外国FIUに対する情報の提供
    • 犯罪による収益の移転の状況の調査及び分析並びに犯罪収益移転危険度調査書の作成
    • 特定事業者による措置を確保するための情報の提供や行政庁による監督上の措置の補完

    のほか、マネー・ローンダリング対策の法制度や犯罪収益対策推進要綱等の各種施策の立案・調査、マネー・ローンダリング対策に関する国際的な規範の策定に対する参画等の業務に当たっています。

     

    -引用元:警視庁ホームページ「犯罪収益移転防止対策室(JAFIC)とは

    犯収法に登場する専門用語を理解する

     犯収法には、何点か専門用語が登場します。それぞれが似たような用語で分かりにくいので、特定事業者に課された義務の内容を確認していく前に、まずは以下で体系的にまとめて解説していきます。

    「特定業務」と「特定取引等」

     そもそも、特定事業者が行う業務の全てが届出義務の対象になるかというと、そうではありません。それぞれの事業者においては、義務の対象となる業務範囲が「特定業務」として定められています。特定事業者の特定業務に課されている義務は、以下の通りです。

    • 取引時確認
    • 確認記録の作成・保存(7年間保存)
    • 取引記録等の作成・保存(7年間保存)
    • 疑わしい取引の届出(※司法書士等の士業者を除く)
    • コルレス契約締結時の厳格な通知
    • 外国為替取引に係る通知
    • 取引時確認等を的確に行うための措置

     この中で、例えば取引時確認や確認記録の作成・保存が必要となるのは、特定業務の中でもさらに一定の取引である「特定取引等」とされています。

     これら「特定事業者」「特定業務」「特定取引等」の関係をまとめたものが、以下の図となります。

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    画像出典:特定事業者の義務と範囲(JAFIC「犯罪収益移転防止法の概要」)

     ちなみに、それぞれの特定事業者に対する義務の概要については、JAFICよりまとまった表が提供されています。

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    画像出典:特定事業者と義務(JAFIC「犯罪収益移転防止法の概要」)

    特定取引等=特定取引+ハイリスク取引

     上述の「特定取引等」は、具体的には「特定取引」と「マネー・ロンダリングに用いられる恐れが特に高い取引」(以下、ハイリスク取引)に分かれています。いずれの取引であるかによって、犯収法における確認事項や確認方法が異なってきます。

    特定取引

     まず特定取引は、以下の通り、さらに2つの類型取引に分かれます。

    1. 対象取引
    2. 特別の注意を要する取引

     「対象取引」とは、犯収法施行令第7条に記載されている取引群のことを示し、預貯金口座の開設や大口現金取引、クレジットカードの締結など、事業者や業態ごとに規定されています。

     もう一つの「特別の注意を要する取引」とは、上述の対象取引以外で、マネーロンダリングの疑いがあると認められる取引、および同種の取引の態様と著しく異なる態様で行われる取引のことを示します。

     各特定事業者ごとに定義されている特定業務、および特定取引についても、JAFICよりまとまった表が提供されています。

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    画像出典:特定事業者の特定義務と特定取引(JAFIC「犯罪収益移転防止法の概要」)

    ハイリスク取引

     もう一つハイリスク取引とは、以下のいずれかに該当する取引のことを示します。

    • なりすましの疑いがある取引、または本人特定事項を偽っていた疑いがある顧客等との取引
    • イラン及び北朝鮮など、特定国等に居住・所在している顧客等との取引
    • 外国PEPs(Politically Exposed Persons:重要な公的地位にある者)との取引(※)

    ※外国PEPsについては、具体的には以下の対象者を示します。
    ①外国の元首
    ②外国において下記の職にある者
    ・我が国における内閣総理大臣その他の国務大臣及び副大臣に相当する職
    ・我が国における衆議院議長、衆議院副議長、参議院議長又は参議院副議長に相当する職
    ・我が国における最高裁判所の裁判官に相当する職
    ・我が国における特命全権大使、特命全権公使、特派大使、政府代表又は全権委員に相当する職
    ・我が国における統合幕僚長、統合幕僚副長、陸上幕僚長、陸上幕僚副長、海上幕僚長、海上幕僚副長、航空幕僚長又は航空幕僚副長に相当する職
    ・中央銀行の役員
    ・予算について国会の議決を経、又は承認を受けなければならない法人の役員
    ③過去に1又は2であった者
    ④1~3の家族
    ⑤1~4が実質的支配者である法人

     後述する通り、ハイリスク取引を行う場合は、通常の特定取引以上に厳格な方法で各種事項を確認する必要があり、また確認事項も増えることになります。

    特定取引とハイリスク取引の関係

     ここまで見てきた特定取引とハイリスク取引、および特定取引等や通常の特定取引は、それぞれの違いが分かりにくいかと思います。JAFICでは、それらの関係をまとめた以下の図が提供されています。

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    画像出典:特定取引とハイリスク取引の関係(JAFIC「犯罪収益移転防止法の概要」)

    顧客および代表者等に対する「取引時確認」

     ここまで見てきた特定事業者による特定取引等に際して、法的義務として定められているものの一つが「取引時確認」です。犯収法では、顧客に対する確認について、以下の取引時確認が定義されています。

    《顧客に対する通常の特定取引の取引時確認》

    • 本人特定事項
    • 取引を行う目的
    • 職業(自然人)または事業の内容(法人・人格のない社団又は財団)
    • 実質的支配者(法人)

    《顧客に対するハイリスク取引の取引時確認》

    • 本人特定事項
    • 取引を行う目的
    • 職業(自然人)または事業の内容(法人・人格のない社団又は財団)
    • 実質的支配者(法人)
    • 資産および収入の状況(該当取引が200万円を超える財産の移転を伴う場合)

    ※本人特定事項および実質的支配者については、通常の特定取引よりも厳格な方法で確認することとされている

     例えば顧客が法人である場合や、自然人の顧客等の代理人が取引の任に当たっているなど、特定取引等の任に当たっている自然人が顧客等ではない場合には、その顧客等の本人特定事項の確認に加えて、当該取引の任に当たっている代表者等の本人特定事項の確認を行う必要があります。

     ここでいう「代表者等」とは、一般的に法人を代表するような立場の自然人(代表取締役など)を示すのではなく、実際に特定取引等の任に当たっている人のことを示します。

     ちなみに、この代表者等の本人特定事項を確認するにあたっては、代表者等が委任状を有していることや、電話によって代表者等が顧客等のために取引の任に当たっていることが確認できることなど、代表者等が顧客等のために特定取引等の任に当たっていると認められる事由が必要になります。

    実質的支配者の確認方法

     実質的支配者とは、法人の事業経営を実質的に支配することが可能となる関係にある者を示し、誰が該当するかについては以下の通り、法人の性質に従って定められています。

    事業形態 「実質的支配者」に該当する方

    ・非上場の株式会社

    ・有限会社

    ・投資法人

    ・特定目的会社        等

    ・議決権が50%を超える個人または法人がいる場合
    →その方が「実質的支配者」となる

    ・議決権が50%を超える個人または法人がいない場合
    →25%を超える株主すべてが「実質的支配者」となる

    ※議決権が25%を超える株主がいない場合、「実質的支配者なし」となる

    ・合名会社 ・合資会社 ・合同会社

    ・一般社団法人 ・一般財団法人

    ・学校法人 ・医療法人 ・宗教法人

    ・社会福祉法人

    ・特定非営利活動法人    等

    ・法人を代表する人が「実質的支配者」となる

    例)代表社員、代表理事、理事長、代表役員等

    ※代表する人が複数いる場合は、全員が「実質的支配者」となる

    ・上場企業 ・国 ・地方公共団体

    ・独立行政法人

    ・「実質的支配者なし」

     この実質的支配者の確認方法は、通常の特定取引とハイリスク取引で、確認方法が異なります。通常の特定取引においては、当該顧客等の代表者等から、実質的支配者の本人特定事項について申告を受ける方法とされています。またハイリスク取引の場合は、顧客等の株主名簿(資本多数決の原則を採る法人の場合)、登記事項証明書(資本多数決の原則を採る法人以外の法人の場合)等の書類を確認し、かつ、実質的支配者の本人特定事項について当該顧客等から申告を受ける方法とされています。

    自然人と法人の2種類ある本人確認

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     なお、ここまでも言及した通り、犯収法では本人確認の対象として「自然人」(以下、個人)と「法人・人格のない社団又は財団」(以下、法人)の2つが定義されています。自然人とはすなわち私たち人間のことです。

     自然人か法人かによって、確認するべき項目やフローが異なることになるので、本記事では両方についての詳細を確認していきます。

    本人特定事項の確認について

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     先述の通り、特定事業者は運転免許証等の公的証明書等によって、個人または法人のいずれの場合も、本人特定事項を確認する必要があります。それぞれ、以下の本人特定事項の確認が義務として課されています。

    • 個人:氏名・住居・生年月日
    • 法人:名称・本店又は主たる事務所の所在地

     以下、本記事では個人の本人特定事項の確認で必要となる書類と確認方法について見ていきます。

     なお、法人の本人特定事項の確認で必要となる書類と確認方法については、以下の記事で詳述していますので、併せてご覧ください。

    犯罪収益移転防止法で定められる「法人の本人確認」とは?法概要とeKYCソリューション例について解説

    個人の本人特定事項の確認に必要な書類

     個人の本人特定事項の確認に必要な書類は、以下1〜3のいずれかが必要になります。

    1. 運転免許証、運転経歴証明書、在留カード、特別永住者証明書、マイナンバーカード、 旅券(パスポート)等。このほか、官公庁発行書類等で氏名、住居、生年月日の記載があり、顔写真が貼付されているもの。
    2. 各種健康保険証、国民年金手帳、母子健康手帳、特定取引等に使用している印鑑に係る印鑑登録証明書等
    3. 2番以外の印鑑登録証明書、戸籍の附票の写し、住民票の写し・住民票記載事項証明書。このほか、官公庁発行書類等で氏名、住居、生年月日の記載があり、顔写真のないもの(ただしマイナンバーの通知カードを除く)

     日本国内に在留していない外国人の場合は、上記の他に、日本国政府が承認した外国政府または国際機関の発行した書類で本人特定事項が記載されているものが必要となります。

     また、日本国内に居住していない短期在留者(観光者等)で、旅券等の記載によって属する国における住居を確認できない外国人の場合は、上記に限らず、氏名と生年月日の記載がある旅券、および乗員手帳が必要となります。

     なお、書類に上述の所在地が記載されていなかったり、もしくは書類記載の住所と現在の所在地が異なる場合は、以下のような補助書類を提示または送付して、現在の住居等を確認する必要があります。

    • 納税証明書
    • 社会保険料領収書
    • 公共料金領収書
    • 官公庁発行書類等(有効期間又は有効期限のあるものにあっては特定事業者が提示又は送付を受ける日において有効なものに、その他のものにあっては領収日付の押印又は発行年月日の記載のあるもので、その日付が提示又は送付を受ける日の前6ヶ月以内のものに限る)

    通常の特定取引における個人の本人特定事項の確認方法

     通常の特定取引において、法人の本人特定事項を確認する方法としては、対面・非対面・本人限定郵便・電子署名の4手法があります。それぞれの詳細についてはJAFIC「犯罪収益移転防止法の概要」をご確認いただくとして、ここでは犯収法施行規則 第六条の内容(イ〜カ)の概要を以下に記します。

    対面にて写真付き本人確認書類1点の提示

    対面にて写真がない本人確認書類1点の提示

    転送不要郵便物等による到達確認

    対面にて本人確認書類2点の提示

    対面にて写真がない本人確認書類1点の提示

    住所記載の補完書類1点の送付

    専用ソフトウェアにて、写真付き書類の写し1点(厚みその他の特徴&本人確認時に撮影されたもの)の送信

    容貌(本人確認時に撮影されたもの)の送信

    専用ソフトウェアにて、写真付き・ICチップ付き本人確認書類のIC情報の送信

    容貌(本人確認時に撮影されたもの)の送信

    専用ソフトウェアにて、写真付き書類の写し1点(厚みその他の特徴&本人確認時に撮影されたもの)の送信 or 写真付き・ICチップ付き本人確認書類のIC情報の送信の確認

    銀行・クレジットカード情報との照合 or 既存銀行口座への振込

    本人確認書類の原本1点の送付 or 写真付き・ICチップ付き本人確認書類のIC情報の送信 or 写真付き書類の写し1点(厚みその他の特徴&本人確認時に撮影されたもの)の送信

    転送不要郵便物等

    本人確認書類2点の送付 or 本人確認書類の写し1点+補完書類1点の送付

    転送不要郵便物等

    給与振込口座の開設、または有価証券でマイナンバー済みの場合は本人確認書類の写し1点の送付

    転送不要郵便物等

    本人限定郵便(受取時の確認書類は、写真付き本人確認書類である必要ありのもの)
    電子証明書+電子署名
    公的個人認証(電子署名)
    特定認証業務の電子証明書+電子署名

    ハイリスク取引における個人の本人特定事項の確認方法

     ここまでは通常の特定取引における法人の本人特定事項の確認方法を見てきましたが、ハイリスク取引の場合は、ここまで見てきた確認方法に加えて、追加の本人確認書類又は補完書類の提示又は送付を受けるとされています。具体的には以下の図の通り、なりすまし又は偽りの疑いがある場合は、契約時確認において確認した書類以外の書類を、少なくとも1つ用いる必要があります。

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    画像出典:ハイリスク取引の際の本人特定事項の確認方法(JAFIC「犯罪収益移転防止法の概要」)

    取引を行う目的、および職業・事業の内容の確認方法

     特定取引には、以上で見てきた本人特定事項の確認の他に、取引を行う目的や事業の内容、そして資産および収入の状況の確認が、それぞれ必要となります。以下、それぞれの内容と方法について見ていきましょう。

    取引を行う目的の確認方法

     「取引を行う目的」とは、その名の通り、その取引によって達成したい事柄を示します。この取引を行う目的の確認方法としては、通常の特定取引とハイリスク取引、いずれであっても顧客等又はその代表者等から「申告を受ける方法」とされており、口頭での確認や、特定事業者が作成した類型のチェックリストのチェック等による確認となります。

    職業の確認方法

     「職業」もその名の通り、個人が日常的に従事する仕事等のことを示します。この職業の確認方法としては、通常の特定取引とハイリスク取引いずれであっても、該当個人から申告を受ける方法とされています。これも取引を行う目的の確認方法と同様で、口頭での確認や、特定事業者が作成した類型のチェックリストのチェック等による確認となります。

    資産および収入の状況の確認方法

     資産および収入の状況とは、ハイリスク取引の場合のみ発生する確認事項です。具体的には取引額が200万円を超える財産の移転を伴うものである場合のみに発生し、顧客等が当該取引を行うに相応な資産・収入を有しているかという観点から確認を行うものとなります。確認書類としては以下のものが挙げられます。

    • 源泉徴収票
    • 確定申告書
    • 預貯金通帳
    • その他資産および収入の状況を示す書類

     なお、この確認事項については、疑わしい取引の届出を行うか否かの判断ができる程度に行うこととされていて、必ずしも資産・収入の全てを確認する必要はありません。どれくらいの範囲・程度で確認を行うかについては一律には定められていないので、各特定事業者が判断する必要があります。

    すでに取引時確認をしたことのある顧客との取引について

     ここまでは主に、個人との初回の契約等(オンボーディングの契約等)における取引時確認の内容について見ていきました。

     一方で、既に取引時確認を行っており、かつ、後述する通り当該取引時確認についての記録(確認記録)を保存している場合には、通常の特定取引を行う場合については、以下の対応を行うことによって、改めて取引時確認を行う必要はないとされています。

    顧客等から記録されている者と同一であることを示す書類等の提示又は送付を受けるか、顧客等しか知り得ない事項等の申告を受けることで、顧客等が当該記録と同一であることを確認するとともに、

    確認記録を検索するための事項・取引等の日付・取引等の種類を記録して、取引の日から7年間保存する。

    なお上述の前者の部分について、特定事業者が該当の顧客と面識がある場合など、記録されている者と同一であることが明らかな場合は、この限りではないとされています。

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    画像出典:取引時確認済みの確認を行う場合(JAFIC「犯罪収益移転防止法の概要」)

    取引時確認以外で、特定業務に課されている義務の概要

     冒頭にお伝えした通り、特定事業者の特定業務に課されている義務は、以下の通りとなります。

    • 取引時確認
    • 確認記録の作成・保存(7年間保存)
    • 取引記録等の作成・保存(7年間保存)
    • 疑わしい取引の届出(※司法書士等の士業者を除く)
    • コルレス契約締結時の厳格な通知
    • 外国為替取引に係る通知
    • 取引時確認等を的確に行うための措置(※カジノ事業者については、特定複合観光施設区域整備法において別途その義務が定められています)

     ここまで解説した内容は、主に「取引時確認」に関わる内容となり、この他にも計6つの確認・対応事項が定義されています。本記事では上記について詳述は避けますが、以下に概要のみ記載します。

    確認記録の作成・保存

     特定事業者が取引時確認を行った場合には、直ちに「確認記録」を作成し、特定取引等に係る契約が終了した日から「7年間」は保存しなければならないとされています。これは、顧客等が個人と法人のいずれかであるかや、取引の方法、本人確認書類の提示の手法によって、記録すべき事項かが異なります。

     また、取引時確認の方法に応じて、添付すべき書類の有無や内容も変わることから、各ケースに応じた要件を確認する必要があります。

    取引記録等の作成・保存

     特定事業者は、特定業務に係る取引を行った場合等において、その「取引等に関する記録」を直ちに作成し、当該取引等が行われた日から「7年間」は保存しなければならないとされています。

     特定取引等に当たらない取引も、特定業務に含まれるものであれば取引記録の作成が必要となります。ただしこの場合、残高照会など財産の移動を伴わない取引や、1万円以下の財産の移転にかかる取引といった、特定業務に係る取引を行ったとしても取引記録等を作成・保存する必要がないケース(士業者を除く特定事業者の場合)があることも、認知しておく必要があります。

    疑わしい取引の届出

     司法書士や行政書士等の士業者を除く特定事業者は、以下2点のいずれかが認められた場合には、疑わしい取引の届出を行政庁に行うこととされています。

    • 特定業務において収受した財産が犯罪による収益である疑いがある
    • 顧客等が特定業務に関し組織的犯罪処罰法第10条の罪もしくは麻薬特例法第6条の罪に当たる行為を行っている疑いがある

     こちらは、取引に従事する特定事業者の職員の経験と知識によって支えられてい る制度であるといえ、確認記録や取引記録を保存することにより資金の流れをトレースできるようにして、その上で届出を行うことで、該当の情報を捜査に役立てることができると期待されている。また、特定事業者を利用して犯罪収益が受け渡しされることも防止し、特定事業者が行う業務に対する社会的信頼性を高めて、かつ企業におけるリスク管理にも寄与するものだといえます。

    コルレス契約締結時および外国為替取引に係る通知

     特定事業者の中でも金融機関等だけは、外国銀行とコルレス契約(※)を締結する際に、相手方の体制を確認しなければならないとされています。

    ※コルレス契約:外国為替取引において、その条件や事務手続きなど為替業務代行において金融機関が海外の金融機関と結ぶ契約のこと

     また同様に金融機関等だけは、外国為替取引を委託するときに、顧客に係る本人特定事項等を通知して行わなければならないとされています。

    取引時確認等を的確に行うための措置

     特定事業者は、取引時確認をした事項に係る情報を最新の内容に保つための措置を講じ、使用人に対する教育訓練の実施や取引時確認等に関する規程の作成、リスク評価や情報収集・記録の精査、統括管理者の選任などといった、取引時確認等を的確に行うための各種措置を行うように務める必要があるとされています。

    犯収法におけるeKYCソリューション例

     ここまで見てきた取引時確認の本人特定事項について、TRUSTDOCKでは「ホ」〜「ル」および「ワ」の要件への対応を完了し、eKYCソリューションとして提供をしています。

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     ここからは、具体的にeKYCをどのように進めていくのかについて、2020年4月1日施行の改正で郵送不要の新手法として定義された「ホ」「ヘ」「ト」および公的個人認証を活用する「ワ」の要件について解説します。

    「ホ」の要件

     「ホ」とは、顧客から写真付き本人確認書類画像と、本人の容貌画像の送信を受ける方法です。最もスタンダードな本人確認手法と言えます。

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     必要となるのは、写真付き本人確認書類の写し画像1点と、本人の容貌を撮影した画像データ1点です。いずれの場合も、身分証等の“原本”を直接撮影したものを、原則として撮影後直ちに送信させる必要があるとされています。ですので、例えばあらかじめスマートフォン等のカメラロールに入っていた画像をアップロードするのはNGですし、運転免許証をコピーした紙を撮影するのもNGです。

     画像認識技術は日々進歩しており、2021年5月28日に金融庁より発表された「犯罪収益移転防止法におけるオンラインで完結可能な本人確認方法に関する金融機関向けQ&A」においては、「目視によるものに限らず、専ら機械(十分な性能を有しているものに限ります。)を利用して行うことも許容されます。」と記載されています。(こちらの要件は、ホ以外にも、後述する「へ」及び「ト」の要件においても該当します)

     一方で、2018年11月30日の改正犯収法の施行に先立って募集されたパブリックコメントでは、以下の通り、技術を使う場合であっても目視確認の必要性が言及されており、機械のみで本人確認書類が真正なものであることを100%担保できない状況下においては、目視による確認は引き続き有効であると言えるでしょう。

    改正規則6条1項1号ホ、へ及びトについては、本人確認書類が真正なものであることの確認は、目視によるものに限らず、専ら機械(十分な性能を有しているものに限ります。) を利用して行うことも許容されます。ただし、規則6条1項1号ホ及びトについては、現在の技術ではそのような性能を満たさないことから、現在の技術を前提とすれば目視による確認が必要と考えられます。

    「へ」の要件

     「へ」とは、顧客から写真付き本人確認書類のICチップ情報と、本人の容貌画像の送信を受ける方法です。

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     必要となるのは、身分証等に埋め込まれたICチップ情報と、本人の容貌を撮影した画像データ1点です。普段は意識しないICチップですが、実は運転免許証であれば真ん中付近に埋め込まれています。

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     こちらは画像撮影で情報を取得できるものではなく、NFC等の無線通信技術を使って読み込むことになり、TRUSTDOCKで開発する「身分証アプリ」を活用することで、かざすだけで氏名・住所・生年月日・性別・写真情報などのICチップ情報を読み込めるようになっています。

     なおこの際に、運転免許証取得時に設定したピンコード(暗証番号)を入力する必要があります。このピンコードを失念している方が非常に多いことから、「へ」の要件は顧客にとっての難易度がグッと上がっているといえます。

    「ト」の要件

     「ト」とは、顧客から本人確認書類の画像またはICチップ情報の送信を受け、併せて銀行等の金融機関もしくはクレジットカード会社に本人特定事項を確認済であることを確認するという方法です。

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     必要となるのは、写真付き書類の写しデータ1点か身分証等に埋め込まれたICチップ情報、および銀行・クレジットカード情報との照合確認か既存銀行口座への振込確認です。本人の容貌撮影データではなく、金融機関との連携が必要となる点がこれまでと異なり、特定のユーザーにとっては難しさにもなっている要件といえます。

     なぜ難しいかというと、まず、銀行に登録してある情報(氏名・生年月日・住所等のデータ)が最新のものへと更新されている必要があります。また、銀行のオンラインバンキングサービスでアカウントを開設している必要もあります。その上でさらに、認証プロセスでは該当のオンラインバンキングサービスのログインIDとパスワードを使用するので、これをしっかりと覚えている必要もあり、以上の3点が本人確認時のタイミングで滞りなく準備されていることが、「ト」の必要要件となります。

     古物やクラウドファンディングなど、顧客に入金する必要があるサービスでは、銀行口座確認と本人確認が一度にできるメリットがあり、今後特定業種において広がりを見せることが期待されます。

    「ワ」の要件

     「ワ」とは、顧客のマイナンバーカードにあるICチップをスマートフォンで読み取り、J-LIS(※)が提供する公的個人認証サービスを用いることで本人確認を完了する方法です。

    ※J-LIS:地方公共団体情報システム機構のことで、同機構が提供する公的個人認証サービスは、ネット上での本人確認に必要な電子証明書を、住民基本台帳に記載されている希望者に対して無料で提供するサービスのこと。TRUSTDOCKを含め、電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律第17条第1項第6号の規定に基づく総務大臣認定事業者のみ利用が可能となっている

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     「ワ」の要件では、利用者クライアントソフトおよびICカードの読み取り専用デバイス、もしくは読み取り対応スマートフォンアプリを通じて、マイナンバーカードへの電子証明書の記録を行い、その上で公的個人認証サービスを通じてオンライン本人確認を完了させるという流れになります。

     専用デバイスを用意するなど利用ハードルが高い要件ではありますが、TRUSTDOCKのようにスマートフォンでマイナンバーカードが読み取れるアプリであれば、およそ10秒程度で郵送不要のeKYCができるため、マイナンバーカードを持っているユーザーにおいては対応完了までのスピードが最も速い手段となっています。

    法人確認用eKYCソリューションも

     本記事では個人(自然人)における取引の対応事項について記載しましたが、先述した通り、犯収法では法人についての対応要件も厳格に規定されています。

     TRUSTDOCKでは、これらの法人確認のニーズに対応して、以下3軸の法人確認アプローチについて、それぞれAPI経由でのソリューションを提供しています。

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     詳細については、以下の記事も併せてご覧ください。

    ▶︎あらゆる企業・業界で必要となる「法人の本人確認」とは?3つのチェックポイントについて解説

    2022年12月2日に参議院本会議で可決、成立した改正犯収法等の内容

     最後に、直近の法改正動向についてお伝えします。2022年12月2日に「国際的な不正資金等の移動等に対処するための国際連合安全保障理事会決議第千二百六十七号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法等の一部を改正する法律案」が参議院本会議で賛成多数で可決・成立し、FATFからの勧告への対応が一歩前進しました。

    FATF第4次対日相互審査報告書

     背景にあるのは、2021年8月末に公表された「FATF第4次対日相互審査報告書」です。こちらは2019年に実施されたFATFによる対日相互審査(先述した40の勧告の各項目に沿った法令等の整備状況に関する審査[TC審査]とメソドロジーが定める11のマネー・ロンダリング対策等の有効性に関する審査[有効性審査]を組み合わせたもの)の結果であり、日本には「強化(重点)フォローアップ国」という評価が下されました。強化フォローアップ国とは、3段階中の2番目の評価に該当し、5年後のフォローアップ評価の前に計3回のフォローアップ報告(FATF全体会合における改善状況の報告)が必要とされています。(財務省にて概要部分の邦訳が出ています)

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    画像出典:「TC審査(法令等の整備状況に関する審査)」結果(JAFIC「令和3年 年次報告書」p69)

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    画像出典:「有効性審査(マネー・ローンダリング対策等の有効性に関する審査)」結果(JAFIC「令和3年 年次報告書」p70)

    防止規定と取締規定、それぞれの改正内容

     本記事では犯罪収益移転防止法を軸にAML/CFT対策内容をお伝えしていましたが、少し俯瞰した目線で法制度を捉えたものが以下となります。

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    画像出典:マネー・ローンダリング対策等に関する法制度(JAFIC「令和3年 年次報告書p10

     今回のFATF第4次対日相互審査報告書の内容を受けての法改正についても、上記の法制度に則り、防止規定および取締規定における以下6つの法律にまたがった内容となっています。

    • 犯罪収益移転防止法
    • 外為法(正式名称:外国為替及び外国貿易法)
    • 組織犯罪処罰法(正式名称:組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律)
    • 麻薬特例法(正式名称:国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律)
    • テロ資金提供処罰法(正式名称:公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金等の提供等の処罰に関する法律)
    • 国際テロリスト財産凍結法(正式名称:国際連合安全保障理事会決議第千二百六十七号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法)

     その中で、犯罪収益移転防止法に関わる内容は以下のとおりです。

    犯罪による収益の移転防止に関する法律の一部改正として、司法書士等、行政書士等、公認会計士等及び税理士等が顧客等との間で行う取引時の確認事項に、取引を行う目的等の事項を追加するほか、行政書士等、公認会計士等及び税理士等が行う疑わしい取引の届出に関する規定を整備する。また、外国為替取引及び電子決済手段の移転に係る通知事項に、支払又は移転の相手方の本人特定事項等を加えるほか、暗号資産の移転についても通知義務の対象とする。

     特に最後に記述されている「暗号資産の移転における通知義務」とは、具体的には「トラベルルール」のことを指します。これは、利用者の依頼を受けて電子決済手段の移転を行う際に、顧客情報を、移転先の電子決済手段等取引業者に通知する義務のことで、資金の流れを追跡しやすくすることへの期待から、FATFが各国において導入・履行することを求めている内容です。

    ※ここで記載している暗号資産の中に、暗号資産型ステーブルコイン(DAIやUSTなどアルゴリズムで価値の安定を試みるもの等)も含まれます。ステーブルコインの取り扱い等の詳細については、2022年6月3日参院本会議で可決・成立した改正資金決済法の解説レポートをご覧ください。

    ▶︎改正資金決済法のポイントとは。ステーブルコインの扱いや犯罪収益移転防止法への影響等について専門家がわかりやすく解説

    本人確認業務に関して関係省庁や関連団体との連携を強化

     今回は、犯収法の理解を深めるべく、同法施行の背景や経緯から、具体的な規制内容まで詳しく解説していきました。2020年4月1日施行の改正犯収法で郵送不要の新手法が定義されたからこそ、特定事業者におけるeKYCの活用に大きな期待が寄せられるようになったと言えます。

     TRUSTDOCKでは、“本人確認のプロ”として企業のKYC関連業務をワンストップで支援するAPIソリューションを提供し、またデジタル身分証のプラットフォーマーとして様々な事業者と連携しております。府省庁においては、金融庁には具体的な業務内容の確認を行い、総務省のIoTサービス創出支援事業では本人確認業務の委託先として採択されました。また、警察庁には犯罪収益移転防止法準拠のeKYCの照会等を行い、経済産業省とはマイナンバーカードを活用した実証実験や省内開催の研究会等でご一緒しています。

     本人確認業務のオンライン化を進める際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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     また、eKYCソリューションの導入を検討されている企業の方々や、実際に導入プロジェクトを担当されている方々のために、TRUSTDOCKではPDF冊子「eKYC導入検討担当者のためのチェックリスト」を提供しております。eKYC導入までの検討フローや、運用設計を行う上で重要な検討項目等を、計12個のポイントにまとめていますので、こちらもぜひご活用ください。

    eKYC導入検討担当者のためのチェックリスト

     

     なお、eKYCの詳細については以下の記事でも詳しく説明しているので、併せてご覧ください。

    ▶︎eKYCとは?オンライン本人確認を徹底解説!メリット、事例、選定ポイント、最新トレンド等

     

    ※2021年8月24日:2021年5月28日に金融庁より発表された「犯罪収益移転防止法におけるオンラインで完結可能な本人確認方法に関する金融機関向けQ&A」の内容に合わせて一部記事内容を修正

     

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    (文・長岡武司)

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