証券口座開設時の本人確認にeKYC導入:Siiibo証券様事例

eKYC/本人確認

更新日: 2021/05/25

目次

    金融商品を扱う事業者は、犯罪収益移転防止法に則った本人確認をしなければなりません。従来の郵送による本人確認からオンライン本人確認(eKYC)に切り替えると、自社の本人確認業務の効率化やお客様の申込みの手間の軽減など、事業にとって大きなメリットがあります。

    Siiibo(シーボ)証券様では、少人数私募社債の購入・発行プラットフォームで本人確認APIを導入。選定のポイントや本人確認の自動化の状況、今後のTRUSTDOCKへの期待などについて伺いました。

    導入サービス:Siiibo(シーボ)

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    「自由、透明、公正な直接金融を創造する」をミッションに、少人数私募社債の購入・発行プラットフォームの運営を通じ、投資家と企業が直接繋がる関係構築の場を提供。2021年2月9日付で第一種金融商品取引業(証券会社)の登録が完了しており(第一種金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第3230号)、「社債の私募の取扱い」専業証券会社が運営する、私募の社債に特化した国内唯一のWebサービスを提供している。

    利用している本人確認API

    ✅ 個人身元確認API
    ✅ 個人番号取得API
    ✅ 補助書類確認API
    ✅ 法人確認業務API
    ✅ 郵送業務API
    ✅ 身分証アプリ『ホ』

     

    Siiiboでは、個人及び法人口座の開設の際に、犯収法施行規則 第六条の「ホ」と「リ」に対応する本人確認を実施しています。(法人口座においては取引担当者に対して)

    担当者プロフィール

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    写真右:松澤有[Yu Matsuzawa]
    株式会社Siiibo 取締役CTO

    写真左:福井思佳[Motoka Fukui]
    株式会社Siiibo 取締役COO

    オペレーションチームをもっていることが大きかった

    --まずは貴社のビジネス内容について教えてください。

     

    福井:弊社は「私募社債専門のネット証券会社」として、例えば上場直前直後のベンチャー企業や地方中堅企業のような様々な企業さまの社債発行のお手伝いをして、投資家をマッチングするようなプラットフォームを手掛けています。

    ブランドとしては2019年6月からスタートしているのですが、今年3月に独立系証券会社として「第一種金融商品取引業」の登録が完了したことで、社債の私募の取扱いを行う証券会社としてのサービス提供をスタートさせました。

     

    --業登録以前も、私募の国内社債を取り扱われていたのですか?

     

    福井:事業としては、個人投資家と企業のための私募社債発行・購入円滑化のための「情報プラットフォーム」からスタートし、投資家を自社で集められる企業さまに対して社債発行に関するアドバイザリー業務を行っておりました。

    その後、金融庁のFinTechサポートデスクに何度か相談をしている中で、より投資家の方に安心していただけるサービスを提供するためにも、きちんとライセンスをとった上で「私募の取扱い」を行う方が良いということになり、そこで本格的に金商法(金融商品取引法)と犯収法(犯罪収益移転防止法)への対応が必要になりました。

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    --そこで厳格な本人確認も必要になったということですね。業登録以前は、本人確認は行っていたのでしょうか?

     

    松澤:自主的に犯収法に準じた方法でやっていました。自社で完結できる方法として、本人限定受取郵便を使っていたのですが、その時は犯収法の要件に該当する部分を目検チェックして、反社チェックもデータベースの照合を手動でやっていました。

    郵便だと本人が受け取れない問題もあって否認率は80%ほどだったため、コンバージョンの低さに鑑みて、自社でずっとやっていくのは難しいなと。

     

    --それで、アウトソースを本格的に検討するようになったということですね?

     

    松澤:そうですね。将来的にはeKYCをやらねばと思っていたので、2020年の夏頃に4社ほどに話を聞いて、最終的にTRUSTDOCKを選定しました。

     

    --選定のポイントは何だったのでしょうか?

     

    松澤:まずは、オペレーションチームをもっていることが大きかったですね。TRUSTDOCKへの初回相談自体は2019年末あたりだったのですが、当時話を聞いていた他の製品は、オペレーションをクライアントが自社で行うものが多かったです。TRUSTDOCKがもっているオペレーター向け管理画面が、クライアント側にも公開されているイメージです。それを見て、こちらでオペレーターを用意するのは大変だと感じました。

    また、複数手法に対応している点もあります。犯収法だと、eKYCの他に郵送APIも用意されていましたし、マイナンバー対応も予定されていました。今後、選択肢を増やす際に困らなさそうだという点も大きかったです。

    あとは費用面も、割安だなと感じました。

    TRUSTDOCKの法解釈を確認しながら導入を進めた

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    --導入時の体制としては、どのようにされていたのですか?

     

    福井:意思決定はボードメンバーで行い、実際の導入は開発サイドとビジネスサイドで協力して進めていきました。

    特にビジネスサイドでは、どの手法を採用するかの優先順位などについて、コンプライアンス部門と一緒に対応していました。法令の読み込みも行っていき、わからないところはTRUSTDOCKにも相談していましたね。

    最終的には、犯収法でいう「ホ」と「リ」(※)の要件手法を採用しました。

    ※ホ:「専用ソフトウェアにて、写真付き書類の写し1点(厚みその他の特徴&本人確認時に撮影されたもの)の送信+容貌(本人確認時に撮影されたもの)の送信」、リ:「本人確認書類2点の送付 or 本人確認書類の写し1点+補完書類1点の送付」。詳細はこちらをご参照ください

     

    --例えばどのような相談をされましたか?

     

    福井:当社では個人向け本人確認のほかに、法人向け本人確認も導入していまして、法人の取引担当者の方に対してだと、リの手法を行う場合に提出が必要な本人確認書類は2点ではなく、1点で良いということになっています。

    例えばこの部分などは、きちんとリサーチされてリーガルオピニオンをもっているTRUSTDOCKの解釈を確認してから、導入を進めていきました。

     

    松澤:開発サイドでは、APIのドキュメントが丁寧に作られていたので、読み込んでひたすら実装していきました。API自体が素直な仕様、つまりはドキュメント通りの挙動になっているので、読めばだいたい分かるというのが大きかったです。

     

    --導入期間としては、どれくらいだったのでしょうか?

     

    松澤:業登録の進捗もあったので、実際にに始まってから半年くらいですね。TRUSTDOCKのAPIを触り始めて、統合実装が始まったのは、2020年11月くらいからです。12月には業登録完了の見込みが立ってきたので、本番環境を動かし始めて、2021年1月にユーザーテスト、3月にカットオーバーという流れですね。

    だいぶ自動化が進んでいます

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    --導入後の効果としてはいかがでしょう?

     

    松澤:ミドルオフィスに担当者がいて、TRUSTDOCKからの情報の処理と、社内での反社チェックを行っているのですが、本人確認で問題なく承認の時は、ほぼ自動化できています。担当者の様子を見ても、ちゃんと回っているなという印象です。

    否認時のオペレーションについても、当初は手動でフォローアップを考えていたのですが、なにかと時間やコストがかかってしまうので、早々に自動で否認理由などを顧客にメール送信するようにしました。

    だいぶ自動化が進んでいます。

     

    福井:あとは、eKYC導入によって「全てオンラインで完結できる」という文言をサービスとして謳えるようになったのも良いですね。大手ネット証券で口座開設をするにしても、簡易書留を入れるフローがほとんどなので、そことの差別化がしっかりと訴求できるのは大きいです。

     

    --そもそも、Siiiboさんのサービス自体、相当ユニークですから、前例がないですよね。

     

    福井:他の証券会社含めて前例がないからこそ、判断基準になるところがなく、コンプライアンス部門もGOを出しにくい部分が多々ありました。

    だからこそ、先ほどお話しした通り、プロダクト開発に伴ってロビイングや各団体でのワーキンググループなどの活動を推進されているTRUSTDOCKの意見があると、会社としても進めやすかったです。

    マイナンバーカードによる「ワ」の要件導入も検討中

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    --逆に、想定外のことなどはありましたか?

     

    福井:実際に画像を見ないと否認の判断が明確にできないということは、導入して初めて理解しました。結構多く微妙なラインの否認が発生しているので、今後はそこのコストも減らしたく、新たに公的個人認証(電子署名)を使った「ワ」の要件手法の導入も検討しています。

     

    松澤:否認の理由もそうですし、僕らみたいな若い世代じゃない人たち、スマホアプリにまだ慣れていない人たちにとっては、eKYCって難しいと思うんですよ。だからこそ、マイナンバーカードを使った手法を選択肢に加えるのは、大事なことだと感じています。

     

    --アーリーアダプターの先のユーザーも見越しての対応ということですね。TRUSTDOCKへの今後の期待としてはいかがでしょう?

     

    福井:実装に限らず、法律の解釈含めて何でもご相談できるのは、とても助かっています。新機能の追加にも積極的なのも良いなと思うので、引き続き楽しみにしています。

     

    --有り難うございます。最後に、読者の皆さまへのメッセージをお願いします!

     

    福井:本人確認まわりについては、マルっと全部お任せできると思います。

     

    松澤:他企業もTRUSTDOCKを使ってもらえると、弊社としても嬉しいなと思います。と言いますのも、我々の印象として、TRUSTDOCK社内でも運用しながら色々な発見があるんじゃないかなと思っています。つまり、我々のケースも一つのテストベッドになっているのかなと。

    だとすると、他の業種もTRUSTDOCKを使ってもらえると、それに伴って機能が豊富になっていき、結果として自分たちも楽になるだろうと考えています。

    なので、ぜひ多くの企業に使って欲しいなと思います。

     

    ---

     TRUSTDOCKでは、“本人確認のプロ”として企業のKYC関連業務をワンストップで支援するAPIソリューションを提供し、またデジタル身分証のプラットフォーマーとして様々な事業者と連携しております。eKYCソリューションの導入を検討されている企業の方々や、実際に導入プロジェクトを担当されている方々に向けてはPDF冊子「eKYC導入検討担当者のためのチェックリスト」を提供しており、eKYC導入までの検討フローや運用設計を行う上で重要な検討項目等を計12個のポイントにまとめていますので、ぜひご活用ください。

    eKYC導入検討担当者のためのチェックリスト

     

     なお、KYCやeKYCの詳細については、以下の記事も併せてご覧ください。

    KYCとは?あらゆる業界に求められる「本人確認手続き」の最新情報を徹底解説

    eKYCとは?日本唯一の専門機関のプロがわかりやすく解説

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    (文・長岡武司)

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