マイナンバーカード利活用で公共DX施策を促進〜デジタル身分証およびeKYCサービスの解説〜

イベント/セミナーレポート

更新日: 2023/03/17

目次

     人口減少や高齢化、自治体の2040年問題など、課題先進国として社会課題が山積する状況においては、公共セクターにおけるDX(デジタルトランスフォーメーション)が鍵を握っています。

     生産性を向上させて持続可能な社会の仕組みを構築するためにも、BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)などの戦略的な変革を行う必要があり、そのためにはデジタルとリアルの“なめらかな”融合と、域内住民も含めた様々なステークホルダーを巻き込む形での抜本的な変革へのアクションが重要と言えるでしょう。

     そんな中、2023年2月28日に開催された「第5回公共DXフォーラム~デジタル社会の実現に向けて~」(JBpress主催)では、日本全国の公共セクター勤務の方々を主な対象に、住民サービスの向上やイノベーション創出のための公共DXについて考察する各種オンラインセミナーが開かれました。

     本記事では、その中でもTRUSTDOCKによる「自治体DX担当者なら知っておきたい、本人確認・マイナンバーカードの様々な利活用シーン」セッションの内容についてレポートします。

    登壇者

    publicdx2023_01

    • [写真左]千葉 孝浩(株式会社TRUSTDOCK 代表取締役CEO)
    • [写真右]肥後 彰秀 (株式会社TRUSTDOCK 取締役兼 Identity事業部 事業部長、福岡市 DXデザイナー、Fintech協会 理事、日本ブロックチェーン協会 アドバイザー)

    公共DXで大切な「住民の視点」への立ち戻り

    publicdx2023_02

     まずは現在自治体が抱えている課題について、TRUSTDOCKの取締役である肥後彰秀より説明がなされました。

     課題と一言で表現しても、シンプルに「これだ」と一つに特定できるものではなく、多くの自治体では上画像に列挙されているキーワードが複雑に絡み合っている状況の中で、日々取り組まれているのが実情なのではないでしょうか。特にコロナ禍において、たとえば役所の窓口業務等における待ち行列などの状況に鑑みて、より一層課題感が高まったというケースも多いことが推察されます。

     そのような状況の中、「具体的にどこから始めるべきか」で悩んでいるのだとしたら、まずは「住民のお悩みは何なのか?」という視点に立ち戻ることが大切だと説明します。

     

    釈迦に説法で恐縮ではございますが、改めて住民の皆さまの視点に立ち、どこで悩まれているか、あるいはそれをどうやって解決していけるのかを起点にして考えていけばいいのではないかと考えています」(肥後)

    publicdx2023_03

     たとえば上図の図書カード紛失のケース(上半分のやりとり)を考えてみると、再発行にはオンライン申請の仕組みが用意されているものの、交付には2週間ほど時間がかかる状況となっているとします。住民としてはすぐに使いたいのですが、一方で自治体職員としては業務の優先順位に鑑みて対応のスピードアップは困難であり、結果として住民にとってのペイン(苦悩。解決すべき課題)につながっていると言えます。

     もう一つ、施設利用カード提示のケース(下半分のやりとり)を考えてみると、仮に自分のものでないカード(友人が発行したものetc…)を提示したとしても、担当職員としては確認のしようがなく、結果として他人のものでも問題なく施設利用ができてしまうといったことが発生し得ます。つまり、なりすましによる利用などの課題が潜在的にあると言えるでしょう。

     対応人員数を増やすことができれば、仕組みを変えずに上記のような課題を解決することができるかもしれませんが、そもそもの話として労働力人口が減少し続けている社会状況であるからこそ、これらはいずれもDXが不可欠な領域だと言えます。

    デジタル身分証アプリを利用したマイナンバーカード等の活用事例

    publicdx2023_04

     TRUSTDOCKでは上画像にある通り、リアルな身分証を都度渡さなくても身元確認ができる「デジタル身分証アプリ」を提供しています。このデジタル身分証アプリは、マイナンバーカードを利用した公的個人認証での電子署名に対応していることから、例えば住民向けサービスでの本人確認(公的個人認証)や免許証・在留カード等ICチップの読み取りなど、様々な行政実務にも対応しています。

     このデジタル身分証アプリを活用したマイナンバーカード活用の実証について、3つの事例がDX支援施策として紹介されました。

    田村市「たむらスマイルデジタル商品券」利用時における公的個人認証

    publicdx2023_05

     福島県田村市では、「たむらスマイルデジタル商品券」と呼ばれる、市内登録店で利用できるデジタル商品券を販売・展開されました(2022年12月31日をもって予定期間終了)。このデジタル商品券は田村市民以外でも購入・利用が可能なものとなっているのですが、市民限定の「付与型デジタル商品券」というものが用意されており、マイナンバーカードを取得して申し込んだ先着15,000名に4,000円分のデジタル商品券が付与されるようになっています。

     この付与型デジタル商品券の申請において、TRUSTDOCKのデジタル身分証アプリを活用したマイナンバーカードによる公的個人認証の仕組みが導入されています。このように、市民に限定されているものや、重複での申請がNGなもの、申請に上限が設けられているような政策に対して有効な仕組みだと言えるでしょう。

     

    ※たむらスマイルデジタル商品券の詳細については以下の公式サイトをご覧ください。

    https://smile-tamura.com/user/

    豊能町提供スマホアプリ「とよのんコンシェルジュ」利用時におけるパスワードレス認証

    publicdx2023_06

     続いてはパスワードレス認証での利用の事例です。大阪府豊能町では、「豊能スマートシティ戦略プロジェクト」の一環としてスマホアプリ「とよのんコンシェルジュ」を提供し、誰でも簡単に健康相談や見守り等のサービスを選べる環境を提供しています。とよのんコンシェルジュへのログインする際に、TRUSTDOCKのデジタル身分証アプリを活用するという取り組みを行っています。

     具体的には、TRUSTDOCKのデジタル身分証アプリでアカウントを作成して本人確認を実施し、とよのんコンシェルジュへと連携することで、以降はとよのんコンシェルジュ利用時にいちいちパスワードを打たなくても済むようになるというものです。パスワードの紛失や漏洩によるトラブルが後を絶たない状況だからこそ、このような「パスワードレス認証」の仕組みへのニーズは、今後ますます増えていくことが想定されます。

     

    ※とよのんコンシェルジュの詳細については以下の豊能町ホームページをご覧ください。

    https://www.town.toyono.osaka.jp/page/page005171.html

    富山県「Digi-PoC TOYAMA」におけるID/データ連携(PoC事例)

    publicdx2023_07

     こちらはPoCの事例です。富山県では、県成長戦略が目指す県民のウェルビーイングの向上や、「幸せ人口1000万」の実現等を図るため、地域課題をデジタルソリューションで解決する事例を創出してビジネスモデルの構築につなげる「Digi-PoC TOYAMA(デジポックとやま)」実証実験プロジェクトを実施しています。

     このDigi-PoC TOYAMAにおいて、県民向けアプリの連携をテーマに、デジタル身分証アプリによるアプリ毎のID等の統一およびデータ連携を進めています。本セッションの収録時点では「詳細はこれから」としていましたが、PoCとしては、デジタル身分証アプリを用いて複数のサービスにパスワードレスでログインできる環境を構築し、複数のサービスごとにIDを作成しなくても良いこと、パスワードレスでログインできること、デジタル身分証の作成プロセスなどについて意見を収集する取り組みを実施しています。

    その他様々な省庁/自治体での事例

    publicdx2023_08

     この他にも上画像にある通り、様々な自治体および行政機関においてデジタル身分証アプリを提供しています。それぞれの詳細については、昨年度(2022年開催)の公共DXフォーラムにおけるTRUSTDOCKセッションのレポート記事を併せてご参照ください。

    ▶︎マイナンバーカードで行政/自治体DXを加速〜公的個人認証・本人確認・電子署名の活用事例

    デジタル身分証を使うことで実現可能なユースケースとは

    publicdx2023_09

     デジタル身分証アプリを使ったユースケースとしては、上画像にある通り様々なオペレーションが想定できます。この中で本セッションでは、3つのユースケースについて説明がなされました。

    ユースケースA:生活者向けアプリにおける生活者とのタッチポイントづくり

    publicdx2023_10

     まずは生活者向けアプリにおける生活者とのタッチポイントづくりについてです。生活者は、複数のサービスを利用するたびにそれぞれの専用サイトなどで本人確認をする必要があることから、負担が大きいものとなっています。これに対してデジタル身分証アプリを使ったパスワードレス認証などを活用することで、各種サービスへのログインなどがスムーズになることが期待できるので、結果として利用者登録やサービス利用の増加につながると言えます。

    ユースケースB:公共施設の利用者登録

    publicdx2023_11

     続いては公共施設における利用者登録についてです。体育館や会議室、図書館などの公共施設の利用時においては、事前に役所の窓口等に住民が行って手続きをするケースが現在の主流となっています。しかし、冒頭にお伝えした通りこのオペレーションは住民にとっての負担になっているだけでなく、役所業務をする職員にとっても同様に負担となっています。また、役所訪問が難しい住民への対応も念頭におくと、オンラインでの利用者登録および利用予約申請ができることが望ましいと言えます。デジタル身分証アプリを使って事前にオンラインにて利用者登録や利用予約申請ができるようになることで、個人・法人を問わず、当日の利用や属性による利用制限などにも柔軟に対応できることが期待されます。

    ユースケースC:災害発生時の住民の安否確認・避難所受付のデジタル化

    publicdx2023_12

     最後3つ目は、災害発生時における住民の安否確認および避難所受付のデジタル化についてです。災害発生時においては、マイナンバーカードのような公的身分証明書を持ち歩いていないケースも多く存在するかと思います。一方で家族等との連絡手段として、スマホを持っているケースは多いのではないでしょうか。そのようなシチュエーションにおいて、「QRコード読み取り」だけで安否確認を完結できるような仕組みも、デジタル身分証アプリによって実現します。QRコード読み取りは日常生活においても随分と浸透してきている操作であることから、提示する生活者はもちろん、自治体職員にとっても習熟不要でオペレーション負担が少ない手段としてBCPに織り込むことが可能だと言えます。

    マイナンバーカード利活用の促進に向けた無料相談を通じたユースケースの発掘

     このように、マイナンバーカードおよびデジタル身分証アプリを使うことで、様々なユースケースを通じての自治体業務DXが実現します。具体的なユースケースは日々、担当者等との話し合いを通じて生み出されていると、TRUSTDOCK 代表取締役CEOの千葉 孝浩は最後に説明します。

    「今日ご紹介した事例以外にも弊社では様々な自治体様とお話をしており、デジタル身分証やeKYCサービスを通じての自治体領域におけるマイナンバーカードの利活用シーンの創出・拡大について、まさに今、無料相談を提供している最中です。僕らだけでなく、自治体担当者様や基盤周りを整備されているベンダー様など、様々なステークホルダーと連携しながら、一足飛びにはなかなか進まない話に対してどのように取り組んでいくかを並走しながら一緒に考えておりますので、まずは気軽にご相談いただければと思います」(千葉)

    publicdx2023_13

     TRUSTDOCKでは“本人確認のプロ”として、自治体や企業のKYC関連業務をワンストップで支援するAPIソリューションを提供しており、またデジタル身分証アプリを通じていつでもどこでも、どのような状況でも、身元確認をすることができ、誰でも適切な各種サービスを素早く受け取れる世界を目指しています。

    publicdx2023_14

     また、日頃から関係省庁・関係団体等と連携し、社内や特定の業界に閉じない議論を行い、今後のデジタル社会に必要なeKYCサービスの提供、社会への情報発信等に積極的に取り組んでいるほか、eKYCサービスに関する新たなルールづくりを進めています。

    aboutekyc65

     今回のテーマとなった公共DXはもちろん、eKYCのような本人確認領域や業務プロセスのデジタル化についてご不明点がある場合は、どうぞお気軽にご相談ください。

     なおマイナンバー×本人確認や自治体DX推進計画のポイント等、およびeKYCの詳細については、以下の記事で詳しく解説しているので併せてご覧ください。

    ▶︎「自治体DX推進計画」の2022年夏の改定ポイントとは?検討会座長・庄司昌彦氏による解説セミナーレポート

    ▶︎マイナンバー取得時に必要な本人確認とは。できるケースとできないケースを解説

    ▶︎eKYCとは?オンライン本人確認を徹底解説!メリット、事例、選定ポイント、最新トレンド等

     

     またTRUSTDOCKでは、eKYCソリューションの導入を検討されている自治体・企業の方々や、実際に導入プロジェクトを担当されている方々に向けてPDF冊子「eKYC導入検討担当者のためのチェックリスト」を提供しており、eKYC導入までの検討フローや運用設計を行う上で重要な検討項目等を計12個のポイントにまとめていますので、こちらもぜひご活用ください。

    eKYC導入検討担当者のためのチェックリスト

     

    (文・長岡武司)

    自由な組み合わせで
    最適な設計を実現できます
    KYCに特化したプロ集団に、まずはご相談ください

    サービス資料ダウンロード お問い合わせ