eKYC導入で利用者登録にかかる期間を大幅に短縮:福岡市様「公共施設案内・予約システム」の事例

eKYC/本人確認

更新日: 2024/07/01

 私たちの生活のあらゆるシーンでオンライン化/デジタル化が進む中、自治体での各種手続きにおいてもその流れが加速しています。「行政手続におけるオンラインによる本人確認の手法に関するガイドライン」を参考にしつつ、個別の業務内容やオペレーションフローの整理、再構築等を進めている自治体も多いのではないでしょうか。

 今回は、行政手続きDXを進める自治体の中でも、福岡市様にお話を伺いました。公共施設案内・予約システムの刷新に合わせてTRUSTDOCKのeKYC導入を進められたとのことで、導入後の効果や利用者の皆さまからの反応等についてざっくばらんにお話いただきました。

本記事の内容は取材日時点のものとなります。

本記事のポイント

【ニーズ】

・福岡市公共施設案内・予約システムの刷新に併せて利用者登録申請もオンライン化したい

【導入後の効果】

・長いと1ヵ月近くかかっていた利用者登録手続きが、最短で1週間程度に短縮
・システム全体の利便性の向上によって新規登録申請数が大幅に増加

導入サービス:福岡市公共施設案内・予約システム

fukuokacity01https://www3.11489.jp/fukuoka/user/Home

 

利用者登録をすることで、施設窓口に行かなくてもパソコンや、スマートフォンなどから福岡市の公共施設の抽選申込み、空き室予約申込みなどの手続きができるシステム。

利用しているeKYC本人確認API

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✅ eKYC「ワ」(公的個人認証サービス)
✅ 個人身元確認(券面撮影)

新規利用登録手続き時に、eKYC本人確認APIサービス「TRUSTDOCK」を使った本人確認を実施しています。

担当者プロフィール

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船越 厚男[Atsuo Funakoshi]

福岡市役所
総務企画局 DX戦略部 情報システム課 主査 公共施設案内・予約システム刷新担当

20年近く使っていたシステムの刷新に合わせてeKYCを導入

--ご担当されている福岡市公共施設案内・予約システムですが、2023年4月1日から新システムでの予約受付を一部開始し、2024年4月1日からオンライン利用者登録申請機能が稼働開始されたということで、まずはこちらの背景を教えてください。

 

船越:旧システムは平成16年に稼働開始したもので、もう20年近く経過しており、パソコンベースの仕組みということもあって、スマートフォン等のデバイスにうまく対応できていない状況であったことから、今回の新システム構築を進めることになりました。

 

--どのような経緯でeKYC導入の話が挙がったのでしょうか?

 

船越:今回は予約システム全体の刷新ということでeKYCがメインというわけではなかったのですが、その前提で、新型コロナウイルス感染症対策をきっかけに窓口からオンラインへの対応という全体方針があったため、その一環として利用者登録申請のオンライン化も一つの要件として進めていきました。

 

--それまでは基本的に対面での本人確認実施だったのですか?

 

船越:はい。予約システムは、一度利用者登録をすればインターネット上で予約等ができるのですが、初回登録時の本人確認に関しては身分証明書を提示いただくため、どうしても施設の窓口で申請いただく必要がありました。一気通貫で非対面対応ができるという選択肢を用意するためにも、本人確認のオンライン化は必須でした。

全体の手続き数が200件から800件に大幅増加

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--eKYC導入の感想はいかがでしょうか?

 

船越:あらかじめAPIとして基本的な仕組みが用意されていたので、特に問題なく使えるようになっていると思います。実際に操作してみても、マイナンバーカードをスマホで読み込むか、身分証明書の写真撮影をするかを選択して実行するだけなので、大きな不便なく使うことができると感じました。実際に本人確認周りの運用を担当している予約システムサービスセンターからも、特に大きな課題等に関する報告は今のところございません。

 

--公共施設の予約ということでeKYC以外の本人確認手法を望まれる方もいらっしゃるのではないかと思うのですが、その際はどのように対応されているのでしょうか?

 

船越:各施設窓口での受付も継続しておりますので、eKYCが難しい場合等は直接窓口にお越しいただくという選択肢をご用意しています。

 

--実際、eKYCの利用状況としてはいかがでしょうか?

 

船越:オンライン化する前までは年間3,000件ほどの申請/変更に付随した本人確認を実施しており、当初はその半分くらいが切り替わるかなと考えていたのですが、実際に運用開始してみるとオンラインで便利ということも相まって、予想を上回る量の本人確認を実施しています。

 

--具体的にはどれくらいの量になりますか?

 

船越:まだ運用開始して2ヵ月程度のデータではありますが、例えば例年の4月だとおよそ200件の申請があるのですが、今月(2024年4月)はeKYCによる本人確認の実施件数だけで600件にも上り、全体の手続き数が800件近くになっています。もちろん書類の不備等様々な理由で登録にまで至っていないものもありますが、少なくとも例年の2倍程度の登録者数になっていますね。

長いと1ヵ月近くかかっていた利用者登録申請から予約までの手続きが、最短で1週間程度に短縮

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--TRUSTDOCK導入の効果についても教えてください。

 

船越:やはり初回の施設予約までに要する時間の短縮が大きいです。窓口申請ですと申込から予約完了まで最短で2週間、長いと1ヵ月近くかかっていたのですが、新システムでは最短だと1週間程度で予約できるようになっています。

 

--窓口への申請だと1ヵ月ほどかかるというのは、具体的にどのような手続きとなるのでしょうか?

 

船越:利用者にはまず申請書を手に入れていただき、銀行窓口で口座引き落としの確認をしていただいた上で利用する施設の窓口にお越しいただき、利用者登録申請書を提出していただいています。施設で内容を確認し、申請内容や書類等に問題がなければ、先ほどもお伝えした予約システムサービスセンターの方でシステムに利用者登録を行い、利用者登録通知書を発行して郵送するという流れになります。この通知書に利用者IDが記載されており、システムにログインすることで予約する仕組みになっているので、どうしても時間がかかっております。

 

--eKYCの操作に関する問い合わせ等はありますか?

 

船越:eKYCについては、特に多くはいただいてはいない認識です。一方で旧システムから新システムに切り替えたということで、システムの操作等に関する問い合わせはいただいています。旧システムが20年近く動いていたものなので、ある程度は仕方ないかなと考えております。

今後も行政のオンライン化をどんどんと進めていかなければならない

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--福岡市公共施設案内・予約システムの今後についてのお考えも教えてください。

 

船越:今お伝えしました通り、旧システムのイメージが強いという方も少なくないので、新システムでのオペレーションに関する解説等が大切になってくるかなと思っています。また、eKYC含めたオンライン化によって登録希望者が増えており、施設側としては件数の増加に伴っての対応が大変になってきているという側面もあります。特にスポーツ系の施設に比べて審査がより厳格な文化系施設のオペレーション量が多くなっているので、そのあたりの対策についても、今後擦り合わせながら検討していく必要があると考えています。

 

--ありがとうございます。それでは最後に、読者の皆さまに一言お願いします。

 

船越:これからも行政のオンライン化を進めていかなければならない中で、本人確認をどうするかという観点は、役所はもちろん世の中の様々な業務に必要になってくるだろうと考えています。一方で、どんなことができるかのイメージがなかなかしにくいかもしれません。本市が委嘱しているDXデザイナーに、TRUSTDOCKの肥後さんがいらっしゃることからeKYCのご助言をいただける機会がありましたが、通常はそういった環境はないと思います。しかしながら、TRUSTDOCKさんは様々な業界での事例をお持ちのようですので、まずは相談していただくと良いのではないかと思います。

 

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 TRUSTDOCKでは、“本人確認のプロ”として企業のKYC関連業務をワンストップで支援するAPIソリューションを提供し、またデジタル身分証のプラットフォーマーとして様々な事業者と連携しております。eKYCソリューションの導入を検討されている企業の方々や、実際に導入プロジェクトを担当されている方々に向けてはPDF冊子「eKYC導入検討担当者のためのチェックリスト」を提供しており、eKYC導入までの検討フローや運用設計を行う上で重要な検討項目等を計10個のポイントにまとめていますので、ぜひご活用ください。

eKYC導入検討担当者のためのチェックリスト

 

 なお、KYCやeKYCの詳細については、以下の記事も併せてご覧ください。

▶︎KYCとは?あらゆる業界に求められる「本人確認手続き」の最新情報を徹底解説

▶︎eKYCとは?オンライン本人確認のメリットやよくある誤解、選定ポイント、事例、最新トレンド等を徹底解説!

 

(文・長岡武司)

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