ここ数年でオンラインショッピング市場が拡大する中、アパレルECは特に注目されている業界の一つと言え、「衣類・服装雑貨等」の2022年市場規模は2兆5,499億円で、前年比5%強増となっています※。
そんなアパレルECの中でも独自のマーケットプレイスを展開しているのが株式会社エニグモです。同社が運営する「BUYMA」では、世界各国のパーソナルショッパー(出品者)から世界中のファッションアイテムを購入することができ、国内ではすでに完売した商品や入手困難アイテム、国内未上陸ブランドなど、特に付加価値の高いアイテムにアクセスできることが大きな特徴となっています。
そんなBUYMAでは2023年6月より、TRUSTDOCKと連携した本人確認サービスによる「本人確認済バッジ」の表示が開始され、偽物販売など、購入時のトラブルを防止する安全・安心への取り組みを強化しました。
本人確認済バッジのイメージ
具体的にどんな経緯でTRUSTDOCKの導入を決定されたのか等について、お話を伺いました。
※2023年8月31日の経済産業省発表「令和4年度 電子商取引に関する市場調査」p51より
本記事のポイント
【ニーズ】
・サイト上で本人確認済バッジを表示させることで購入者の安心感醸成につなげたい
・多くのユーザーの本人確認情報を安全かつ簡単な方法でやりとりしたい
・できればリスクチェックも含めて本人確認をデジタル化したい
・社内で行っていた本人確認作業の工数を大幅に減らしたい
【導入後の効果】
・24時間365日の体制で本人確認が自動化できたため、本人確認の対象人数が増えても工数を気にすることなく、本業に集中できる環境になった
・強く啓蒙せずともパーソナルショッパーが自発的に本人確認を実施してくれている
・本人確認済みのパーソナルショッパーの増加により、サイトとしての信頼度が着々と向上している
導入サービス:BUYMA
世界177カ国に在住する21.10万人以上のパーソナルショッパー(出品者)から世界中の魅力的な商品をお得に購入できる、これまでにない新しいスペシャルティ・マーケットプレイス。会員数は1,076万人を突破、取扱ブランド数は1.7万を超え、日本未上陸ブランド、国内完売アイテムをはじめとした世界中のファッショントレンドアイテムからコスメ、インテリア雑貨まで幅広く揃っている。
利用しているeKYC本人確認API
✅ 個人身元確認
✅ セルフィー確認
✅ 記事DB検索サービス
パーソナルショッパー(出品者)が任意で本人確認を実施する際に、eKYC本人確認APIサービス「TRUSTDOCK」を使って実施しています。
担当者プロフィール
(写真左)野口 久恵[Hisae Noguchi]
株式会社エニグモ カスタマーマーケティング事業本部 Trust & Safetyグループ マネージャー
(写真右)渡邉 忠[Tadashi Watanabe]
株式会社エニグモ ソーシャルコマース事業本部 UXデザイングループ
豊富な導入実績とサポートの安心感が決め手
--「BUYMA」では偽物販売など、購入時のトラブルを防止する様々な取り組みを行っていらっしゃいますが、今回eKYCサービスの導入を検討された背景について教えてください。
野口:もともとBUYMAでは内製で、一部のパーソナルショッパーに限って本人確認を行っていたのですが、非常にアナログな方法でした。具体的には、BUYMAのサイト上から所定の書類フォーマットをダウンロードいただき、パーソナルショッパーご自身に関する各種情報を入力いただいた上で、本人確認書類の画像と共にメールで送っていただくというオペレーションをお願いしておりました。
1通1通メールで受信した書類群を開いて確認作業を行っていたので、社内の工数を圧迫していましたし、何よりも、個人情報のような重要な情報をメールで授受するという状況を見直したいと考えていました。
そんな中、2020年頃に社内の仕組みをデジタル化しようと検討したのですが、開発工数がかかる上に運用コストも膨れ上がることが想定されたため、社外で専門的にeKYCを行っている事業者様を探すことになりました。
--TRUSTDOCKはどのような流れでご存知になったのでしょうか?
野口:当時、eKYCサービス事業者を検索すると、数社しかヒットしませんでした。その中で導入実績がしっかりとあり、行政等との取り組みも含めて、会社として安心してお任せできそうだと感じたのがTRUSTDOCKさんでした。
2020年の時点で一度検討のためにお話を伺い、その後社内での優先順位が変わったため一度保留にさせていただいたのですが、2022年に再度リスクへの認識が高まっていき、また他マーケットプレイス事業者様が実施しているような「本人確認済バッジ」の機能実装への機運も高まっていったことで、できるだけ多くのパーソナルショッパーに本人確認を行っていただける体制を整えていきたいという状況になりました。そこで改めてTRUSTDOCKさんにお話を伺って導入を進めることにしました。
中長期的な費用対効果を期待して複数のAPI機能を導入
--導入に伴う開発はいかがでしたか?
渡邉:特に大きな問題もなく進めることができました。弊社側のシステムの動きとして、国内か海外か、もしくは本人確認済みか否かによって表示させる申込フォームの出しわけをする想定でしたので、その部分に若干時間はかかっていました。開発期間としては、2022年12月〜翌3月あたり、約4ヵ月間だったと思います。
--BUYMAの出品者さんは国内だけでなく海外の方や企業も多いんですよね。
渡邉:そうなんです。今回eKYCを導入したのは国内のパーソナルショッパーに対してだけで、海外のパーソナルショッパーについては、先ほど野口が申し上げたアナログなメールでのやりとりを続けています。
弊社としてはここもできればeKYCにしたいと考えているのですが、TRUSTDOCKさんとも話し合い、海外の場合は例えば住所確認書類のフォーマット等が多岐に亘るなどのイレギュラーなケースが多いことが想定されるため、まずは国内だけでの展開としました。
--導入いただいているAPIとしては、個人の本人確認の他に、スピードリスクチェックも含まれていますね。
野口:もともとは個人の本人確認だけ導入しようと考えていましたが、法人のパーソナルショッパー様に対しては、もともと反社チェックも実施していたことから、このタイミングで一緒に導入したほうが中長期的な費用対効果としては良いだろうと判断し、併せて導入しました。
--TRUSTDOCKを導入いただいた後、どんな体制で運用されているのでしょうか?
野口:TRUSTDOCK導入後は対応頂いている国内のパーソナルショッパーの本人確認自体に弊社メンバーが関与することはほとんどなくて、問い合わせが発生した場合に、フロントとしてカスタマーサポートチームが対応しています。もしもそこで込み入った話になるようであれば、我々Trust & Safetyグループにバトンタッチして対応するという形にしています。とはいえ、そのようなケースは今のところほとんど発生しておらず、基本的にはTRUSTDOCKさんにお任せできている状況です。
24時間365日対応のおかげで、より本業に集中できている
--TRUSTDOCK導入の効果としてはいかがですか?
野口:TRUSTDOCKさんにお任せしたことにより、これまでメールベースでのやりとりで多くのユーザーに向けた本人確認対応が難しかった点が解消されました。国内のパーソナルショッパーの本人確認作業を、24時間365日の体制で自動化してもらえているので、社内メンバーとしてはそれ以外の業務に集中できています。
またパーソナルショッパーの本人確認実施についても、あくまで私の体感ではありますが、アクティブなユーザーの7〜8割はやってくださっている印象です。
渡邉:リリース直後は本人確認済バッジをマイページ上にしか出していなかったのですが、2023年6月末あたりからは商品詳細ページなどにも出すようにしています。多くのユーザーの目にとまる箇所に本人確認済バッジの露出を強めたことで、こちらから強く啓蒙せずともパーソナルショッパーの皆様が本人確認の重要性を理解してくださり、自発的に本人確認を実施してくださっている状況です。
「BUYMA」では、本人確認のメリットや流れをわかりやすく説明している(https://www.buyma.com/contents/identification/?af=601より)
--改めて、eKYCパートナーとしてTRUSTDOCKを選定して良かったことを教えてください。
野口:やはり24時間365日、こちらが何もしなくても絶え間なく本人確認作業を進めてくださる点がありがたいと感じます。その分、弊社としては他の業務に集中することができています。
渡邉:システムの観点でお伝えすると、早ければ数分で本人確認結果が帰ってくるので、非常にスピーディーだなと感じています。パーソナルショッパーにとっての負担を最小限に抑えるような企業努力がなされているなと。この流れで引き続き、本人確認済みのパーソナルショッパーを増やしていきたく、ご一緒できたらと感じています。
野口:おかげさまで今のところは順調に本人確認済みのパーソナルショッパーが増加しており、サイトとしての信頼度も着々と高まっていると感じます。引き続き、プラットフォームとして安全性の向上を目指していきたいですね。
--ありがとうございます。それでは最後に、読者の皆さまに一言ずつお願いします!
渡邉:導入実績が多く、スピーディーかつ安心して実装できたと感じています。今後も、本人確認をしていただいたパーソナルショッパーだけが使える機能などを追加していきたいです。
野口:今回、TRUSTDOCKさんのeKYCを導入して、改めて良かったなと思っています。海外ユーザーに対しては例外的にメール対応をするなど、弊社独自の運用がかなり多く、すり合わせの着地のハードルは高かったと思いますが、おかげさまで非常に円滑に運用が回っております。
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TRUSTDOCKでは、“本人確認のプロ”として企業のKYC関連業務をワンストップで支援するAPIソリューションを提供し、またデジタル身分証のプラットフォーマーとして様々な事業者と連携しております。eKYCソリューションの導入を検討されている企業の方々や、実際に導入プロジェクトを担当されている方々に向けてはPDF冊子「eKYC導入検討担当者のためのチェックリスト」を提供しており、eKYC導入までの検討フローや運用設計を行う上で重要な検討項目等を計10個のポイントにまとめていますので、ぜひご活用ください。
なお、eKYCやKYCの詳細については、以下の記事も併せてご覧ください。
▶︎eKYCとは?オンライン本人確認を徹底解説!メリット、事例、選定ポイント、最新トレンド等
▶︎KYCとは?あらゆる業界に求められる「本人確認手続き」の最新情報を徹底解説
(文・長岡武司)