2021年秋に新設が予定されている「デジタル庁」。行政のデジタル化については、以前よりデジタル推進法案等を通じて着々と進んではおりましたが、2020年発生のコロナ禍によって、それに対する興味関心が急速に高まっていきました。
中でも、特別定額給付金や雇用調整助成金などの各種補助金申請の手続きを、各自治体は対面処理を制限された環境下で滞りなく実施する必要に迫られました。結果として申請や手続きのオンライン化など、従来では選択肢として敬遠されていた手法が、非常に有効だと気づいた担当者もおり、自治体DXへのソリューションがますます注目されている状況だと言えます。
そんな中、TRUSTDOCKへの出資も行なっているベンチャーキャピタル・Coral Capital社は2020年11⽉26⽇に、オンラインセミナー「行政サービスのデジタル化を支援する注目スタートアップ」を開催。
まず前半では、Coral Capitalが出資する国内の行政支援スタートアップ3社によるピッチが行われ、そこでTRUSTDOCK代表の千葉もサービス内容を発表。
株式会社TRUSTDOCK 代表取締役 千葉孝浩。前身のガイアックスでR&D「シェアリングエコノミー×ブロックチェーン」でのデジタルID研究の結果を基に、日本初のe-KYC/本人確認API「TRUSTDOCK」を事業展開し、専業会社として独立した
TRUSTDOCKが提供する、日本で唯一のデジタル身分証アプリとe-KYC/本人確認APIサービスについてはもちろん、福岡市やつくば市における行政手続きのデジタル化についても言及しました。
なお、他登壇スタートアップは以下の通り。いずれもGovTech(Government x Technology)を支えるスタートアップとして急速に注目を高めている企業となります。
株式会社Holmes 代表取締役CEO 笹原健太氏。Holmesでは、Aftterハンコの契約マネジメント社会として「CLM(Contract Lifecycle Management)」を提唱しており、契約業務における非効率解消手法として「契約業務のプロセス化」「履行のプロセス化」「契約状態、権利義務の見えるか&文書管理」について、それぞれソリューション提供している
株式会社グラファー 代表取締役CEO 石井大地氏。グラファーではクラウド上で使いやすい行政プラットフォームを開発しており、市民向け手続き案内サービス「Graffer手続きガイド」や、あらゆる行政手続きをスマートフォンで完結できるプラットフォーム「Grafferスマート申請」を提供している
セミナー後半では、コロナ禍における助成金申請のオンライン化をいち早く導入した神戸市の広報戦略部長兼広報官 多名部重則氏と、上述のグラファー・石井氏によるパネルディスカッションが開催され、行政手続きオンライン化における課題やポイントについて、ざっくばらんにディスカッションがなされました。
神戸市といえばスタートアップとの連携で有名ですが、その発端は、庁内における「オープンデータ推進」の取り組みにあったとのことです。これを進める上で、同氏は2014年にサンフランシスコやロンドンといった先進的取組を進める地帯を視察しに行き、そこで、オープンデータ推進は「オープンガバナンス」の一環でやっていることを目の当たりにしました。特に、オープンガバナンスを実現する各種ソリューションを開発・提供しているのが様々なスタートアップ企業であったことから、神戸市でもスタートアップの育成に力を注いでいくこととなります。つまり、当初からGovTechを念頭に取組を進めてきたということです。
多名部:「一番大事なことは、誰に話をするかです。
自治体職員って、例えばオンライン申請だって言っても、多くはそのまま固まって終わってしまいます。でも、ごく一部に面白がる職員がいて、そういうところに話を持っていくと、彼ら彼女らが一種の媒体になって組織を動かし始めます。
キーになる職員をうまくつかまえることが、行政DXの要だと思っています。」
神戸市では、コロナ禍で売上減少に苦しむ中小企業の家賃軽減や、新しいビジネスチャレンジを応援する補助金の申請に、オンラインでの手続きを導入しました。もともと予定していた取り組みではなく、外出自粛がさけばれる中で新たな補助金を進めるにはオンラインでやるしかない、という状況の中で設計したものでしたが、例えば後者のチャレンジ補助金については、全申請8,400件強のうち84%がオンライン経由で申請されたとのことでした。
多名部:「職員の中には、申請は紙の方が良いと思っている人が沢山います。本人確認の証拠書類のチェック含めて、紙の方が絶対に効率が良いと思っているわけです。それを覆したのがコロナ禍でのオンライン申請の仕組みでした。今回はグラファーさんの仕組みを活用したのですが、記入漏れがあれば申請ボタンを押せない仕様となっているなど、驚いた職員は多いと思います。
職員のマインド的にも、新型コロナの影響がデジタル化を加速していると感じます。対面がベストだと思っていた職員にとっては、対面じゃない手段の有効性にも、なんとなく気づいたのではないでしょうか。
デジタル庁がどれくらいの強さで旗を降るのか分かりませんが、今後はこのような取り組みについて、自治体間でかなり差が出てくると思っています。神戸市の場合は当初から「デジタル × ヒューマン」を掲げており、業務とテクノロジーを上手く組み合わせて好循環が生まれるようにしています。」
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行政のDXはまだ始まったばかり。TRUSTDOCKでも、以下のような行政手続きに伴う本人確認ソリューションを提供しております。
- 個人の本人確認(例:住民票等)
- 法人の本人確認(例:補助金等)
- 資格確認(例:高齢者や障害者の方に関する手続き等)
先んじて民間事業各社への導入が進んでおり、あらゆるパターンの本人確認が提供可能となっておりますので、行政手続きごとに本人確認強度を変えて設計したいという場合は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
また、eKYCソリューションの導入を検討されている企業の方々や、実際に導入プロジェクトを担当されている方々のために、TRUSTDOCKではPDF冊子「eKYC導入検討担当者のためのチェックリスト」を提供しております。eKYC導入までの検討フローや、運用設計を行う上で重要な検討項目等を、計12個のポイントにまとめていますので、こちらもぜひご活用ください。
なお、KYCやeKYCの詳細については、以下の記事も併せてご覧ください。
KYCとは?あらゆる業界に求められる「本人確認手続き」の最新情報を徹底解説
(文・長岡武司)