60分でポイントを学ぶ「デジタル改革関連法案」セミナーレポート(概要版)

イベント/セミナーレポート

更新日: 2021/05/11

目次

     2021年4月2日、行政関係者を中心とする各所より注目されてきた「デジタル改革関連法案」が、衆院本会議にて与党などの賛成多数で可決しました。これにより現在、参院本会議にて審議中となっています。デジタル庁の創設や、個人情報保護法の改正など、我が国の未来を大きく変える法案だからこそ、全ての日本国民はその内容をしっかりと理解する必要があると言えるでしょう。

     TRUSTDOCKではこのデジタル改革関連法案について、押さえておきたいポイントや法案の先にある新しい社会のあり方を解説するセミナーを随時開催しています。

    今回はその中から、法案の中でも根幹の思想をなす「デジタル社会形成基本法案」の解説を中心に、セミナー内容をピックアップしてご紹介します。

    解説者プロフィール

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    神谷 英亮 [Eisuke Kamiya]
    株式会社TRUSTDOCK
    Public Affairs担当

     

    新聞社(販売局)に勤務後、2006年4月法務省に入省。再犯防止施策を中心とする政策の企画立案のほか、省内の法案や閣議案件の取りまとめなどを担当。2017年には内閣官房に出向し、サイバーセキュリティ基本法の改正を企画から法律制定に至るまで主導した。2020年11月刑事局(法制管理官室)勤務を最後に法務省を退職。

    同年12月、TRUSTDOCKにPublic Affairs担当として入社。民間事業者、行政機関、国会議員等と協働しながら、従来の考えにとらわれず「未来志向のルール形成」を目指している。

    デジタル社会形成基本法案とは

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     そもそも「デジタル改革関連法案」とは、複数の法案をまとめた表現となっています。内容としては以下の通り、全部で6法案あります。

    • デジタル社会形成基本法案
    • デジタル庁設置法案
    • デジタル社会の形成を図るための関連法案の整備に関する法律案
    • 公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録に関する法律案
    • 預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律案
    • 地方公共団体情報システムの標準化に関する法律案

     中でも、この一連の法律案の土台となるものが、一番上に記載した「デジタル社会形成基本法案」です。こちらは、言うなればデジタル社会の“憲法”的な位置づけになる法案で、これまで情報通信技術を活用する社会や、関連施策の推進について定めていた「IT基本法」(※)に代わる新法として位置付けられています。

    ※正式名称:情報通信ネットワーク社会形成基本法(2001年施行)

     

     このIT基本法が「デジタル社会形成基本法案」へと再構築される背景としては、主に以下の2要因が考えられます。

    1. 目覚ましい技術発展によるビッグデータ活用時代の到来
    2. 新型コロナウイルス感染症とその対応

     特に後者については、2020年のコロナ禍における特別定額給付金の支給手続きにおいて、情報通信技術が十分に活かしきれなかったり、新たな生活様式が求められる中で整備すべき環境や対応すべき課題が浮き彫りになったことが、法案推進への直接的なトリガーになったと考えられます。

     デジタル社会形成基本法の基本的な構造はIT基本法を基軸にしてはいるものの、話題となっている「デジタル庁」の設置と、それに伴う重点計画の作成について定めた点で、特徴的なものであると言えます。

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    神谷:「かつて行政官として法改正を担当していたので、基本法が変わるというのは非常に大きな話であると理解しています。一方で、社会の変化に応じて基本法でも変えていくという政府の姿勢は非常に素晴らしく、法律と行政のあり方はそうであるべきと考えています。」

    デジタル庁の設置、及びその任務と所掌について

     そんなデジタル社会形成基本法案と並行して、デジタル社会の司令塔としての機能が期待されているのが、先にも触れた「デジタル庁」です。こちらは内閣総理大臣をトップに据えて、その下に担当大臣が置かれ、各省への勧告権をもつことで強力に政策を推進できる体制構築がなされている点が特徴となっています。また、デジタル社会形成の基本理念に則った任務を遂行することが、デジタル庁設置法案の第3条に明記されています。

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     ここでいう「基本理念」とは、何なのでしょうか。先ほどのデジタル社会形成基本法案に戻って確認してみると、法案の3〜12条の各所に散りばめられていることがわかります。

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    神谷:「このように見てみると、「国民」や「個人」などといった言葉が目立っている印象です。法案の全体を検討する際に、検討チームが「利用者中心」であること、そして「誰一人取り残さない」ということを最も大事にしていたことが伺え、それが一種の魂として、エッセンスが盛り込まれていると感じます。」

     

     なお、デジタル庁の所掌事務については、以下が代表的なものとなっています。

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     特に、マイナンバーカードを軸に、公的個人認証やマイナポータル、ぴったりサービスなど、各所に散らばっていた施策が有機的に連携し、一体感やスピード感をもって進めることができるようになる点が、大きなインパクトの一つだと言えます。

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    歴史的な改正が含まれる重要法案「整備法案」

     もう一つ、長年の歴史的な改正が含まれている重要法案が「デジタル社会の形成を図るための関連法案の整備に関する法律案」、通称「整備法案」です。

     大きな特徴としてはまず、「個人情報保護法制2000個問題」を解決するという点です。これは、民間事業者と国の行政機関と独立行政法人、そして各地方公共団体(都道府県47、市区町村1750、広域連合等115)という形で、法律の解釈権が2000個に分立していることを揶揄する言葉です。

     例えば、X社がA市でサービス展開していたとして、今度はB市で横展開をしようとすると、A市とはまた違ったB市のルールのもとで、サービス展開を構築する必要があることになります。このようなことが多様な領域において発生しており、オープンデータをはじめとする様々なデータの利活用を大きく阻害するような状況でした。

     これをひとまとめの「改正個人情報保護法」として、所管も含めて一元化することで、よりシームレスな個人情報関連施策を推進できるようになることが期待されています。

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     またこれ以外にも、公的個人認証法の改正として、マイナンバーカードの電子証明書機能をスマホに搭載することも、整備法に盛り込まれてます。こちらは2022年に、まずはAndroid端末からの搭載実現を目指すと、総務省は発表しています。これが実現することで、オンラインでの行政サービス利用に必要な個人認証を、スマホ一つで実現できるようになるでしょう。

     さらに、現在ニュース等で話題となっている「押印見直し」についても言及がなされています。具体的には、押印や書面の見直しを求めるための48本の法律を改正する予定であることから、これまでオンライン手続きがほとんどなかった業界においても、オンライン取引が始まって、やがて主流になっていくことが期待されています。

     

    神谷:「このように、オンラインによる経済活動が拡大する中で、例えば本人確認はあらゆる業界で重要かつ不可欠な手続きになっています。顧客情報そのものを取り扱うこととなる本人確認手続きへの対応は、各事業者の最優先事項の一つになっていくでしょう。」

    人に優しいデジタル社会の実現に向けたキャッチアップを

     セミナーでは上述の内容以外にも、マイナンバーを活用した預貯金口座の管理についての具体的な具体的な内容や、これまでの内容に付随したTRUSTDOCKのeKYCソリューション等の解説がなされます。

     「人に優しいデジタル社会」に向けた政府の取り組みのキャッチアップを早急に進めたい方や、デジタル改革関連法案の概要を短時間で理解したいという方は、ぜひTRUSTDOCK主催の「60分でポイントを学ぶデジタル改革関連法案」セミナーにご参加ください!

     また、eKYCソリューションの導入を検討されている行政・企業の方々や、実際に導入プロジェクトを担当されている方々のために、TRUSTDOCKではPDF冊子「eKYC導入検討担当者のためのチェックリスト」を提供しております。eKYC導入までの検討フローや、運用設計を行う上で重要な検討項目等を、計12個のポイントにまとめていますので、こちらもぜひご活用ください。

    eKYC導入検討担当者のためのチェックリスト

     

     なお、KYCやeKYCの詳細については、以下の記事も併せてご覧ください。

    KYCとは?あらゆる業界に求められる「本人確認手続き」の最新情報を徹底解説

    eKYCとは?日本唯一の専門機関のプロがわかりやすく解説

     

    (文・長岡武司)

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