TRUSTDOCKのCEO千葉孝浩は「2020年で機は熟した」と断言し、「2021年は出番が増える」と宣言します。その理由を社内と社会の両方の流れから解説します。
デジタル化の推進が全産業に要請されるいま、TRUSTDOCKができることは何なのか。社会を組織を俯瞰した目から、これからのTRUSTDOCKが進む道を示すインタビューを公開します。
株式会社TRUSTDOCK 代表取締役CEO 千葉 孝浩
前身の株式会社ガイアックスでR&D「シェアリングエコノミー×ブロックチェーン」でのデジタルID研究の結果を基に、日本初のe-KYC/本人確認API「TRUSTDOCK」を事業展開、そして専業会社として独立。シェアリングエコノミー等のCtoC取引に、買取アプリ等の古物商、そして送金や融資、仮想通貨等のフィンテックの口座開設まで、あらゆる法律に準拠したKYC/本人確認をAPI連携のみで実現。様々な事業者を横断した、デジタル社会の個人認証基盤、日本版デジタルアイデンティティの確立を目指す。
機は熟した。2021年はTRUSTDOCKの出番が増える
千葉:2017年に創業してからのTRUSTDOCKは「KYC/eKYC」に一貫してフォーカスしています。2020年でいよいよ機は熟しました。「デジタルアイデンティ/デジタル身分証」を社会実装していくフェーズに入ります。準備は整っています。
――どういった点から「機は熟した」と判断したのでしょうか?
千葉:社内の体制が整い、そして社会の流れもTRUSTDOCKを求めています。2020年の社内は「採用の年」と言えるほど「社会インフラをつくる」ことに共感とそのための技術力を持った仲間が集まりました。
――エンジニアにセールス、コーポレートにカスタマーサクセス、さらには自治体担当と各領域の採用が進みましたね。
千葉:2020の3月まで7名だった組織に各領域のプロフェッショナルが集まり、12月時点で20名の組織に拡大しました。おかげで経営陣が持ちすぎていた執行タスクを整理し、経営タスクに集中させることができるようにもなっています。
――社会の流れはどういったものでしょうか?
千葉:デジタル化の流れです。強制的に非対面やオンラインでの手続きや取引や業務が増えています。行政のデジタル化のスピードも、過去にはない早さで意思決定が進んでいます。もちろんこの流れは突然現れた未来ではなく、少しずつ見えていた未来ではあります。でも、ここまで新型コロナウイルス感染症(COVID-19、※以下「新型コロナウイルス」)が世界を一変させるとは完全に予想外でした。予測していた未来の一部が急に迫り出してきたかのようです。
――2020年で「社会は変わった」と言えそうですね。
千葉:ビジネスの現場でお会いする方々のマインドセットも、完全に変わりました。新型コロナウイルス前には戻らないのではと感じています。
――そうなると、2021年は再構築が求められるのでしょうか?
千葉:そう考えています。具体的にはアナログな業務プロセスの見直しが、企業規模や業界を問わず既に待ったなしです。半リモートなビジネススタイルも、社会全体では元には戻りません。
変化の速度を今も上げているデジタル化の中で、TRUSTDOCKが貢献できる部分は大きくなり続けています。それが「本人確認」や「身元確認」部分です。例えば対面で会えなくなった相手と取引をする時に「本人確認をデジタル上で完結できるのか」は喫緊の課題です。2021年こそ、民間の身元証明機関であり、日本での唯一のKYCプロバイダーたるTRUSTDOCKの出番が増えるでしょう。
2021年は「TRUSTDOCKの輪郭が可視化される」。プロモーションにマーケティング、海外展開といった具体的な動きが本格化する
――「2020年で機は熟した」と発言されていましたが、2021年はTRUSTDOCKにとってどんな1年にする計画でしょうか?
千葉:「TRUSTDOCKの輪郭を可視化する1年」にします。創業してからの2年間は、社会の流れに合わせて具体的な動きを意図的にコントロールしていました。私たちは理想だけを描いて現状の変化を待つことはしませんから。
社内外の状況が整ったので、デジタルアイデンティティとKYCに取り組むTRUSTDOCKが、あるべき姿をきちんと表現していきます。
――昨年はKYC、本人確認と言ってもまだまだ社会的には「ニッチな領域」と思われていた印象です。
千葉:そうでしたね。今は取引や業務のデジタル化が進むことで、「KYCや本人確認は必須の領域」という認識を持っていただけるようになっています。
いよいよプロモーション&マーケティング活動も本格的に開始します。海外事業も本格化していく計画です。新型コロナであらゆる手続きや取引が非対面化するのは、日本だけの話ではありません。世界中のデジタルアイデンティ問題に取り組む必要がありますから。
――具体的な施策とその成果が見えてきそうですね。
千葉:とはいえ、「KYC as a Service」として、「KYC商社」として、私たちがラインアップとして持っておかないといけないプロダクトは揃い切ったとは言えません。引き続き、必要なプロダクトも開発していきます。あらゆるシステムに私たちのAPIを張り巡らせたいですから。
――未来を見ながらも、今に集中している印象を受けます。
千葉:私たちは「半歩先の未来を実装する」を大切にしていますからね。そして、もう一つ大切な価値観を共有しています。それは「事業は“wish”や“hope”ではなく、誰かの“want”、“need”、“must”のいずれかを満たすものであるべきだ」です。“must”の領域は既に仕組みや規制があるので、避けられがちです。でも、私たちの興味は常に“must”の領域なんです。
――なぜ敢えて“must”の領域を重視するのでしょうか?
千葉:社会が“must”の領域にある問題点の解決や改善を強く望んでいるからです。具体的には、個社ごとに行っていた本人確認という減点式の業務を巻き取り、各企業のスタッフの皆さんのメンタルヘルスの改善、そして皆さんには、もっと加点式の業務に集中していただきたいのです。
――減点式の業務を続けることは、担い手にとって大きな痛みを伴いますよね。
千葉:人間はもっと創造的な仕事に取り組むべきです。
依然として新型コロナウイルスは猛威を振るっています。その影響で超高齢社会で圧倒的な人材不足であるにも関わらず、日本のあらゆる事業体は自社の事業のオンライン上での運営やサービスの展開を24時間稼働させる必要に迫られています。少なくとも、オンライン化における本人確認領域は、私たちTRUSTDOCKが皆様に代わって、24時間365日止まることなく確認処理できる仕組みをご提供させていただきたいです。
――デジタル化には正の側面も大きいですが、同時に人材不足など社会的な問題も生まれているんですね。
千葉:デジタル化すれば何もかもが解決するわけではないですからね。デジタル化を担う人材が必ず必要になります。だから、TRUSTDOCKはデジタル化と人材不足の両方の課題を解決しようと考えています。
TRUSTDOCKはプロジェクトで終わらない。「事業を創る」メンバーと学びを止めない組織であり続ける
――2021年に入ってからも社会が変わっていく流れは緩まりそうにありませんね。
千葉:社会もTRUSTDOCKも激動の1年になるでしょう。
――昨年は組織が1年で約3倍の規模になりました。
千葉:その点から考えると、2020年は社内としては「採用の年」であり、2021年は急成長の歪みが可視化される年でもあるはずです。ただ、何も心配していないですね。技術力と経験に秀でただけのプロフェッショナルたちが集まっただけではないですから。
――どういった点から「急成長の歪み」を乗り越えられると考えているのでしょうか?
千葉:TRUSTDOCKに集まってくるメンバーは、何かの課題が発生したときに他責に陥ることなく自分で受け止めて成長できるんです。例えばセールス組織も、自分たちで2021年の展望を描くようになっています。組織としても、不確実なモノゴトに取り組む会社として、役割に関係なく全員で素直に学び成長しています。
――実際に創業期から在籍しているメンバーも成長されていますね。
千葉:そうですね。例えば創業期からテックリードだった荘野は今ではCTOです。エンジニア組織の構築や採用、そして変わらずプロダクトのコアを統括しています。荘野とペア開発していた坪井の成長も目覚ましいものがあります。本人確認サービス全体のコードオーナーを担当するようになりました。
――事業の成長もメンバーの成長も、どちらも楽しみですね。
千葉:私たちはこのメンバーとは「事業を創る」のです。例えばプロジェクトであれば入り口の流量を増やして終わりでもいいかもしれません。でも、事業であれば後工程のセールスサイクルが回っていなければ回りません。私たちはプロジェクトではないのです。短期的に完了させて解散するプロジェクトで終わらせるつもりはありません。「属人的ではなく、再現性のある仕組みを創る」という事業に取り組んでいるんです。
――事業であることを重視する理由はあるのでしょうか?
千葉:私たちが展開する本人確認サービスとデジタル身分証アプリは、いわば「デジタル上の基本的人権」と呼べるほどの影響力を持ちます。短期的に経済的利益を稼ぐ市場ではありません。だからこそ、倫理観や哲学を持って、社会インフラとしての持続的な運用体制の構築をメンバー全員と進めていきます。
編集後記
2021年はTRUSTDOCKが創業以来掲げていた「社会インフラを実装する」がいよいよ本格化していくようです。
デジタル化の要請やデジタル化を担う人材の不足など、TRUSTDOCKへの社会的要請も強まっていきそうです。組織もさらに拡大していくでしょう。そういった社内外の変化は受けながらも「半歩先の未来を実装する」、「mustの領域に注力する」、「学び続けるプロフェッショナル」といった価値観を指針に進んでいきます。
「デジタルアイデンティティの確立」を一緒に目指しませんか?2021年の活躍場所として、TRUSTDOCKをひとつの候補として考えていただければ幸いです。
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