社会インフラになるスタートアップはマチュアなチームであり、「山の登り方」を知っている〜STRIVE代表パートナー・堤達生さん、TRUSTDOCK・CEO千葉孝浩対談〜

経営

更新日: 2021/07/06

目次

    STRIVE代表パートナーの堤達生さんをお招きしたインタビューの後編は、TRUSTDOCK・CEOの千葉孝浩との対談になります。(2020年4月実施)

    <前編はこちら

    堤さんはTRUSTDOCKの何を判断材料として、投資の意思決定をしたのでしょうか。そして社会インフラになるスタートアップと、小さくまとまるスタートアップの違いはどこにあるのでしょうか。

    スタートアップ転職を検討する際のひとつの基準としてビジョン、チーム、テックとオペレーションの関係を公開します。

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    STRIVE株式会社 代表パートナー 堤 達生

    大学院卒業後、三和総合研究所、グローバルブレインを経て、株式会社サイバーエージェント及び株式会社リクルート、グリー株式会社にて、新規事業開発及びコーポレートベンチャーキャピタルの設立と運用に従事。その後、新たにベンチャーキャピタルファンド(現STRIVE)を創業して、代表パートナーに就任。

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    シードからアーリーステージのスタートアップを主な対象に、ビジネスの立ち上げから拡大をサポートするハンズオンVC。

    これまでにRetty、Five、WealthNavi、Kakehashi、KaizenPlatformへの投資実績を持つ。

    https://strive.vc/

    VCとして描いていた世界観を持っているか。VCは世界観に投資するんです

    千葉:堤さん、改めてTRUSTDOCKを支援してくださってありがとうございます。しかも資金調達のプレスを出したタイミングで「投資の神様が降りてきてくれました」とFacebookに書き込んでくれました。投資の神はまだ去ってないですよね(笑)?

    堤さん(以下、敬称略):縁起でもないことを(笑)!千葉さんと初めて話したことを今でも覚えていますよ。30秒ピッチで千葉さんがTRUSTDOCKの事業を話していました。そのときに私の投資の考え方である「自分が課題だと感じていることを解決してくれる世界観を持っていて、成熟したチームがあること」に当てはまっているとわかったんです。

    千葉:ビジョンとチームに共感してくださってうれしいです。

    堤:TRUSTDOCKは日本で唯一のe-KYC/本人確認APIサービスの事業も大切なんですけど、それ以上に最終的に志向している「デジタルアイデンティティの社会インフラ構築」に強く共感しています。

    千葉:デジタル上に自分のアイデンティティ(身元情報)があり、そのアイデンティティを使って取引が加速していく。その時代がくると信じています。

    堤:私も信じていますし、そうであるべきだと考えています。このビジョンと実現するための事業を聞いたときに「私が願っている世界観を実現させようとしているひとたちがいたのか!」と驚きました。これが「投資の神様が降りてきた」と思った1番の理由ですね。

    千葉:初めてお会いしてから投資の意思決定までの期間は短かったですよね!ビジョンに共感してくださったこともあると思うんですけど、それだけではないはずです。

    堤:もちろんです。ビジョンや世界観はWHYにあたります。「なぜその事業をするのか」です。ただ、これだけだと絵に描いた餅状態で現実は変えられません。だから、投資に踏み切るには具体性、つまり「何をやるか」のWHATが鍵を握ります。

    千葉:TRUSTDOCKもビジョンを実現するプロダクトであり続けることが重要だと考えています。

    堤:「あらゆるレギュレーションが変わり続ける世の中でも、eKYCは重要であり続ける」流れを捉えていましたよね。プロダクトが受け入れられるかどうかはマーケットの潮目を読むことと同義です。私たちVCも、「今の市場に合っているか」のタイミングを非常に重視します。

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    チームはマチュアなのか。「テックの限界」をテックを熟知しながら知っている経営陣がいるかを見ます

    堤:TRUSTDOCKがつくっている「eKYC市場」は、実は非常にややこしいマーケットです。お役所も含めたロビイング活動で調整する必要があります。つまり、テックだけでは通用しないマーケットをTRUSTDOCKはつくっていると言えます。

    千葉:TRUSTDOCKはフィンテックスタートアップ、レグテックスタートアップとタグ付していただけることも多いんですが、仰るようにテックだけですべてが解決できるマーケットとは捉えていません。

    堤:そのマーケット感覚がTRUSTDOCKの社風を生んでいる様に思います。数多く存在するようになった若者スタートアップというよりも、チームとしてマチュア(成熟)なんですよ。

    千葉:自分たちでは「大人スタートアップ」と発信しています。この言い方、マチュアでしょうか(笑)?

    堤:ちょっと検討し直しましょうか(笑)。TRUSTDOCKのコアの3人がガイアックスでテックを理解する経験を積みつつも「テックの限界」も見てきたんじゃないでしょうか。千葉さん、取締役の肥後さん、COOの菊池さんの信頼関係も含めて強いチームの印象が強いです。

    千葉:肥後と菊池とこれからも仲良くします(笑)!でも、私たちの関係まで見てくれていたんですね。どこで判断したのでしょうか?

    堤:営業に同行させてもらったり、定例MTGに参加させてもらう中で徐々にわかっていきました。アプリをつくるだけではなく、座組みや協会をつくって自分たちからルールをつくる必要もある市場という認識が一致していたりしました。

    千葉:まさに「テックだけでは通用しない」部分です。

    堤:これまでどういったルールがあって、ルールメーカーはどういった意図でつくっていたかに寄り添いながらも、自分たちが描いた世界観も実現する。既存の仕組みを知っている必要があるんですけど、近付きすぎても自分たちの存在意義がなくなってしまう。この絶妙なバランスをTRUSTDOCKは取れているように思います。

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    テックだけでは競争優位性になりません。裏のオペレーションが参入障壁になります

    千葉:スタートアップではCTOやVPoEのポジションを用意して、テックを強める動きが加速しましたよね。その中で堤さんが「TRUSTDOCKのテックのレベルは高い」と判断できたのはなぜでしょうか

    堤:レギュレーションに沿ったAPIを提供することは決して簡単ではありませんから。それを美しく提供できている点だけでも、「技術力がある」と判断できます。何よりもトラクションが物語っていますよ。大企業から急成長している会社も、あらゆる業界の会社にもTRUSTDOCKのプロダクトを提供できています。

    千葉:私たちはお客様先に行くと必ず「犯罪収益移転防止法がかかる業界ですか?」と聞きます。それくらい業界によって沿う法律が違うんですよね。法律が違えば、選ぶ技術も変わります。

    堤:1つの業界に対応するワンパターンのプロダクトではないということですよね。テクノロジーで引っ張って、オペレーションでフォローするバランスやスピード感が非常に良い状態を保てています。

    これは私だけの視点ではなく、クライアントに聞いてみてもわかりました。

    千葉:ヒアリングしたんですか?

    堤:そうです。「何に困っていて、TRUSTDOCKのプロダクトを導入することで何が解決したか」を聞きました。この回答によって、プロダクトがどれくらいの深さの課題を解決できているかがわかります。

    千葉:eKYCの問題は、クライアント企業が新規事業を推進する際に、例えばユーザー情報を取得する際に必ず解決すべき課題であるはずです。

    堤:そう、事業運営において必ず必要なプロダクトを提供しているんです。もちろん、裏では必死にオペレーションを回しているかもしれないですけど、クライアントからは「スムーズに対応してくれています」の声が届いています。オペレーションがエレガントに動いていると判断できます。

    千葉:オペレーションの美しさも、投資判断の材料にされるんですね。 

    堤:もちろんです。テクロジーはすべてを解決しませんし、すべて解決できたとすると競合企業に真似されるリスクが高いということです。参入障壁が低いということですから。

    そこで必要になるのがオペレーションです。つまり、表に見えてこない部分です。テクノロジーとオペレーションが連携できているから高い参入障壁をつくることができ、競争優位性を保つことができます。テック企業が乱立する中では、テックの裏のオペレーションで差がつくでしょう。

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    定めた山と登り方は一致しているか。「気がつくと描いた世界観になっている」登り方が相性が良い場合もあるんです

    千葉:ここまで褒めていただけるということは、そろそろ厳しいことを言われるのではと思っています(笑)。

    堤:いやいや、そんなことないですよ!敢えて言わせていただけるなら、「社会インフラをつくることを目指し続けてほしい」です。

    千葉:期待していただいてありがとうございます。弊社としても、小さくまとまるつもりはありません。

    堤:困ったら経営として縮小する判断をしなければならない場面があるかもしれないですし、例えば上場が近くなるとタイミング的には守りの時期とも考えられます。でも、初期のPMFが終わってグロースしかかるタイミングでは、思いっきりアクセル踏む。マクロの景況感に流されず、「自分たちはクライアントへどういう提供価値を与えられているのか」を考えることが大事です。

    千葉:どの業界でも必要なサービス、いわばデジタルにおける電気、水道、ガスの存在を目指します。

    堤:一つ考えていることがあります。それは山の登り方です。「デジタルアイデンティティの社会インフラ構築」を目指すにおいて、「気がつくとTRUSTDOCKが描いていた世界になっていた」状態が理想だと思います。

    千葉:「私たちはこれだけ素晴らしい世界観を持っています!そのためにこの素晴らしいアプリを使ってください」と主張することとは、反対のアプローチですね。

    堤:BtoCのサービスではないので、プロモーション費用を大量に投下して、アプリをダウンロードさせる戦略は通用しないはずです。

    この方法を取らずに「接点を増やしていき、気づいたらTRUSTDOCKのサービスを使っていた」状態をつくる方法が正しいかは、3〜5年のスパンで証明していくものです。現時点では良い方向に向かっていると思っています。

    千葉:私たちもデジタルアイデンティティの時代が必ず来ると思っていますが、「誰もが必要性を感じているわけではない」と認識しています。

    堤:現実的ですね。マーケットを正しく捉えている証拠だと思います。確かに社会が大きく変化していく中でデジタルアイデンティティは必要になるはずです。

    千葉:そうなんです。まだ課題感が顕在化していない中で強引にアプローチしても「押し付けがましいな」と思われてしまうだけです。まずは課題を既に深く感じている方に提供する。この順番を間違えてはならないです。

    堤:TRUSTDOCKはアフターデジタルにおけるインフラであってください。

    編集後記

    千葉:今日はありがとうございました。インフラになれたら、また弊社のロゴを持ってくれますか?(笑)

    堤:今日以上に諸手を高く挙げて祝福しようと思います(笑)。

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    堤さん、2回にわたってお付き合いいただきありがとうございました!前編では「スタートアップで活躍する人材のマインドセット」、後編では「社会インフラになるスタートアップの見極め方」を明らかにしていただきました。

    スタートアップの転職は確かに一大決心の側面はあるかもしれません。それでも、堤さんが投資の意思決定をする際にいくつかの基準があるように、情報を集めることはできるようです。

    今回の前編と後編の記事を参考にしていただき、一社でも多くのスタートアップに適材適所の人材が集まる一助となれれば幸いです。

    TRUSTDOCKは積極的に採用活動をしています

    TRUSTDOCKはeKYC市場を一緒につくる仲間を積極的に募集しています。

    ご興味をお持ちいただいた方は、こちらからエントリーいただけますと幸いです。

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