【後編】「お財布に身分証がいらないデジタルアイデンティティの世界」をテクノロジーの力で実現する~株式会社TRUSTDOCK・CEO千葉孝浩が描く未来~(人・組織・採用編)

経営

更新日: 2021/03/30

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    TRUSTDOCKが提供する本人確認・eKYCサービスは、金融業界や人材業界、エンタメ業界から自治体まで導入されています。

    今回はそんな業界や組織形態を超えて支持されるサービスをつくる社内に焦点を当てて、CEOの千葉孝浩がTRUSTDOCKの人・組織・採用を話します。

    話はKYCというセキュリティが重要なビジネスドメインで活躍しやすいセールス、エンジニアの特徴にまで広がりました。

    株式会社TRUSTDOCK 代表取締役CEO 千葉 孝浩 

    前身の株式会社ガイアックスでR&D「シェアリングエコノミー×ブロックチェーン」でのデジタルID研究の結果を基に、日本初のe-KYC/本人確認API「TRUSTDOCK」を事業展開、そして専業会社として独立。シェアリングエコノミー等のCtoC取引に、買取アプリ等の古物商、そして送金や融資、仮想通貨等のフィンテックの口座開設まで、あらゆる法律に準拠したKYC/本人確認をAPI連携のみで実現。様々な事業者を横断した、デジタル社会の個人認証基盤、日本版デジタルアイデンティティの確立を目指す。

    打席に立ち続けたことで、企業経営の質は上がっていった

    ――TRUSTDOCKはどのように設立されたのでしょうか?

    千葉:TRUSTDOCKはガイアックスの一事業部から、カーブアウト制度を活用して、独立しました。
    ※カーブアウト制度:申請した事業チームに対して、事業部を子会社化できる制度

    ――どのようにサービス化され、市場に広まっていったのでしょうか?

    千葉:TRUSTDOCKのはじまりはガイアックスの研究開発でした。2016年当時のガイアックスは、シェアリングエコノミーの分野にフォーカスしていました。CtoCマッチングの成約率を高めるために、「シェアリングエコノミー✖️ブロックチェーン」の技術テーマで、「オンライン上で本人確認が便利になるサービス」を研究していたんです。

    ――当時からKYC/本人確認に関するニーズは顕在化されていたのでしょうか?

    千葉:当時はブロックチェーンもまだSFで、CtoCの事業者もスケールしていないのでニーズは顕在化していたとは言えなかったです。一方で、何かを発表する度にFinTech事業者の方々からお問い合わせをいただきました。いただいた声を分析すると大きなニーズがあることを実感しました。同時に、誰も参入しようとしない、この一番複雑で面倒な本人確認の領域で、どこよりも早く誠実にやり抜こうと立ち上げのメンバーで決めて、2017年に事業部化しました。

    ――FinTech業界から注目された本人確認サービスも、いまでは様々な業種のお客さまに導入いただくようになりましたね。

    千葉:お陰さまで、人材業界やエンタメ業界といった幅広い業界のお客様にもご関心いただけるようになっています。これは打席に立ち続けたキャリアの結果だと思っています。

    ――多くの事業アイディアから、いまのTRUSTDOCKの形が生まれたと言うことでしょうか?

    千葉:そうです。決して最初からいまの本人確認サービスを展開できたわけではありません。日本でリーンスタートアップが広く伝わりはじめた頃から、愚直にリーンな事業開発する特殊部隊を編成して、ガイアックスの本社オフィスから外に出ました。恵比寿のオンラボに目黒のHUB、アパートの一室など転々としながら、いくつもリーン手法でトライしましたよ。

    ――どういった事業を試していたのでしょうか?

    千葉:例えばシニア人材のマッチングサービスと、美術教育動画のサブスクリプションサービスはProduct Fit したので、実際に開発してローンチしていました。でも、、マス以外のマーケティングチャネルで健全なユニットエコノミクスが維持しづらく、Market Fit しませんでした

    ――業種も多岐にわたるサービスに挑戦していたんですね。

    千葉:例えばWEB飲み会サービスや余り物のおすそ分けサービスなど、インタビューフェーズのOKRもクリアできない新規事業案も沢山ありました。チーム内の誰かが抱えるPain(課題)があるなら、ジャンルを問わず挑戦していました。

    ――いまのTRUSTDOCKに活きている部分もありそうですね。

    千葉:そうですね。どの事業案も泥臭くユーザーインタビューを繰り返し、KPT(Keep/Problem/Try)に沿って振り返る日々でした。場数を踏むと質問力も上がっていって、インサイトが掘れるようになり、事業の見極め判断も磨かれたと思います。

    結果はどうあれ、徐々に階段を登るリーンな立ち上げ手法は、前の学びが次のトライに活きていることが実感できます。KPI未達で縮小や撤退になったとしても、いいスイングができていれば、次の打席でヒットを打つ確率は上がります。打席に立ち続けることは、企業経営の質を上げるために重要ですね。

    セールスは、法律と技術の橋渡し役となる

    幅広い業界にサービスを提供しているTRUSTDOCKでは、どんな仲間と働きたいと考えていますか?

    千葉:ビジネスサイド、特にセールス職に関しては、特別な能力や学歴を求めているわけではありません。また、必ずしも金融や法律の知識や経験が必要なわけでもありません。法律も技術もアップデートされていく世界であり、提供するソリューションも常に新しい領域の製品になります。過去の慣習に縛られずに、柔軟に仕事のスタイルを変化できるひとの方が、TRUSTDOCKには向いているように思います。

    ――性格に関してはどうでしょうか?

    千葉:「素直で楽観的な人」が活躍しやすい環境ですね。規制産業はそもそもハードなので、レジリエンス(復元力・回復力)が高い人の方が楽しめます。

    ――法律や金融が絡んでくるので、「楽観的」よりも「緻密さ」などを求めているのかと思っていました。

    千葉:商談や導入がすぐには進まなかったり、免許や業界特有の話もあり、思い通りにいかないことも多いんです。例えば、仮想通貨の流出などのインシデントが起こるとガラリと状況が変わったり、外部環境にも振り回されます。タフな世界です。だからこそ、進みはゆっくりであっても、日々「一歩ずつ前進している」と実感できて、一つ一つのプロセスから喜びや学びを発見できるという意味で「楽観的」な性格が適していると考えています。

    ――すぐに結果が出る領域ではないんですね。

    千葉:簡単に成果が出なくても腐らずに、素振りや準備を淡々とし続け、待っていた法改正やストーリーが動き出したときに、いつでも打席に立てるようにすることが重要です。そのために、法律・技術・業務、全ての面で地道に物事を進めています。派手さはないかもしれませんが、やりがいのあるビジネスです。

    ーー営業先も幅広い業種になるので、知識の幅も広がりそうですね。

    千葉:対象領域は金融業界でいくと、銀行、証券、貸金、送金に仮想通貨、企業規模だと大企業からスタートアップまで幅広くFinTech領域全般が対象です。その他、本人確認やKYC業務が必要なオンラインサービスはすべて貢献できる領域になります。KYCのマーケットサイズは日々大きくなっており、当初の想定以上に拡大し続けています。思わぬ事業者からお問い合わせがきたりもします。

    ――学びと気付きが多そうですね。

    千葉:さらには、お客さまの新規事業に携わることが多いので機密性が高い仕事と言えます。そういう点では、信用と信頼を重視するひとがフィットするでしょう。

    ――法律が絡んでくることも、仕事の特徴のひとつですね。

    千葉:そうです。省庁とのコミュニケーションがあります。様々な業界のビジネスモデルや省庁の考え方など、物事を多面的に知れるので、世の中の構造の理解が深まります。大局を掴む感度が上がります。

    ――「数を追うセールス」で成果が出る性質ではなさそうです。

    千葉:エリアごとにローラーする飛び込み営業や、一日中テレアポし続ける手法は特に意味がありません。1社1社に、きちんとソリューションを紹介するスタイルです。APIの世界は、資料だけ見せても分かりづらい領域なので、対面やWEB会議などで、必ずご説明の機会をいただいています。相対するカウンターパートも、コンプライアンス担当の責任者やCTOが多いです。

    ――直接やり取りをするお客さまの職種も幅広いですね。

    千葉:私たちは、法律や規制の話とAPIなどの技術的な話、そして実際の現場の業務の話までさせていただいています。規制に対応しつつ、どうスムーズにオンラインサービスに落とし込むかの橋渡し役になって、一緒に汗をかきます。

    ――顧客と長く関係をつくりたいひとに向いている営業職ですね。

    千葉:それに、金融機関のお客様を例にさせていただくと、営利企業でありながら社会的な側面もある企業です。TRUSTDOCKのサービスも自然と公共性が求められます。自社の利益のためというよりも「公共財として、社会インフラとしてのTRUSTDOCKは、どうあるべきか」という意識が強いです。個社ごとの部分最適ではなく、社会全体の全体最適な思考で進めています。

    エンジニアは半歩先の未来を見据えて、社会インフラをつくる

    ーーエンジニアに関しては、どういった仕事の仕方になるでしょうか?

    千葉:性格としてはセールスと同じく、素直で楽観的な人」が向いています。開発するシステムは、タフでセキュリティが重要です。法律要件を満たすことはもちろん、世界中のエンジニアが使いやすいAPIの仕様設計、大量のトランザクションを捌くインフラ構築、実際の本人確認業務を行うスタッフが使う業務ツールの絶え間ない改善、eKYCでCVRが下がらないようにするUI/UXのブラッシュアップなど、あらゆる部分を開発し続けます。

    ――多岐にわたる仕事ですね。

    千葉:現状のデジタル環境で最適な技術を取捨選択しつつ、安全に社会実装できるソリューションを開発することを目指していますからね。そのため、エンジニアも含めた全メンバーで法律を読み合わせする場を設けたり、全員が何をつくるかの解像度を上げた上で、どうつくるかを議論しています。

    ――まさにRegTech(レグテック)なシステムですね。

    千葉:法律とは切っても切り離せない関係ですよね。メンバーに金融出身者はいないので、業界を知らない分、ゼロベースで「この法律はなぜ制定されているか」などの背景や歴史も含めて理解するように努めています。そして、今後はどの未来に向かっているのかを念頭に置き、プロダクトの仕様設計に反映して開発しています。重視していることは「いつも半歩先の未来を予測しつつ、現在をつくる」です。

    ――「現在」に焦点が当たっているように聞こえます。

    千葉:そうです。PoCを実施することがゴールならファンタジーでも構わないのですが、実運用するにはSFの世界から現実世界に降りないといけません。私たちの理想はありつつも、現実解をつくることが重要なんです。社会が次の概念を受け入れられる土壌ができたら、次の姿を可視化していくスタイルですね。

    ――現実的なスタイルです。

    千葉:技術的に実装可能だからといって、「この世にまだない画期的なサービスをつくろう」とか「これが本質的にはあるべき姿だ」といった思想では、プロダクトを開発していません。デジタルアイデンティティ・KYCの分野では、いくつか法改正が行われているストーリーがあり、その複数の物事の過去と現在と未来のタイムラインを並行して観察し、準備を進めています。本気でグローバルな社会インフラをつくりたい、エンジニアの仲間がどんどんジョインしてくれています。

    ライフステージや性別を問わず、活躍し続ける組織をつくる

    ーー最後に、TRUSTDOCKとしては今後どんな組織にしていきたいとお考えですか?

    千葉:ボードメンバーはそれぞれの得意分野が違うので、各自がやるべきことをやるチームで、筋肉質な動きをしています。また全員が結婚して所帯を持っており、子どもがいるメンバーも多いので、ライフステージや性別を問わず、どこにいても働ける組織をつくっています。

    ――生活も大切にすることでメンバーと会社の長期的な発展と成長につながりそうですね。

    千葉:家族がいることで、私たちは身分証や本人確認にまつわる課題を実体験として認識しやすくなるんです。例えば、母親の立場から母子手帳などで本人確認のわずらわしさを感じたりと、社会課題を感じています。問題を見つけて、自分たちに解決する力があるんだから「放っておけない」と考えるんですよね。

    ――社会に広く貢献できますね。

    千葉:TRUSTDOCKのビジネスドメインはKYCというセキュリティが重要なものです。できるだけ物理環境を問わず堅牢なKYCの社会インフラを構築したいです。世の中のペーパーレスや業務効率化を推進する企業としては、自社の組織もフルデジタルに近づけたいですね。

    ――ビジネスドメインと組織のあり方が一致しています。

    千葉:組織で実践することで、サービスにも説得力が出ますよね。私たちは社会の黒子であり縁の下の力持ちです。TRUSTDOCKのインフラの上で、様々な●●テックが生まれていけばうれしいです。将来的には、例えば法律を知らない学生でも、TRUSTDOCKと連携したら、自然と法令遵守したサービスがつくれている状態が最高ですね。それがまさにRegTech(レグテック)であり、次世代のイノベーションの土壌になると考えています。
    「身分証のいらない未来」をつくって、その土壌で私たち自身も様々なサービスを立ち上げていきます。

    編集後記

    TRUSTDOCKはすぐに立ち上がった会社ではなく、千葉が「打席に立ち続けた結果」として生まれました。

    そのときの仮説検証、ユーザーインタビューなどの努力の結果、「半歩先の未来を予測しつつ、現在をつくる」といったいまのTRUSTDOCKにつながる考え方も獲得したようです。

    TRUSTDOCKには「社会が次の概念を受け入れられる土壌ができたら、次の姿を可視化していくスタイル」に共感した仲間が集まっています。引き続きボードメンバー、メンバーが一丸となって社会インフラをつくってまいります。

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