オンライン名刺の先に見据える、デジタルIDとしての役割。Sansan × TRUSTDOCK が目指す世界とは

連携対談

更新日: 2020/11/12

目次

    企業の取引担当者の在籍確認問題に対して、新しい法人在籍確認サービス開発の協業で合意。

    今回は、TRUSTDOCKとのAPI連携を発表したSansan株式会社の新サービス「Smart Entry by Eight オンライン名刺」(以下、Smart Entry)について、開発を推進されたお二人とTRUSTDOCK代表・千葉による対談の様子をお送りします。

    連携サービス:Smart Entry by Eight オンライン名刺とは

    Smart Entryとは、イベントの来場登録や訪問の受付時などで求められるビジネス情報の入力を、QRコード撮影だけで、手間なく正確に行うことができる新世代のエントリーフォームシステム。

    Smart Entryを利用することで、名刺の提出や情報の手入力といった従来の非効率な作業が削減され、またSmart Entryを起点として様々なサービスと連携することで、オンラインでは実現できなかった名刺の活用が可能になり、自分の名刺情報をあらゆるサービスへと効率的に登録することができる。

    Smart Entry × TRUSTDOCKの連携イメージ

    TRUSTDOCKが提供するeKYC身分証アプリ&APIと、Sansanが提供するSmart EntryのAPIを連携させることで、法人契約時の取引担当者の本人確認と、その方の在籍確認をワンストップで提供することを想定しています。

    これにより、例えば各種BtoBプラットフォームでの法人登録時や、継続的な取引担当者の在籍確認、及び非対面・オンラインでの法人契約を伴う幅広い取引において、取引相手の身元確認を効率化できます。

    対談のお相手

    写真右:林佑樹[Yuki Hayashi]Sansan株式会社 執行役員 新規事業開発室 室長

    写真左:松尾佳亮[Keisuke Matsuo]Sansan株式会社 新規事業開発室 兼 Sansan事業部 マーケティング部マネージャー 

    最初から名刺情報をデジタル化するという考え

    千葉:今回の連携の発表をしてから、色々な業界・企業からお問い合わせが来ています。そのご報告は後ほどするとして、まずは今回、貴社がSmart Entry開発に至った背景や経緯を教えてください。

    林:Sansanでは「出会いからイノベーションを生み出す」をミッションに掲げており、名刺に書かれているビジネス情報をいかにデータとして資産化し、そこからイノベーションを生み出せるか、を追求して参りました。

    今年は新型コロナウイルスが発生し、名刺自体は流通しにくくなりましたが、結局のところ、人と人が出会った時には何かしらの情報交換はなされるものです。それ故に、名刺という形そのものは変われど、オブジェクト自体は残り続けるだろうと思っています。

    そんな中、これまでは名刺をユーザーにスキャンいただいて、Sansanがデジタル化するという流れだったわけですが、そもそも最初からデジタルでやりとりすれば、もっとスムーズに情報交換ができて、例えばWebフォームの入力なんかもいらなくなるよね、と。今の時代だからこそ、名刺という媒体から離れてもいけるのではないか。

    そんな流れから、Smart Entryのサービスが出来上がっていきました。

    松尾:もともとは当社のコーポレートイベント「Sansan Innovation Project」で、名刺を利用した来場登録ができないか、という構想があったこともSmart Entry開発のきっかけになっています。名刺に向き合っているSansanならではのエントリー体験をしていただきたいよね、ということで、事前登録の段階で名刺画像を登録し、会場でその名刺を撮影したらそのまま来場者登録がなされるという仕組みを考えていました。

    その時はそのイベント専用のシステムとしてのみ検討していましたが、「名刺情報はその他のイベントエントリーにも使える」という発想になったわけです。Smart Entryはこの発想を一部実現したものと言えます。

    千葉:開発自体はコロナ前から進めていたのですか?

    林:いえ、コロナ後ですね。5月から約2ヶ月間で作り上げました。

    名刺情報が、一種のIDのようなものになる可能性を感じている

    松尾:今回の連携のきっかけは貴社からのお声がけだったと思いますが、どんなきっかけだったのでしょう?

    千葉:僕らは個人の本人確認はもちろん、法人の本人確認を行なっていまして、その中で“本人の在籍確認”というものが、一つの確認の塊としてあるわけです。現状だとそれに対しては、委任状を提出するくらいしか方法がなく、より有効的なソリューションの可能性を感じて、お話をさせていただきました。

    林:私たちとしても、名刺という正しかろう情報が今後デジタルシフトしていく中においては、一種のIDのようなものになる可能性を感じています。

    ただし名刺単体で、例えば本人確認が完了できるものではありませんが。

    千葉:TRUSTDOCKとの連携提案に対して、最初にどんな印象を持たれましたか?

    林:率直にまず、すごく有用だと感じました。名刺アプリEightのユーザーに新しい価値を提供できるな、と。

    あとは、昨今のDXトレンドに付随して、ユーザーは自分の情報の取り扱いにより敏感になっていると感じています。だからこそ、KYCを専門にやっているTRUSTDOCKとの連携は必然だとも感じました。

    あえて、QRコード読み取り型のUIに設計

    千葉:実際にSmart Entryの画面を見てみましたが、エレガントなUIですよね。開発にあたって、どんなことに苦労されましたか?

    林:Smart Entryって、QRコードを撮影するというところからスタートします。本質的には、わざわざ撮影なんてさせないで、ボタンが一番いいんですよ。

    でも、オンライン名刺というものをまだ多くのユーザーが持っていないのが現状です。だから、オンライン名刺を持っていない人に向けては、名刺を撮影するというところにいかに最短距離で行けるか、を考える必要があります。一方で既にオンライン名刺を持っている人に向けては、いかにストレスなく登録処理を進めることができるか。この二つを考えながら設計するのが大変でしたね。

    10年後にオンライン名刺がちゃんと普及していれば、QRコードはなくなると思います。

    <Eightのオンライン名刺を使っている場合のオペレーション>

    <Eightのオンライン名刺を使っていない場合のオペレーション>

    松尾:Smart Entryではカメラを起動させているじゃないですか。ボタンでも起動できたわけですが、カメラにした理由は、必ず手元にスマートフォンがある状態を作りたかったからなんです。

    離脱率が高まりそうな導線なので、相当悩みましたよ。でも、Eightを持っていないユーザーが使うケースを考えたときに、「参加するにはSmart Entryで登録するしかない」といったイベントからユーザーが広がっていくということを見越して、このような仕様にしました。

    林:逆に貴社とは、QRコードの方が相性が良いと感じています。

    千葉:僕たちもデジタル身分証アプリを提供しているわけですが、アプリだからこそ実現できる機能を提供していたりしますね。例えばICチップの読み取りなどはパソコンではできませんし、マイナンバーカード読み取りには、スマホ以外だとパソコンにカードリーダーを取り付ける必要があります。カードリーダーを持っている率なんて、スマホ所持率と比べたら格段に低いので。

    いずれにせよ、今は過渡期なんだろうなと思っています。

    リファレンスチェック文脈での活用を模索したい

    松尾:今回の連携を発表したプレスリリースへの反響は、その後いかがですか?

    千葉:色々とお問い合わせをいただいている状況でして、例えば金融機関からはダイレクトに法人の本人確認で使えないかとの確認がありました。

    あとは人材業界からも、転職の時などの個人のリファレンスチェックの文脈として使えないかという声がありました。スナップショットの現職情報だけではなく、履歴としての職歴も参照できないものかと。

    林:その辺りは難しいんですよね。利用者に不利になるような仕組みにならないようにする必要がありますよね。ユーザーが透明性を持ってオプトインするという世界観が作られて行けば良いとは思いますが。

    千葉:貴社の方への反響はいかがでしょう?

    松尾:貴社のように「一緒に連携したい」という企業からのお問い合わせと、あとはSmart Entryの機構をイベント運営で使いたいという声も多かったですね。

    イベントって、例えばホワイトペーパーのダウンロードなどと比べて、登録される情報がプアになりやすい性質があります。つまり、不正確性が高まるということです。だからこそ、名刺情報を最初から登録できるのは魅力的だということです。

    早速、大手イベント会社での実績が出てきている状況です。

    SNSのID以上免許証情報未満のような立ち位置を目指す

    千葉:先ほど過渡期だって話をしましたが、そもそも「名刺」ではない名称の方が良いのかもしれませんね。何になるんでしょうね?

    林:「ビジネスID」とか方が正しいかもしれませんね。

    松尾:SNSのID以上免許証情報未満、のような立ち位置になれればいいなと思っています。

    千葉:なるほど。最後に、今回の連携やSmart Entryに興味がある方々に向けて、一言メッセージをお願いします。

    松尾:本質的な出会いを提供する為にも、オンライン名刺が便利なものだということがもっと広まれば良いなと思っていて、そういう中でこのSmart Entryが貢献できたらと思っています。

    林:会社が、「林という人間はSansanにいるからね」と対外的に発表する唯一のものが名刺だと言えます。それがデジタル化するとはどういうことなのかというと、そこに何らかの方法でトラストの情報があってほしいわけです。つまり、Sansanが発行した本物のものだよという証明を、テクノロジーを使って示したいということです。

    そこにDMP(Data Management Platform)の箱として、給料情報や在籍情報が溜まっていけば、TRUSTDOCKをはじめ様々なサービスを経由して、市役所や保育園など、外部に繋げることだってできるわけです。

    眠った情報を集約して使うというところに、私たちの価値があると思っています。

     

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     TRUSTDOCKでは、“本人確認のプロ”として企業のKYC関連業務をワンストップで支援するAPIソリューションを提供し、またデジタル身分証のプラットフォーマーとして様々な事業者と連携しております。eKYCソリューションの導入を検討されている企業の方々や、実際に導入プロジェクトを担当されている方々のためにPDF冊子「eKYC導入検討担当者のためのチェックリスト」を提供しており、eKYC導入までの検討フローや運用設計を行う上で重要な検討項目等を、計12個のポイントにまとめていますので、ぜひご活用ください。

    eKYC導入検討担当者のためのチェックリスト

     

     なお、KYCやeKYCの詳細については、以下の記事も併せてご覧ください。

    KYCとは?あらゆる業界に求められる「本人確認手続き」の最新情報を徹底解説

    eKYCとは?日本唯一の専門機関のプロがわかりやすく解説

     

    (文・長岡武司)

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