ブロックチェーンを活用したデジタル市民証とeKYCを連携!3社の強みを活かして「e-加賀市民制度」の公的個人認証を推進

連携対談

更新日: 2024/10/10

目次

     TRUSTDOCKでは、日々様々なパートナーに支えられながら、国内eKYCの普及に向けて取り組みを進めています。

     今回は、石川県加賀市が進める、住民票の住所が加賀市以外でもネット上の市民になれる「e-加賀市民制度」にける公的個人認証の導入をご一緒したソニーグループ内のweb3スタートアップのコーギア株式会社様と株式会社NSD様に、TRUSTDOCKとの協働についてお話を伺いました。

     

    この記事のポイント

    • ブロックチェーンのメリットを活かしたデジタル市民証の取り組みのご紹介
    • TRUSTDOCKのアプリ・APIを使った開発のメリット
    • ブロックチェーン技術とeKYCの今後の展望

    担当者プロフィール

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    (写真左)コーギア株式会社
    開発グループ マネージャー
    小野 優嗣[Yuji Ono]

     

    (写真中央)株式会社NSD
    執行役員 コンサルティング事業本部 SI戦略事業部長
    田村 秀一[Shuichi Tamura]

     

    (写真右)株式会社NSD
    イノベーション戦略事業本部 市場開拓事業部 広域プロモーション営業推進部 課長
    川口 貴吉[Takayoshi Kawaguchi]

    プロジェクト概要

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    e-加賀市民制度は、観光、ワーケーション、多拠点生活などで加賀市を訪れる関係人口を増やすことを目的に、電子市民であるe-加賀市民に、加賀市が様々な行政サービスを提供する制度です。

    e-加賀市民は、e-加賀市民証となるオリジナルNFT(無料の通常版と、有料の限定版)を専用サイト(e-加賀市民NFT販売サイト)から取得/購入できます。限定版を購入したe-加賀市民は、該当NFTを市内協力店舗等で掲示することで割引サービス等を受けられることに加え、NFT限定版独自のサービスを受けることもできます。また、地域の特産品や現地のサービスを受けることのできる商品NFT(配送型と体験型)も、同サイトでの購入が可能となる予定です。

    e-加賀市民NFTは、マイナンバーカードを用いた公的個人認証によるWeb3ウォレット管理機能を付帯したものとなっています。e-加賀市民NFT販売サイト上でのマイナンバーカード認証、及び市内協力店舗でのマイナンバーカード認証の際に、TRUSTDOCKのデジタルIDアプリ(公的個人認証サービス利用)をご活用いただいています。

    なお、コーギア様は本制度開始までの全工程を支援し、戦略策定、e-加賀市民NFTサイトやe-加賀市民証NFTなど各種サービスの企画とシステム設計・開発、各実証実験の企画・運営等を担当されました。またNSD様は、市内協力店舗がマイナンバーカード認証を行う際のiOSアプリの開発を担当されました。

    e-加賀市民証を継続的に提供するプラットフォームとしてブロックチェーン技術に期待

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    --今回、どのような経緯で加賀市様と取り組みをご一緒することになったのでしょうか?

     

    小野:もともと加賀市様が構想されていた「e-加賀市民制度」の構築を進めるとなった際に、まずは実証実験をやるということでプロポーザルが出されました。そこに弊社が応募したのが最初のきっかけです。結果、コーギアを採択いただいたわけですが、現在に至るまで構想の上流工程からシステム開発の部分まで、全工程をご支援させていただいています。

     

    --今回の取り組みの中で、市民証をNFTで設計されている点が非常にユニークだと感じます。ブロックチェーンによるトークンを活用することになった理由と、そのメリットについて教えてください。

     

    小野:理由については端的にお伝えすると、プロポーザルの中にNFTを提案に組み込むことが含まれていたからです。背景としては、加賀市様では2018年に「ブロックチェーン都市宣言」をされており、また2022年には「デジタル田園健康特区」にも指定されるなどして、デジタルを活用した街づくりを強力に推進されています。今回の制度構築にあたっても、NFTを活用してエストニアのe-Residencyのような取り組みができるのではないかという期待があったというわけです。

    メリットについては、一般的なブロックチェーン活用のメリットと重なりますが、今回の実証は加賀市のサービスを利用する人や関係人口を増やすことを目的に実施するもので、当然ながら中長期的なスパンでの運用設計が必要になります。e-加賀市民証を長期に亘って継続的に提供するためのプラットフォームとして、ブロックチェーンはフィットするソリューションになり得ると感じています。

    ホワイトレーベルで直感的な本人認証アプリで組み込みが簡単

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    --NSD様では、主に地域事業者によるマイナンバーカード読み取り用のiOSアプリ開発を担当されているかと思います。具体的にどのようなものなのかを教えてください。

     

    田村:e-加賀市民証をお持ちの方が何かしらの加賀市サービスを利用する際に、協賛している店舗等の事業者側でマイナンバーカードによる認証が必要になるのですが、その認証のためのiOSアプリになります。

     

    --TRUSTDOCKの仕組みを実装するにあたっての感想も教えてください。

     

    田村:実は、あまり困ったことはありませんでした。NFT側のサービスとの通信はAPIで、TRUSTDOCKさんのサービスもSDKとAPIという形で提供されていたので、最初は不安もありましたが、マニュアルを読みながら開発を進めていき、想定以上にあっさりと組み終わりました。実装が容易だったため、UXや運用設計の検討に時間をかけることができました。

    また実装面以外にも、例えばアプリケーションからマイナンバーカードにアクセスするために必要な手続き等もサポートしていただき、そういった知見を持っている企業が開発をガイドしてくれるのは非常に有難いと感じました。

     

    小野:私たちコーギアでは、e-加賀市民NFT販売サイトの画面上でのマイナンバーカード認証を伴うユーザー登録の仕組みを作っていったのですが、TRUSTDOCKさんを採用したポイントの一つが、どの企業の色にも染まれるホワイトレーベルの本人認証アプリがあるという点です。アプリの開発って、相応の工数とコスト、時間がかかるので、どの企業もできることならばやりたくありません。そこがあらかじめ用意されているというのは非常に大きかったです。

    また、弊社開発エンジニアからは、SDKもシンプルに作ってもらったので、ドキュメントを読み込まなくても直感的に操作できたとの声が上がっています。あとは、テスト環境をしっかりとご用意いただいていたのも有り難かったです。本番環境への切り替え/移行がシンプルでシームレスだったので、すごく楽でしたね。

     

    川口:また、プロジェクト期間中に令和6年能登半島地震が発生してしまいました。被災された皆様、ご家族、関係者の皆様に対して心よりお見舞い申し上げます。本プロジェクトにおいても、スケジュールは懸念事項となりましたが、プロジェクトメンバーの臨機応変な対応によって、当初の予定通りにリリースすることができました。そこには、TRUSTDOCKのサービスが、eKYCの円滑な実装に、大きく貢献できたとも感じています。

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    時間をかけたくない部分をTRUSTDOCKが全部巻き取ってくれるのが有難い

    --現在のプロジェクト状況について教えてください。

     

    小野:実は最近、加賀市様が「加賀市web3課」を立ち上げまして、開業ワンストップセンター等、各種オンライン開業相談ができるようになりました。このように、行政側でのオンライン上でできることがどんどんと増えているので、e-加賀市民の皆様に対してできることも増やしていこうとしているところです。

     

    --今回のプロジェクトを経て、今後TRUSTDOCKに期待することを教えてください。

     

    田村:今回TRUSTDOCKさんにお願いした「認証」の部分は、単純なID/パスワードのクレデンシャル以外にも、生体情報やパスキー他要素を組み合わせて認証強度を高めるといった形で、今後ますます重要になってくると思います。これらはあるシステムの開発時に本来求める機能の外に出しやすい機能だと考えているのですが、逆に言うと、開発プロジェクトの中では時間をかけたくない部分でもあります。そこをTRUSTDOCKさんが全部巻き取ってくれるのは非常に有難いと感じています。

     

    川口:営業サイドとしては引き続き、マイナンバーカードを使ったeKYCの市場開拓に向けてご一緒していきたいと考えています。

     

    小野:今後eKYCを実施するシーンは増えていくでしょうから、それらをバラバラに運用するのではなく、共通のID基盤で管理する。そういった話において、TRUSTDOCKさんにも知見をいただければと思っています。

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    今後はRWA領域を本気で獲りにいきたい。eKYCも重要な要素。

    --最後に、プロジェクトを超えて、会社として中長期的にチャレンジされたいことを教えてください。

     

    川口:社会全体でマイナンバーカードがようやく定着してきており、健康保険証が一本化されるなど、利便性も高まってきております。NSDとしては、今まで誰も作らなかったものを作れるようになってきたと期待感を持っており、マイナンバーカードを使ったeKYC領域を積極的に推進すべきと捉えています。

     

    田村:私の事業部は、実は2024年7月にグループ会社の吸収合併でできたところなのです。外部からNSD本体に加わった立場としては、もともとNSDが持っている強みの“外側”を狙っていきたいなと考えています。

     

    小野:コーギアとしては明確にRWA(Real World Assets)領域を進めていきたいと考えています。地域の関係人口を増やすソリューションとして、e-加賀市民証は一種のメンバーシップ的な仕組みだと思うのですが、ヒトが来て地域にモノがあると考えた時に、残るはカネなんですよね。お金を回す必要があるわけです。RWAはそこに対するソリューションになり得ると思っていまして、クリプトの世界にあるお金を活用して地域の活性化に繋げられたらと考えています。RWAが普及した世界では、換金等のシーンにおいてeKYCは必要不可欠になる要素で重要な位置づけになってきます。

    RWA領域については、これから実際のユースケースが色々出てくると思いますので、先頭を切ってやっていきたいと考えています。

     

    --本日はありがとうございました!

     

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     TRUSTDOCKでは、“本人確認のプロ”として企業のKYC関連業務をワンストップで支援するAPIソリューションを提供し、またデジタル身分証のプラットフォーマーとして様々な事業者と連携しております。eKYCソリューションの導入を検討されている企業の方々や、実際に導入プロジェクトを担当されている方々に向けてはPDF冊子「eKYC導入検討担当者のためのチェックリスト」を提供しており、eKYC導入までの検討フローや運用設計を行う上で重要な検討項目等を計10個のポイントにまとめていますので、ぜひご活用ください。

    eKYC導入検討担当者のためのチェックリスト

     

     なお、KYCやeKYCの詳細については、以下の記事も併せてご覧ください。

    ▶︎KYCとは?あらゆる業界に求められる「本人確認手続き」の最新情報を徹底解説

    ▶︎eKYCとは?オンライン本人確認のメリットやよくある誤解、選定ポイント、事例、最新トレンド等を徹底解説!

     

    (文・長岡武司)

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