外国人雇用で気をつけるべきことを、本人確認(eKYC)/在留資格確認の観点から解説

法/規制解説

更新日: 2021/07/21

目次

     製造工場やファーストフード店、コンビニエンスストアなど、様々な業種業態で外国人雇用が加速しています。それもそのはず。厚生労働省が2021年1月に発表した「外国人雇用状況の届出状況(平成20年10月末現在)」によると、外国人を雇用している事業所数及び外国人労働者数は、2007年に届出が義務化されて以来、一部時期を除いて年々過去最高の数値を更新し続けています。(ただし対前年増加率は、新型コロナウイルスの影響もあり、事業所数は前年12.1%から1.9ポイント減少、労働者数は前年13.6%から9.6 ポイントの大幅な減少となっています)

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    画像:在留資格別外国人労働者数の推移(厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況(平成20年10月末現在)」より)

     これに併せて増えているのが、雇用側および被雇用側における法令遵守にまつわる問題です。本記事では、急増する外国人雇用で気をつけるべきことを、本人確認(eKYC)及び在留資格確認の観点から解説します。

    何が問題なのか?

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     外国人雇用にまつわるトラブルは今に始まった事ではないにせよ、ここ数年で特に増加している印象です。つい先日も、不法残留していた外国人が従業員として働くのを手助けしたとして、法人となるデリバリー大手とその幹部2名が、出入国管理法違反の疑いで書類送検されたことが発表されました。

     なぜこのようなことが起きているのでしょうか。少なくとも上記の件については、運営会社が被雇用者である外国人の在留資格を適切にチェックしていないことが原因として挙げられます。もしかしたら、密入国者のようにそもそも日本での滞在が許可されていない外国人かもしれませんし、入国は許可されたものの在留資格として働くことが許可されていないのかもしれません。また上記の事件とは異なりますが、在留資格として働くことが許可されたとしても、法定就業時間を超えて働いている場合や、専門的な技能を習得するための就労ビザを持つ外国人が単純労働をする場合も考えられます。

     このように外国人雇用を進める場合は、何がOKで何がNGなのかを、法令に準拠する形で理解・運用する必要があります。ちなみに、密入国者や働くことを許可されていない外国人の就業を未然に防止するための施策の一つが、eKYC(本人確認)となります。これについては後述します。

    復習:在留資格の基礎知識

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    東京出入国在留管理局

     ここで改めて、在留資格にまつわる制度や決まりについて、ポイントをお伝えします。

     在留資格とは、一言でお伝えすると「日本国へ合法的に滞在するための、外国人向けの入管法上の資格」です。これは出入国管理及び難民認定法、通称「入管法」に準拠した制度で、法務省の入局管理局が所管となります。

    ビザとの違い

     よく在留資格と間違われるのが「ビザ(査証)」です。ビザとは、外国人が上陸審査をする時に使用するもので、日本国以外の国にある日本大使館や領事館が、パスポートの有効性の確認をした上で、日本への入国を推薦するものとして発給します。つまり、ビザの所管は外務省になり、在留資格を与えるための推薦状の役割として存在するわけです。

     ビザの発給は出国前で、在留資格の付与は入国時に行われる「上陸審査」となるので、ビザが発給された=在留資格が付与される、ということではないことが、注意点となります。

    活動型類型資格と地位等類型資格

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    画像出展:在留資格一覧表(JETROホームページより)

     在留資格には、就労に制限がある「活動型類型資格」と、就労に制限がない「地位等類型資格」があります。

     活動型類型資格には「外交」「公用」「教授」「芸術」「宗教」「報道」「高度専門知識」「経営・管理」「法律・会計業務」「医療」「研究」「教育」「技術・人文知識・国際業務」「企業内転勤」「介護」「興行」「技能」「技能実習」「特定技能」「文化活動」「短期滞在」「留学」「研修」「家族滞在」「特定活動」があります。

     また地位等類型資格には「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」があります。

     各在留資格ごとに、日本で行うことができる活動や在留期間、該当例が定められています。詳細についてはこちらの法務省資料をご覧ください。

    在留カードとは

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    在留カードサンプル(表面)

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    在留カードサンプル(裏面)

     在留資格が3ヶ月以上にわたる場合に交付される証明書が「在留カード」です。在留カードには、氏名、生年月日、性別、国籍・地域、住居地、在留資格、在留期間、就労の可否、顔写真(16歳以上のみ)などが記載されています。またカードの内部には偽造等の防止のためにICチップが埋め込まれており、上記事項の一部ないしは全部が記録されています。こちらは、後述する通り、eKYCを実施する上で重要なポイントだと言えます。

     なお、この在留カードには有効期限があり、永住者でない外国人は在留期間の満了日までとなっています(16歳未満の場合は、在留期間の満了日もしくは16歳の誕生日のいずれか早い方)。ちなみに永住者については、在留カード工夫から7年後が有効期限となります(16歳未満の場合は、16歳の誕生日まで)。

    参考:在留資格認定証明書とは

     在留資格認定証明書とは、外国人が「短期滞在」以外の在留資格で日本に上陸しようとする際に、本人の在留資格が上陸条件として適切かを証明するために、法務大臣が発行する証明書となります。対象となる外国人は、在留資格認定証明書が発行されてから3ヶ月以内に入国をする必要があります。

     海外在住の外国人を社員として日本に呼び寄せる場合などが考えられ、ビザの発給に係る審査に使われるものとなります。一点、在留資格認定証明書が交付されているからといって、ビザが必ず発給されるというわけではありませんので、注意が必要です。

     いずれにせよ、基本的には日本入国までに使うものとなります。

    参考:特別永住者証明書

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    特別永住者証明書サンプル(表面)

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    特別永住者証明書サンプル(裏面)

     特別永住者証明書とは、特別永住者の法的地位等を証明するものとして、法務大臣が交付する証明書です。紙ではなくカード型の書類となっており、氏名、生年月日、性別、国籍・地域、住居地、有効期間の満了日、顔写真(16歳以上のみ)などの情報が記載されています。

     なお、特別永住者が従来より所持していた「外国人登録証明書」については、一定の期間、みなし再入国許可による出国や市区町村で行う住居地届出手続等において、特別永住者証明書とみなされます。

    外国人労働者の雇用で注意すべきこと

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     次に、外国人労働者の雇用する上で代表的な注意ポイントをご説明します。

    就労が認められている外国人だけを雇用する

     先ほどご覧いただいた通り、それぞれの在留資格には就労の可否についての制限があります。例えば「文化活動」の在留資格で日本に入国した外国人は、原則として就労が認められていないので、アルバイトであっても雇用してはいけないことになります。

     仮に不法就労となった場合は、該当の外国人本人に強制退去などの処分が課せられるのはもとより、雇用した会社サイドにも、3年以下の懲役または200万円以下の罰金という罰則規定が適用されることになります。在留カードや就労資格証明等を確認する必要があります。

    定められた範囲か

     就労が認められる在留資格には、それぞれ「本邦において行うことができる活動」が定められています。例えば「技術・人文知識・国際業務」においては、以下のように定められています。

     

    「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学,工学その他の自然科学の分野若しくは法律学,経済学,社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動(一の表の教授の項,芸術の項及び報道の項の下欄に掲げる活動並びにこの表の経営・管理の項から教育の項まで,企業内転勤の項及び興行の項の下欄に掲げる活動を除く。)」

     

     つまり、業務の内容が大学等で勉強した内容などと関係していることが申請を許可する条件となっているので、関連性がないと判断されると不許可になる場合があるので、注意が必要になります。

    虚偽や捏造がないか

     もう一つ注意すべきは、在留カードや就労証明書等の捏造やなりすまし等です。カード面の目視確認だけでは、偽造を見抜けないリスクがあることから、本来的にはカードに埋め込まれたICチップを読み込む作業が、より安心安全な雇用環境の創出につながると言えます。

    在留カードでの本人確認時における「在留資格の確認」オプション

     以上のような背景から、TRUSTDOCKではeKYCソリューションとして、在留カードでの本人確認時に「就労制限の確認」と「在留資格の確認」を提供しています。

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     これにより、オンラインでの人材紹介・派遣サービスや短期バイトサービス、ギグ・エコノミーな人材マッチングプレイスなどにおいて、外国人労働者の「身元確認」「在留資格」「就労制限」の3つの雇用契約時の就労要件が24時間365日オンラインで確認可能になり、煩雑になりがちな外国人労働者の本人確認業務とその管理プロセスを、デジタル化できるようになりました。eKYCの活用イメージについては、以下の動画をご覧ください。

    失効情報照会

     また2021年夏からは、上記に加えて「失効情報照会ページの確認オペレーション」も追加提供しています。これは、出入国在留管理庁による「在留カード等番号失効情報照会」ページの機能を活用するもので、外国人より提示された在留カード等の券面に記載された在留カード番号、もしくは在留カードの有効期間を使って、対象者の在留資格が失効していないかを確認します。

    機能開発中:ICチップによる在留カード確認

     TRUSTDOCKでは50種類以上の判断項目を確認して身分証の確認を行っているのですが、原本確認において、より有効な手法は、身分証に内蔵されたICチップを読む手法だと考えています。在留カードにおいても然りで、ICチップ情報を読み取ることで、表面や裏面の偽造リスクへの強度が高まると言えます。

     TRUSTDOCKでは現在、在留カードのICチップ読み取り機能も開発を進めており、近くリリースする予定です。

     なお、身分証等における原本確認と、ICチップ情報読み取りの重要性については、以下の記事もご参照ください。

    身分証等の画像データを不正利用されないために、「eKYC」ができることを解説

    業界随一のeKYC導入・運用実績を誇るTRUSTDOCK

     今回は、これまでもこれからも増えていくことが想定される外国人雇用にまつわる課題と対応策について、本人確認(eKYC)及び在留資格確認の観点から解説しました。

     TRUSTDOCKでは、“本人確認のプロ”として、これまで多数の企業の本人確認関連業務をワンストップで支援してまいりました。特にオンラインでの人材紹介・派遣サービスや短期バイトサービス、さらには、ギグ・エコノミーな人材マッチングプレイスでの外国人労働者に関わる本人確認については、業界随一の導入・運用実績を誇っております。

     外国人雇用に付随する身元確認や在留資格確認、就労制限確認などの運用でお悩みの企業担当者は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

     また、eKYCソリューションの導入を検討されている企業の方々や、実際に導入プロジェクトを担当されている方々に向けて、TRUSTDOCKではPDF冊子「eKYC導入検討担当者のためのチェックリスト」を提供しております。eKYC導入までの検討フローや、運用設計を行う上で重要な検討項目等を計12個のポイントにまとめていますので、こちらもぜひご活用ください。

    eKYC導入検討担当者のためのチェックリスト

     

     なお、KYCやeKYCの詳細については、以下の記事も併せてご覧ください。

    KYCとは?あらゆる業界に求められる「本人確認手続き」の最新情報を徹底解説

    eKYCとは?日本唯一の専門機関のプロがわかりやすく解説

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    (文・長岡武司)

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