平成は人が機械に合わせた時代で、令和は人中心でITを活用する時代 〜AI/SUMレポート

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更新日: 2020/11/05

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     日本経済新聞社が主催する、AIやIoT、ブロックチェーンといった最先端テクノロジーの活用をテーマにしたグローバルカンファレンス「AI/SUM&TRANSUM with CEATEC2020」。昨年から続いて第二回目の開催となる今年は、「人に寄り添うテクノロジーを追求する」がメインテーマに掲げられ、2020年10月19日〜22日の4日間かけて東京・日本橋およびオンライン配信にて開催されました。

     政府、企業、大学、消費者といった様々なステークホルダーが参加した本カンファレンス。ここでは、TRUSTDOCK代表の千葉が参加したパネルディスカッション「デジタル大改革ニッポンにエール!」についてレポートします。

     2020年誕生の菅新政権が打ち出した「デジタル戦略」は、前例にとらわれない規制改革と縦割り行政の打破、そして互いの連携が促進されることで、初めて大きな成果が上がると考えられています。日本がデジタル後進国の汚名を返上し、国内外で自信を持ってアピールできるデジタル大改革は実現するには、具体的にどのようにすれば良いのか。

     本セッションでは、「なぜ今まで変えられなかったのか」と「どうすれば変えられるか」の2軸をテーマに、千葉を含む計16名の官民様々な立場の人間が入れ替わり立ち代り登壇し、それぞれが進める活動や事業を前提とする説明をしました。

     そもそも、なぜここ最近になってKYCの必要性が急激に叫ばれるようになったのだろうか。この質問についてTRUSTDOCK・千葉は、生活全般におけるデジタル化が浸透してきたことを理由と説明します。

    千葉:「これまでWebの世界では、単なるブラウザ参照だったりゲームだったりと、本人性の担保が必要ない領域ばかりが活用されていました。

    それがここ最近になって、生活にまつわるトランザクションがデジタル化されてきました。デジタル化が2周目に突入してきたからこそ、本人確認の担保も大事だよねとなり、それに付随してeKYCが注目されてきていると感じます。」

     生活にまつわるトランザクション。これだけ聞くと民間で閉じた取り組みという印象を受けるかもしれませんが、実は様々な省庁で、エンドユーザーとなる国民のユースケースを想定したデジタル化の取り組みが進んでいます。

     例えば農林水産省では、2023年度末までに省内3,000個の手続きを全てオンライン化するというミッションが下っていると言います。全てをオンライン化するということは、省内に勤めている方のみならず、農林従事者約140万人のほか、自治体や農協なども含めた約20万人のオペレーションにも影響するということです。だからこそ、ちゃんと身元確認をした人にだけIDを配り、不正が行われないようにルール設計をして、且つしっかりと使ってもらえるようなUXにするという、ベーシックだが重要なことをやる必要があるわけです。

     そのために、もともと保持していなかった農業形態データについて不動産登記簿および人工衛星経由でのデータ化を進め、農林従事者の他にも3,000万区画の水田にIDをふるなどして、可視化作業を進めていきました。さらには、このIDを農水省だけで使うのはもったいないとのことで、経産省が進めるgBizIDとの連携も進め、省庁間を跨いだ官民連携を進めています。対象が全国民ではなく140万人という規模だからこそ、まずはスモールスタートから始められるという点が大きいと、同省の畠山氏はポイントを挙げています。


    畠山 暖央氏(農林水産省 大臣官房デジタル戦略グループ 情報化推進係長(実装係長))

    畠山:「最初は、民間企業と同じ言葉で話そうよというところから始まりました。そのために、PMBOK(ピンボック)と呼ばれる標準的なグローバル・プロジェクトマネジメント手法を省内で学び、民間企業のハイレベル層と話せるようにしました。

    そうすると面白いことに、色々と夢のある話ができるようになっていきました。コミュニケーションの目線を合わせることが、とても大事だと感じています。」

     

     なぜデジタル化が思うように進まないかという点も重要なテーマであり、これについては総務省・相川氏や経済産業省・菅野氏から、本質的なDXへと切り込まれていない可能性等が示唆されました。

    相川:「なぜ進まないかを考えた時、重要な案件については上司決済を取っていきますよね。昔はそれがハンコだったわけですが、電子決済で電子化しても、結局は決済権者の順でフローが設計されるので、結果としてスタンプラリーと変わらない状況になっていることが例としてあげられます。要するに、業務プロセスにしっかりと切り込まないと、DXは真価を発揮しないことになります。

    中央官庁は、業務プロセスや組織の課題に切り込んでいくのが苦手なところだなと感じています。」


    相川航氏(総務省 情報流通行政局 情報流通振興課 課長補佐)

    菅野:「なぜデジタル化が進んでなかったかというと、業務の効率化に重きが置かれていて、政策そのものを高める部分がなかなか進んでいなかったのではと、個人的には感じています。

    デジタル化でどうやって政策の効果を高めることができるのかを意識することで、自然とインセンティブが発生していくのかなと思っています。」


    菅野洸史氏(経済産業省 商務情報政策局国際室 室長補佐)

     

     これに対する今後に向けた取り組みとして、農林水産省・神田氏や総務省・相川氏は、あくまでエンドユーザーである国民を軸にした視点の必要性を訴えます。

    神田:「人手不足が深刻な農業現場では現在、デジタル化が急速に進んでおり、例えば営農管理ソフトの普及が進んでいます。農業というものは、日本全体では人口減ではあるものの、生産性は変えてはならないものです。だからこそ、そこを補うのがデジタルということになります。

    本来的には生活者や農業者が儲からなければならないわけでして、使いやすいシステムに向けて整備する必要があると感じています。」


    神田龍平氏(農林水産省 大臣官房政策課 技術政策室企画係長)

    相川:「DXの話すると供給者目線になりがちですが、最も大事なのは国民です。使いたくないものは使わないし、使えないものは使えないです。

    人間のリテラシーというものは急には向上しないし、どうしてもこぼれ落ちる人もいます。だからこそ、国民目線での設計が必要不可欠と言えるでしょう。」

     

     最後はTRUSTDOCK千葉より、今こそ動くべき時である旨がコメントされました。

    千葉:「デジタル化については、官民問わず全てのレ点チェックが揃っていると感じます。僕は起業家なので、経済性がないとサステナブルな事業にはできないと考えていますが、課題・環境・市場、全ての面で今は条件が揃っていると言えます。

    つまり、課題面では新型コロナがあり、環境面では5Gが整備され、またマイナンバーカードの普及も進んでいる。そして市場面では、ビッグマーケットが広がっている。やらない言い訳はないんです。

    平成の三十年間は人が機械に合わせた時代でしたが、令和は逆で、人を中心にITを活用しなければならないと思っています。」

     

     TRUSTDOCKでは、“本人確認のプロ”として企業のKYC関連業務をワンストップで支援するAPIソリューションを提供し、またデジタル身分証のプラットフォーマーとして様々な事業者と連携しております。eKYCソリューションの導入を検討されている企業の方々や、実際に導入プロジェクトを担当されている方々のためにPDF冊子「eKYC導入検討担当者のためのチェックリスト」を提供しており、eKYC導入までの検討フローや運用設計を行う上で重要な検討項目等を、計12個のポイントにまとめていますので、ぜひご活用ください。

    eKYC導入検討担当者のためのチェックリスト

     

     また、KYCやeKYCの詳細については、以下の記事も併せてご覧ください。

    KYCとは?あらゆる業界に求められる「本人確認手続き」の最新情報を徹底解説

    eKYCとは?日本唯一の専門機関のプロがわかりやすく解説

     

    (文・長岡武司)

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