TRUSTDOCK MAGAZINE│KYC・本人確認ならTRUSTDOCK

【前編】「お財布に身分証がいらないデジタルアイデンティティの世界」をテクノロジーの力で実現する~株式会社TRUSTDOCK・CEO千葉孝浩が描く未来~(事業領域編)

作成者: TRUSTDOCK Staff|2021/03/29

TRUSTDOCK(トラストドック)は、日本で唯一の本人確認やKYCの専業会社です。
※KYC(Know Your Customer)とは:銀行口座や仮想通貨口座を開設するときなどに必要となる“本人確認手続き”

近年では、日本の2大FinTechイベントである、日経&金融庁主催の「FIN/SUMxREG/SUM 2018」でダブル受賞、ISID主催の「FIBC 2019」でもダブル受賞させていただきました。

その一方で「何をしているか分わかりにくい」という声もよく届きます。そこで、CEOである千葉孝浩がデジタルアイデンティティ(KYC/本人確認)事業を解説しました。

なぜTRUSTDOCKが、例えば海外送金の「TransferWise」や、買取アプリ「CASH」、オンデマンド人材マッチング「シェアフル」など、業種・業界をまたいで支持されるのか、そして世界的な社会問題を解決する可能性とは何かを紐解きます。

株式会社TRUSTDOCK 代表取締役CEO 千葉 孝浩 

前身の株式会社ガイアックスでR&D「シェアリングエコノミー×ブロックチェーン」でのデジタルID研究の結果を基に、日本初のe-KYC/本人確認API「TRUSTDOCK」を事業展開、そして専業会社として独立。シェアリングエコノミー等のCtoC取引に、買取アプリ等の古物商、そして送金や融資、仮想通貨等のフィンテックの口座開設まで、あらゆる法律に準拠したKYC/本人確認をAPI連携のみで実現。様々な事業者を横断した、デジタル社会の個人認証基盤、日本版デジタルアイデンティティの確立を目指す。

eKYCは非対面のオンラインサービスが増えることにより、さらに求められていく

――「eKYC」、「本人確認」は近年になって聞くことが増えました。どういった背景があるのでしょうか?

千葉:本人確認を求められる状況は、年々増えています。クレジットカードの発行や証券会社・仮想通貨取引所で口座を開設したり、フリマアプリやマッチングアプリなどのCtoCサービスで、身分証をアップロードする機会も増えました。

――気づかないうちに、本人確認の作業をしていたんですね。

千葉:その通りです。これまでのリアルでアナログな取引では、「対面かつ目視で本人確認」していました。つまり、本人確認の行為があまりにも無自覚な所作すぎて、誰もお互いに本人確認していたなんて気づかなかったのです。でも、同じ取引なのに非対面のオンラインになるだけで、急に「本人確認」がプロセスとして可視化され、あらゆる取引で課題が生まれています。本人確認専用のオンラインサービスは時代の要請でもあります。

――事業会社は、本人確認のオンライン化は簡単にできるのでしょうか?

千葉:対応が追いついていない現状があります。超高齢社会の日本ではどの会社も人材不足であり、24時間365日、社内でスタッフを抱えて本人確認することは物理的に不可能になりつつあります。さらに本人確認は個人情報を扱う重要な業務のため、正確性が求められます。

――神経を使う仕事になりそうです。

千葉:本人確認は「減点式の業務」と言えます。「できても褒めれれず、ミスすると怒られる」業務です。減点式の業務は、携わっている人のメンタルが疲弊する業務とも言えるでしょう。

――「本人確認業務がこれから増え続ける」ことと、「本人確認業務は減点式の業務である」ことに気づいたんですね。

千葉:そうです。本人確認業務のもう一つの特徴は、「どの会社でも原理原則としての業務内容は同じ」です。本人確認は法律要件を満たすプロセスだからです。いまこの瞬間も、全国のあらゆる会社で、重複する本人確認業務を行っています。

――社会全体に非効率が発生していますね。

千葉:ただでさえ、労働力不足の日本においては、社会全体の生産性を上げることは急務です。今後、増え続けるオンラインでの本人確認に対して、カスタマーサポートやバックオフィスだけでは対応できなくなります。

――業務の重複がなくなることで、企業はどのように変わるでしょうか?

千葉:企業は事業のコア・コンピタンスである部分に、開発と人の両方のリソースを集中することができるようになります。スタッフは加点式の業務、例えばユーザーへのホスピタリティのあるご案内やクレーマーをファンにするといった業務ですね。つまり、本当に時間を使うべき業務にリソースを投資できるようになるんです。
eKYCを整備すると、生活者の利便性、従業員の創造性の発揮、社会の生産性の向上といった三方よしが叶うと言えるでしょう。

API商社になることで、企業様ごとに異なる法律要件や事業環境に応じた最適なソリューションができるようになる

――TRUSTDOCKが「API商社」という事業モデルを採用している理由はどこにあるのでしょうか?

千葉:単一のサービスではお客様のニーズに答えることができないんですよ。どういう業法なのかによって適切なソリューションが異なるからです。そのため、お客様からお問い合わせをいただいた時に、私たちは必ずお聞きしていることがあります。それは「何の法律に準拠する、どういう事業ですか?」です。

――本人確認の作業自体は多くの会社で重複していても、どの法律の要件を満たすかはばらばらなんですね。

千葉:そうです。だからこそ、私たちはAPI商社として、多種多様なeKYC/本人確認のサービスを並べて、企業様ごとに異なる法律要件や事業環境に応じた最適なソリューションをご提供できるようにしているのです。

ーー「API商社」ということは、TRUSTDOCKは他の企業と組むことも多いのでしょうか?

千葉:よく「御社の競合は?」と聞かれますが、いつも「いないです」と答えています。正確に申し上げれば、それぞれのソリューションごとの局所的な競合はいますが、私たちは競合する企業はパートナーでもあると考えています。

――TRUSTDOCKはコラボして課題を解決する企業なんですね。

千葉:本人確認に必要なソリューションを持っている事業者がいれば、まず最初に頭に浮かぶことは「お互いを組み合わせたコラボ製品を開発できないか」ですしね。

――これからも本人確認の課題を解決する事業者は増えそうですね。

千葉:私たちもいまはまだ、オンラインでの本人確認をアウトソーシングする市場自体をつくっている段階です。正しく市場が形成されるためには、多くの事業者の参入が必要です。ただ、なかなか参入障壁が高いんですよね。なぜかというと、個人情報を取り扱うので、保護の観点からリスクが大きく、表から見えている以上の覚悟と準備が求められます。

――本人確認市場は大きくし、多くの課題を解決していくには「地道さ」が必要なのだと感じます。

千葉:私たちは常に黒子です。表舞台で活躍する主体は、TRUSTDOCKのサービスを使っていただく企業様です。API商社というモデルは、TRUSTDOCKを導入した企業様のサービスが順調にスケールする支援をするのに最適な形だったのです。

デジタルアイデンティティの課題は世界規模かつ、大きな社会問題でもある

――TRUSTDOCKは日本国内で「身分証のいらない未来」を目指すだけでなく、既に海外においてもサービスを提供されています。今後はどんな展開を描いているのでしょうか?

千葉:実はデジタルアイデンティティの課題は世界規模かつ、大きな社会問題でもあるんです。例えば難民やアジアの貧困国において銀行口座を持つことができない人は十億人以上いると言われています。この世界規模のunBanked問題の原因の多くは、「身分証を持っていない」です。「身元の証明ができないから、銀行口座がつくれない」構造があるため、unBanked問題はunIDed問題とも言えます。

――世界規模の社会問題を解決することも、視野に入っているんですね。

千葉:日本のみならず世界中のunIDed問題にも貢献したいです。実際、既にシンガポールの企業にもサービスをご提供していますし、今後も世界をフィールドに展開していく予定です。具体的には、私たちが海外の銀行で口座を開設する際に、TRUSTDOCKの身分証アプリによって簡単に口座がつくれるようにしたいです。あとは飲食店に入る際のパスポートの提示も、スマホ一つで完結するような世界にしたいですね。

――そのためには、現在は何に取り組んでいるのでしょうか?

千葉:「身分証撮影専用のカメラアプリ」を開発しています。オンラインでの本人確認時にこのカメラアプリと連携していただくだけで、様々な法律要件を満たした本人確認が簡単にできるようになります。いわゆるeKYCのソリューションです。

――なぜこのアプリの開発からはじめたのでしょうか?

千葉:背景には昨年2018年に改正された「犯罪収益移転防止法」があります。法律自体に「専用ソフトウェアで撮影」という要件が盛り込まれており、その専用ソフトウェアが広く求められているのです。eKYCを実現するための法律要件は複雑で、今後も改正が行われ続ける領域です。だからこそ、TRUSTDOCKは法律に最速で対応しつつ、あらゆる企業様が簡単にeKYCの手法を使えるように、ソリューションを提供していきます。

――本人確認から解放される社会がやってきそうですね。

千葉:まさに私たちは「身分証のいらない未来」を描いています。今はキャッシュレス化が進んでいて、「現金のいらない」未来に向かっていますよね。お財布から現金がなくなったら、いよいよ最後に残るものは身分証なんです。そこで身分証もなくせたら、お財布を持たずに生活ができるようになります。

――身分証を持ち歩いてなくしてしまう不安もなくなりますね。

千葉:身分証は機密情報が記録されていますからね。スマホ一つで本人確認が完結するようになれば、最終的には、労働集約的な本人確認という業務を完全になくしたいです。今取り組んでいる本人確認というビジネス自体がなくなることが最終目標ですね。その時には弊社も別なビジネスをしているでしょう。

(話し手・千葉孝浩/文・佐野創太/編集、監修:TRUSTDOCK採用広報チーム)

編集後記

身近であるが故に見過ごされてきた本人確認の領域は、ひとつの企業を超えて日本社会、世界の問題に直結していました。

今後もTRUSTDOCKは企業様を「減点式かつ労働集約である本人確認業務から解放する」お手伝いをさせていただきながら、世界規模の問題にも取り組める企業に成長していくでしょう。

次回はTRUSTDOCKに集まる人材、組織のあり方について千葉にインタビューします。

TRUSTDOCKは積極的に採用活動をしています

TRUSTDOCKはeKYC市場を世界的に展開する仲間を積極的に募集しています。

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