あらゆる企業・業界で必要となる「法人確認」とは?3つのチェックポイントについて解説

法/規制解説

更新日: 2023/07/25

目次

     法人として企業間取引を行なっていると、日々様々なコンプライアンスリスクと対峙することになります。

     例えば、昨今で大きな問題となっている「反社会的勢力」との関係について。かつての“総会屋”のような、はたからの判断が容易なものは最近ではすっかり見られなくなり、その存在はより不透明なものとなっています。それゆえに、知らず識らずのうちに関係を持ってしまうリスクが高まっており、企業のコーポレートガバナンス全体への対応がますます重要になってきていると言えます。

     それに対して、事業者が日々行なっている業務の一つが「法人確認」です。要するに、取引対象となる法人に対して、契約時に各種デューデリジェンスを実施し、取引相手として信頼できるか否かを日々判断する業務です。取引担当者であれば、例えば反社チェックの書類のやり取りを行った経験が、一度はあるのではないでしょうか。

     本記事では、上記のようなあらゆる企業に求められる「法人確認」業務について、法定要件として定められているものから、個別企業によって独自に行われているものまでを解説し、最後に、TRUSTDOCKが提供しているソリューション内容をご紹介します。

    「法人確認」における3つのチェックポイント

     まず大前提として、本人確認には大きく2種類、個人を対象とするものと、法人や団体を対象とするものがあります。この分類は、法律としては犯罪収益移転防止法(以下、犯収法)でも明記されており、同法では前者を「自然人」と、後者を「法人・人格のない社団又は財団」(以下、「法人」と表記)としています。

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     法人確認については、犯収法準拠か否かによって確認内容やその粒度が変わってきますが、以下3点が主要なチェックポイントとなります。

    • 存在確認
    • 反社チェック
    • 住所確認

    法人および担当者の存在確認

     法人確認における「存在確認」とは、取引相手となる法人が架空法人でないか、ちゃんと存在する法人かどうかの確認作業です。

     これには様々な方法がありますが、最も簡易的な確認方法としては、国税庁法人番号公表サイトでの検索によるチェックが挙げられます。同サイトでは、対象企業の商号又は名称、本店又は主たる事務所の所在地、法人番号による検索が可能で、検索結果画面ではこの基本3情報に加え、変更履歴情報等も確認することができます。

     一方で、上記のような基本情報だけでは、本当に実稼働している企業か否かを判断するのは難しいです。よってこれ以上の細かい情報、例えば資本金や事業目的、役員名などを確認したい場合は、一般社団法人民事法務協会(以下、民事法務協会)が提供する「登記情報提供サービス」や東京商工リサーチ、帝国データバンクといった与信管理等を行う情報団体の有料資料を確認する方法もあります。

     また、存在確認を行うべきは法人のみならず、契約等を進める担当者も然りです。担当者が本当に存在する人間なのか、またその組織に所属しているメンバーなのかどうかを確認することで、詐欺による偽装や企業名義の悪用等を防ぎます。前者については、身分証等による本人確認の実施が望まれます。

    法人および担当者の反社チェック

     「反社チェック」とはその名の通り、その法人や所属するメンバーが、反社会的勢力および反市場勢力の疑いがあるかどうかの確認作業です。

     こちらにも様々な方法がありますが、多くの企業では以下のソースを組み合わせて、該当企業及び担当者が反社会的勢力・反市場的勢力か否かを確認しています。

    • インターネット検索
    • 新聞記事データ検索
    • 独自の反社会的勢力情報データベースによるチェック

     新聞記事データベースとしては日経テレコンやRISK EYESなどが、反社会的勢力情報の検索としてはエス・ピー・ネットワーク社による各種ソリューションなどが、それぞれ挙げられるでしょう。

    住所確認

     「住所確認」についてもその名の通り、その法人が申請している住所(本社所在地等)でリアルな郵便物が届くかどうかの確認作業です。

     法人登録を行う際は各種書類を法務局へ提出することになりますが、実は住所含む記載事項が“正しいか否か”の厳密なチェックは実施されていません。もちろん、記載様式に準拠しているか否かの確認はなされますが、それが実態に即しているかは確認し得ないことになっています。よって、例えばダミーの住所による架空法人を設立すること自体は実は難しいことではありません。

     オフィスがきちんと稼働しているか否かは、往復はがき等による住所確認が一つの有効な手段となります。

    犯罪収益移転防止法における法人確認

     ここまでは一般的な企業における法人の本人確認内容について見ていきましたが、犯収法の規制対象となる特定事業者(※)については、より厳密な手法での法人確認が、法定要件として明確に定義されています。

    ※特定事業者:金融機関等のほか、ファイナンスリース事業者、クレジットカード事業者、カジノ事業者、宅地建物取引業者、宝石・貴金属等取扱事業者、郵便物受取サービス事業者(いわゆる私設私書箱)、電話受付代行者(いわゆる電話秘書)、電話転送サービス事業者、司法書士又は司法書士法人、行政書士又は行政書士法人、公認会計士又は監査法人、税理士又は税理士法人、弁護士又は弁護士法人が該当する

     具体的には、通常の取引とハイリスク取引によって要確認項目は変わり、以下のような取引時確認が求められています。

     

    《顧客に対する通常の特定取引》

    • 本人特定事項
    • 取引を行う目的
    • 職業(自然人)または事業の内容(法人・人格のない社団又は財団)
    • 実質的支配者(法人)

    《顧客に対するハイリスク取引》

    • 本人特定事項
    • 取引を行う目的
    • 職業(自然人)または事業の内容(法人・人格のない社団又は財団)
    • 実質的支配者(法人)
    • 資産および収入の状況(該当取引が200万円を超える財産の移転を伴う場合)

    ※本人特定事項および実質的支配者については、通常の特定取引よりも厳格な方法で確認することとされています

     

     詳細については以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ併せてご確認ください。

    ▶️犯罪収益移転防止法で定められる「法人の本人確認」とは?法概要とeKYCソリューション例について解説

    TRUSTDOCKの法人確認ソリューション

     ここまで見てきた3軸の法人確認について、TRUSTDOCKでは、それぞれについてAPI経由でのソリューションを提供しています。

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    法人の存在確認

     TRUSTDOCKでは法人の存在確認ソリューションとして、大きく2つのAPIを提供しています。

    法人番号による法人確認API

     TRUSTDOCKでは2021年より「法人番号による法人確認API」をリリースしており、先述の民事法務協会運営「登記情報提供サービス」とのAPI連携を開始しました。

     これまで事業者が書類をもって法人確認を行う場合、履歴事項全部証明書等を物理的に取得し、郵送で確認する必要がありました。事業者としては郵送という手間やコストが発生する上にサービス利用まで時間がかかるというデメリットがあり、また被確認側であるエンド事業社としても、登記簿を物理的に取得して郵送を受け取る必要があるので、双方にとってのペインポイントが顕著に発生している状況でした。

     登記情報提供サービスとのAPI連携が実現したことで、TRUSTDOCKの方で登記所が保有する登記情報をオンライン取得できるようになり、事業者は法人番号と比較データを提出するだけで、TRUSTDOCKサイドで提出された法人番号をもとに登記情報PDFを取得し、法人確認ができるようになりました。この方法で法人確認を行なった場合、申込人が「代表者」であることが前提になりますが、先述した所在地確認としての郵送が不要になるというメリットがあります。

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    法人確認業務API(謄本提出による法人確認)

     もう一つ、該当法人に履歴事項全部証明書を提出してもらい、別途、入力した自社サービスと法人登録情報と突き合わせることで、該当法人の確認を行う手法についてもAPIとしてご提供しています。(履歴事項全部証明書の発行取得業務は代行しておりません)

     また、補助書類による確認も可能です。例えば現場担当者が会社の許可なく勝手に法人アカウントを開設をしていないか等について、委任状の提出によって確認することも可能です。以下、補助書類での確認による担当者委任状確認のフロー例となります。

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    担当者の存在確認(個人eKYC)

     担当者が本当に存在する人物なのか、名乗っている人物が本人なのかどうかをチェックする手段として、本人確認をデジタル完結させるeKYCソリューションは有効です。TRUSTDOCKでは犯収法に準拠する以下8手法に対応するAPIソリューションをご提供しています。

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     特にこの中でも、左右それぞれ端にある「ワ」(公的個人認証)と「ホ」(写真付き書類の写し1点+容貌)の手法が最も多く使われています。詳細については、以下の記事も併せてご覧ください。

    ▶︎よく使われるeKYC手法【4選】100社以上の運用実績から見えてきた傾向を解説

     なお、犯収法のような法定の厳格な本人確認の実施を必須としない事業者も多く存在するかと思います。その場合は上記の手法ではなく、より認証強度を低くした“簡便な”eKYC手法を使うことも多いです。

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     こちらは、個人身元確認情報として公的身分証を提出するという部分だけをオンライン化したeKYCのフロー図です。TRUSTDOCKのeKYCソリューションでは、本人確認書類の写し画像の送信や本人の容貌を撮影した画像データの送信など、必要な情報の送信を任意の設計で受けることができる仕様となっています。

    ※お使いのサービスに合わせる形で、処理画面を作成いただく形になります

     このように、本人確認の強度をどのように設計するのかを踏まえながら、担当者の存在確認のオペレーションフローを設計してください。

    法人および担当者の反社チェック(スピードリスクチェックAPI)

     TRUSTDOCKでは、反社チェックソリューションとして「スピードリスクチェックAPI」を提供しています。具体的には、社名や氏名、生年月日を使って、各種リスクデータベース(以下、リスクDB)で検索・参照し、該当者らしき人物が検索ヒットするか否かをスピードチェックするものです。

     リスクDBには、先ほどお伝えした犯罪ニュースが掲載されている新聞記事等の「記事DB」と、反社会的人物をリストアップした「人物DB」があり、このいずれか、もしくはその両方を利用して検索していくこととなります。

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     以下、例えば不祥事などネガティブな事象全般を対象としたデータベース抽出条件の設定例となり、このような細かい条件検索を駆使して、反社チェックを実施しています。

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    住所確認(郵送業務API)

     該当法人が申請している住所で、リアルな郵便物が届くかどうかの住所確認について、TRUSTDOCKでは「郵送業務API」を提供しています。具体的には「V折圧着ハガキ」を用いて、申請住所が実在するかのチェック機能を提供しています。それぞれ郵送事業者とAPI連携しているからこそ、スムーズな郵送業務を行なうことができます。

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     なお、郵便到達の確認方法としてアクティベーションコードの併用も可能となっており、郵送物の中にアクティベーションコードを埋め込むことで、利用者が郵便受け取り後、即時にアカウント開設ができるように設計することも可能です。なおこの場合、アクティベーションコードを失念したり紛失する等のリスクがある点には留意が必要です。

    法人の存在確認、反社チェック、住所確認のDXを進めるために

     以上、今回はあらゆる企業が対応するべき「法人確認」について解説しました。存在確認、反社チェック、住所確認、いずれの要素においても人力でのオペレーションを行なっている場合は、TRUSTDOCKのようなeKYC事業者によるDXソリューションの効果はより大きなものになると想定されます。

     TRUSTDOCKでは、“本人確認のプロ”として企業のKYC関連業務をワンストップで支援するAPIソリューションを提供し、またデジタル身分証のプラットフォーマーとして様々な事業者と連携しております。犯収法で定められている特定事業者はもちろん、法人の本人確認業務等のオペレーションでお困りの企業は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

     また、eKYCソリューションの導入を検討されている企業の方々や、実際に導入プロジェクトを担当されている方々のために、TRUSTDOCKではPDF冊子「eKYC導入検討担当者のためのチェックリスト」を提供しております。eKYC導入までの検討フローや、運用設計を行う上で重要な検討項目等を、計12個のポイントにまとめていますので、こちらもぜひご活用ください。

    eKYC導入検討担当者のためのチェックリスト

     

     なお、KYCやeKYCの詳細については、以下の記事も併せてご覧ください。

    ▶️KYCとは?あらゆる業界に求められる「本人確認手続き」の最新情報を徹底解説

    ▶️eKYCとは?オンライン本人確認を徹底解説!メリット、事例、選定ポイント、最新トレンド等

     

    (文・長岡武司)

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